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愛と再生の物語…33

支える力…
.
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電話を切ったドリーは…見上げるピッピに
「ねぇ…ピッピ…聞いて…」
ピッピは座りながら尻尾をブンブン振った😊
「メイちゃんが
ワンピースを着て、お誕生日の写真を撮って、その写真もお洋服を着たメイちゃんも…見て欲しいって✨😊✨」
ドリーはピッピに話かけながら
その場をくるくる回った
「お昼過ぎに…来てくれるって💓」
ピッピも嬉しそうに…ワン💓と吠えた
.
ドリーは台所に立ち
材料を用意し始めた…
ベーコン、玉葱、ほうれん草…マッシュルーム
具材をスライスしていく
心はウキウキしていた……
また会えるなんて😊
.
いつもひっそりとした食事
それが自分には…ぴったりだって
家族を亡くし…ひとりになったドリーは
生きる為だけに…食事をしてきた
迷い犬だったピッピと
ここに越して来て数年後に出逢った
.
その時の事
痩せ細ったピッピ
森の奥に…横たわっていた
.
ドリーは駆け寄り…手を差し伸べた時
ウー💢と唸って牙を向けてきた…
ドリーは手を引っ込め
何があったの?
私はあなたを決して傷つけたりしない……
そう話かけた
.
じっと…ドリーを見つめたピッピ…
ドリーは少し離れた所に座りこみ
それ以上何も言わず…ただ…そこに座っていた
目を閉じて
森を感じて…木々の囁き
風の言葉……
その時……見えてしまった…
なんて事⁉️
.
ピッピは叩かれ…罵声を浴びせられていた
……なんという事を……
ドリーは見えた光景を心から閉め出すように
ギュッと目を閉じた
閉じた目蓋の奥には…さらに辛い
見たくもない光景が浮かんできた
.
ドリーの目から…涙が溢れた…
ピッピはずぶ濡れだった…
懸命にひとりの小さな男の子の服を咥え
泳いで…岸に上がった時
罵声が聞こえた……「なんて事をしたんだ‼️お前と遊んでいて…この子はお前のせいで…溺れかけて…死んでしまうかも知れなかったんだぞ‼️」
小さな男の子の父親は…ピッピを蹴り飛ばした
.
ドリーには…見えた
男の子が夢中で蝶🦋を追いかけ…誤って池に落ちてしまったのが…
ピッピは助けようと…飛び込み…泳ぎ
やっと服を咥えて…岸まで辿り着いた…その時
.
なんて事…
人は見えた光景を自分の気持ちだけで見てしまう事がある
見たいものだけを…見てしまう…
あぁ…この子は懸命に助けただけなのに…
この子の本当の姿…優しくて、穏やかで、男の子と仲良しだった
そんな姿をちゃんと見ていれば
あんな言葉をぶつけられる事も
ましてや
あんな風に酷い仕打ちを受ける事はなかったのに……ドリーは泣いた
.
何時間そうやっていただろう
日が暮れかけていた
ドリーのお腹が…グーと鳴った…
「ねぇ…お腹が空いていない?
私はお昼を食べ損なってしまったから
もうペコペコ…一緒に…ごはんを食べない?」
小さな声で話かけた…
ピッピは…ドリーの目を…真っ直ぐに見つめた
.
辺りが薄暗くなるまで…ふたりは見つめ合った
やがて…ゆっくりと…ピッピは
起き上がった……そして……
ドリーのそばまでふらつきながらやって来た
ドリーは抱きしめたくなったが
我慢した…怯えさせてはいけない
「一緒に…帰りましょう…」
ピッピは小さな声でクゥーンと鳴いた
.
ふたりでゆっくりゆっくり森の中を
ドリーの家に向かって歩いた
休み…休み…ゆっくり…ゆっくりと
.
家に着いたドリーは…愕然とした
明かりの下で見るピッピは
ガリガリだった…
どこから来たのか…どんな酷い道のりを歩いて来たのか…
泣いている場合ではない
とにかく何か食べさせなくては
.
ドリーはピッピの為に
懸命に拵えた…「さあ…たくさんお食べなさい」
.
続く…

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