書籍:わかったつもり
こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。
わかったつもり
「わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~」という書籍を読みました。
読書をしているなかで、よりよく読もうとする際、その障壁となるのが「わかった」という状態だそうです。
「わかった」状態が、なぜ「よりよくわかる」を阻害するのか。
「わかった」という状態は、そもそもどのような状態なのか。
そして、「わかったつもり」という状態はどのようなものか。
本書では、このようなことについて、事例を用いながら説明しています。
今回、この書籍の前半部分の内容を記載いたします。
書籍の後半部分では、ステレオタイプについての説明や、「わかったつもり」という状態を脱するために必要なことが書かれています。
ものごとを理解するとはどういうことか。
そのようなことについて考えるヒントや、理解を深めるヒントになると感じています。
読みの深まり
小学生低学年の教科書に記載されている物語文を読んだあと「わからない点はありますか?」と聞かれると、ほとんどの場合、わからない点は無いでしょう。
文中の単語の意味や、ストーリーにおいては、大人の読解力であれば理解できるでしょう。
そこで、例えば、登場人物の性格や環境などについて問われたらどうでしょう。
本書では、「もしもしおかあさん」という物語を題材にしていますが、例えば「飴だま」というお話を読んだとします。
このお話を読んで、ストーリーラインは理解できます。
明確に書かれていないことについてはどうでしょう。
いつの時代の話なのか
女の旅人や子供は何歳くらいか
彼らはなぜ旅をしていたのか
彼らの裕福具合はどのくらいか
例えば、お侍がいるといことは、中世の日本であり、平和な描写から、戦乱の世ではなさそうという想像ができます。
飴玉をねだる二人の子供がいるということは、子供は小さく、母親も比較的若いかもしれません。
父親が物語に登場しないことから、父親に会いに行こうとしているか、母親は寡婦であり仕事を得るために旅をしているのかもしれません。
案内かかりもいないため、裕福ではなさそうですが、舟にのったり飴玉を買ったりする分のお金は持っていそうです。
このようなことを一度考えた後、再度物語を読むと、より深く物語を読むことができます。
そして、より物語をよく分かったと感じることができます。
この深まりはどこから来たのでしょうか。
それは、文章の部分感の緊密性が高まったことにより引き起こされます。
文章の関連
例えば、以下の分は、意味が通ります。
このとき、我々は、アイロンの機能・効能を利用して文章を理解しています。
これを少し変えて、以下のようにしてみます。
これは、アイロンの機能・効能に反します。
サリーはアイロンを使うのが苦手で、いつも失敗するのかもしれない、という推論が必要となります。
別の文章を挙げます。
これはぱっと理解ができないでしょう。
小銭と車には関係性が見当たりません。
ここで、この文章に「コインパーキング」という言葉があると、理解ができるようになります。
ノーヒントで、コインパーキングという推論が効く人もいるでしょう。
これらの例から「わからない」「わかる」「よりわかる」という状態を整理しています。
わからない:文章の部分間の関連がつかない
わかる:文章の部分間に関連がつく
よりわかる:文章の部分間に関連が、より堅密になる
そして、よりわかる際には、これらの関連付けの際に、文章の中にない知識や、読み手による想定・仮設を持ち出してきています。
わかったつもりという状態
「わからない」という状態は、非常に把握しやすいです。
文中の単語が理解できなかったり、関連がつかなかったりすることはよくわかります。
不安定なことを自分自身で理解できます。
一方、「わかった」という状態は、「わからない」という部分が見つからない、一種の安定状態となります。
この状態では「よりわかった」という状態に至る必要を感じません。
この、「わからない」が無く、「よりわかる」必要を感じない状態を、本書では「わかったつもり」としています。
この「わかったつもり」は、より深く読むといった、探索活動を妨害します。
やっかいなことは「わかったつもり」においては、誤って「わかった」しまっている事があっても、その誤認が解消されずらいことです。
本書では、「わかる」や「わかったつもり」について、更に深く解説しています。
文脈によってわかる
「わかる」「よりわかる」ために有用なものの一つが、文脈の活用です。
先程のコインパーキングの話のように、何についての話なのかがわからなければ、文章そのものが理解できないということがあります。
これは、学習心理学という領域のスキーマ理論に関する実験で使われた有名な文章です。
この文章は、言葉としては理解できますが、文章そのものが何を言っているのか脈絡が無いように見えます。
実は、この話は「凧揚げ」についての話です。
これが「凧揚げ」だというヒントがあると、文章が一気に理解できるようになります。
何の話についてか、という文脈を理解することで、文章の理解度が変わります。
スキーマを活性化させる
「凧揚げ」の話であると文脈を把握した際、「凧揚げ」に関する周辺知識が適用されます。
このような周辺知識、ひとまとまりの知識を、認知心理学では「スキーマ」と呼びます。
文脈が理解できると、どのスキーマを利用すれば良いのか把握でき、文章の理解が進むようになります。
逆に文脈がわからなければ、どのスキーマを引っ張りだせばよいのかわからない状態となります。
どのスキーマを利用するのがよいのかがわかることを「活性化」と呼びます。
文脈がわかるとスキーマが活性化され、文章が処理出来るようになると言えます。
書籍は10万部でベストセラーと呼ばれるそうですが、本書はクチコミだけで10万部となったそうです。
特定の知識が高まるというよりも、学習の質のベースラインを高めるのに非常に有用な書籍だという実感があります。
また、物語文を読むにあたっても、よりその物語に没頭して読めるようになる感覚もあります。
マンガを読むにあたっても、本書の考え方を使うと、より楽しめると思いました。
藤本タツキ先生のルックバックは、表情や背景の描写が細かく、文脈、スキーマ、推論を組み合わせて読むと非常に興味深く読むことができると思っていあmす。
本書の後半はまだ読めていませんが、引き続き読書を続けて学びを深めたいと考えています。
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