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『イケボの叔父さんは?』君たちはどう生きるか感想【ネタバレ有鑑賞済みの人向け】

『あれ?こんなお話だっけ?』
映画が始まって10分、わたしはそんなふうに思いました。記憶にある「君たちはどう生きるか」とどうしても一致しないのです。
 それもそのはず、スタッフロールの最後には

原作・脚本・監督 宮崎駿 

の文字が。原作は『君たちはどう生きるか』じゃ無かったようです笑。勘違いしてました。

ジブリ的でイケボな叔父さんと監督の性癖が詰まったコペルくんを観たかったなぁ…と思わないわけではないですが、
今作の【これぞジブリ❗❗宮崎駿❗❗】
強く訴えかけてくる映像美と、夢のようで現実的な冒険ファンタジーには次第に観客をドロドロと引き込んでいく力があり、やはりこれはスタジオジブリの魅力で唯一無二のように思います。
非常に心にしみました。

作品全体で哲学的な作品として深みがあり、ラピュタのような冒険物としても面白いというバランスは流石です。子供向けではないなぁとは思いますが。

映像に関してはこれまでのジブリ映画の良いとこどりという感じで最高でした。
1番好きなハウルのテイストが多く嬉しかったです(好きだったりキムタクさんからそう感じたのかもしれませんが笑)。 
ざっくりと洋はハウル、和は千と千尋ともののけ姫の感じで、ラピュタの冒険感とトトロの不思議感、ご飯はジブリ飯で、お母さんはアリエッティ(マーニー?マジョ宅?)の雰囲気で、魚や海はポニョで、車はカリオストロで、軍事的描写もあって…
全然まっだまだあると思います。
ジブリが濃いな〜〜〜〜と強烈に感じました。
最高です。


個人的に主人公の眞人君がちゃんとリアルな悪い子なのが良かったですね。
父親を暴走させるために自分で傷を増やし、煙草を賄賂に使い、平気でご飯を美味しくないと言い、優しくて身重であっても夏子さんは居てほしくないなぁ…と思っている、そんな子。

自分自身を振り返るとおもうんですが、子供って結構"悪い"んですよね。悪いことをしたときは無邪気ではなくちゃんと悪意があった気がします。
そんな造詣の深さとシンプルなビジュアルで、眞人君には性別問わず自分にもこんな時期がきっとあったと思わせる魅力と説得力がありました。

オシャレで印象的なツーブロックヘアーは、『傷が【悪意の証明】だから目立たせる必要があるんです❗❗』という熱い言い訳が聞こえてきそうでニッコリしてましたねぇ(ただの監督の流行りの性癖かもしれませんが)。



そんな自己投影しやすい主人公が不思議な世界を冒険する…という見やすい枠組みのなかで自然と『君たちはどう生きるか』のメッセージ性が描かれていきます。これが説教臭さの消失に一役買ってます。

冒険の中で悪い鳥達(青鷺・ペリカン・インコ)と戦いながらも、よくよく考えると自分も悪い存在ではないか…こういう感覚は現実でもよくありますね。
悪い人を批判したいけど、自分はそこまで善良な人間なのか…?自分がその立場になったら同じことをしないと言い切れるか?(きっと言い切れない)。

そんな悪い自分自身をどうするか?
どう生きていくか?


この問いの答えを映画の中で明示しなかったのは素晴らしいですね。

眞人は最後に大叔父さんへこれからどうするか気持ちや考えを色々と表明しましたが、その内容は薄く実際には何も言っていないに等しいです。

ただ、これまで映画を観てきた人たちには眞人君が自分と真剣に向き合いながら紡いだ言葉であることは明確に伝わります。
決して適当な言葉ではありません。
なので自分と考えが違っても、あくまで『眞人君の答え』なんだなぁとキチンと感じ取ることが出来ます。

わたしなんかだと、大叔父さんに頼まれたら優しい世界を目指して積み木を積んじゃうかもなぁとか、鳥達は世界がなくなって幸せなのかな?(自分の責任?)とか、この世界が無くなる=お母さんと別れることになる…とか思ってしまいそうです。
悪人だらけの現実世界は中々にしんどいから避けたい。
眞人君とは違う答え・生き方です。

きっと観客の数だけ答えがあるのでしょう。
どれが正解で優れているというわけではないです。

『自分と向き合うことに意味がある』
そんなふうにまとめると、なんだかコレが正解のようにも見えますがきっと違いますね。
自分と向き合うことはあくまでもスタートラインであって、正解ではけっしてありません。
こういう曖昧な着地点は元々の『君たちはどう生きるか』らしいですね。
読後感を上手く表現されたと思います。

今作は宮崎駿監督自身のメタファーや様々なモチーフ等々、考察は尽きませんがある程度『なんとなく』で留め自分の直感的な理解を大切にするのも良いかもしれません。


テーマの曖昧な結び方と、曖昧で夢のような作品展開は個人的には非常にマッチしていて良かったと思いますが、相乗効果で非常に人を選ぶ作品になってしまいましたね笑。
広告宣伝をしないことで初日にカジュアルな観客層を弾いた試みは多分正しいと思います。
『よくわかんなかった❗❗❗』の感想で溢れるのは好ましくありませんから。 



元々の『君たちはどう生きるか』の本はほぼワンシーンしか出てきません。
一見するとあまり物語に関わっていないようですが、よく考えると

①眞人がナツコさんを助けに行こうと思ったのは『君たちはどう生きるか』のおかげ

②そのおかげで若いお母さんに会えた

③お母さんは自分が死ぬと分かってても眞人を産むために=出会うために過去に戻り、眞人に『君たちはどう生きるか』を贈る。

④それを読んだ眞人は冒険に旅立つ

という重要なループ構造を担っています。

①に関しては本を読む前に森に入るナツコさんを見掛けても不審がったり後を追うようなリアクションはないのに、読んだ後は積極的に捜索をはじめます。
あれほど素っ気ない対応を見せていたのに、読んだ後で眞人の熱量が明らかにちがう=人生観に影響を与えてることは間違いありません。

あと本作では『君たちはどう生きるか』の本を読んだ人間は強キャラになる、というルールがあるように思います。
読んでから雰囲気が変わった眞人に似た雰囲気をお母さんや大叔父さんも持っていました。
2人とも既に読んでいるのではないでしょうか。

もしかしたらどこか達観している若かりしおばあちゃんも読んでいて、お母さんに薦めたのはおばあちゃんかな…?とか妄想したり。
ナツコさんは読んでいないと思います笑。

色々考えると『君たちはどう生きるか』は作中で力を持った魔書のように扱われていて、
絶対に原作も読んだ方がいいよ❗❗読むと人生変わるよ❗❗」
そんなメッセージが伝わってきます。
わたしもそう思います。
ぜひ小説版も読んでみてください。漫画版はまぁ…


(検索で見つけさせて頂いた漫画版へのご意見、めちゃくちゃ同感です、読むなら小説版で是非)



最後に 
映像、ストーリー、メッセージ性全て素晴らしい作品である、と思うと同時に、
これは"遺作"なのではないか
そんなふうに思わずにはいられませんでした。 
同じ感想を持った人は多いと思います。

宮崎駿監督はこれまで何度もこれが最後…と言いながら何本も傑作を世に送り出してきました。
しかし今回は本当の本当に最後の作品なのではないでしょうか。内面を出し切った集大成のような本作からはそう思わざるを得ません。

寂しいことですが、素晴らしい作品をスクリーンで観ることが出来た喜びを素直に味わい、宮崎駿監督へ感謝したいと思います。
素晴らしい体験をさせて頂きありがとうございました。


…そんなことを言いながら、また制作にとりかかる宮崎駿監督の姿が浮かぶ気もするのですが笑






その他の+α
最後おばあちゃんがお母さんと同じトビラから帰っていったと思うんですが、あのときおばあちゃんは何歳だったんでしょうか笑。
若いお母さんが中学生くらい、眞人君を20台半ばで出産するとして眞人君の時代とは20年差くらい…?で、眞人君の時代のおばあちゃんはどう観ても60〜70くらいなので…🤔
若々しかったのが急に老け込んだのかな?笑
おばあちゃんが若くなって味方に加わる展開は大好きです。

眞人君のその後も気になりますね〜。
学校に通ったのか、どんな人生を送ったのか。
もっと当時の戦争に詳しければ、お父さんの工場の行く末とかも分かるんでしょうね。
果たして友達は出来たのか❗❗
(まあ現実で「友達を作ります」って言う人に限って中々できないものですが笑〈1敗〉

弟か妹と生活しているところも見てみたい気がします。青鷺との関係も。
 
青鷺が眞人を襲った理由は、インコの王がお母さんを捕まえた理由と同じで交渉の材料ってことで良いんですかね。
インコに眞人が食べられそうになったのは産屋に入る罪を犯した→殺してオッケーってことでしょうか。
あと、あの世界にナツコを連れて行ったのは青鷺で、帰ろうとしないで産屋にこもったのはナツコっていう認識であってますか?
分かる人いたら是非教えて下さい。


あと、鳥に人間の歯が生えてたり包丁を持っているとめっちゃ怖いということが分かりました笑
ポスターの青鷺はカッコよすぎて騙しにきてますねぇ

↑↑禿げ隠し中↑↑

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