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父の絵日記

82歳の父は地域のコミュニティセンターの脳トレ教室に参加している。
計算問題や記憶の問題などをやっているのだが、”夏休みの宿題”に絵日記があるらしく、何日もかけて仕上げた絵日記を私に見せてくれた。
文章を書くのが苦手だという父は、何度も何度も書き直して、たった3つの文でとてもわかりやすくまとめていた。

普段、私と話をしていても、父は出来事を一から順に説明していくので、結局父が何を言いたいのか、最後まで分からないことが多い。
それは文章を書くときも同じだったようで、言葉を長々と並べた文章は全然まとまらず、父は長い時間をかけて無駄な言葉を削っていき、最後には3文で言いたいことをうまくまとめることができたらしい。
少ない言葉で分かりやすく伝えることは難しいけれど、そこに気づいた嬉しい気持ちが、絵日記を広げて私に話してくれる父の言葉から伝わってきた。

私が嬉しかったのは、近頃、似たようなことを私も感じていたこと。
文章を書くことに慣れていない私だが、過剰な説明や重複している言葉を省いていくと、つたない私の文も洗練されていく気がしていて、その作業に時間はかかるけれど、心が満たされるお気に入りの時間になっている。
父の絵日記のように、私も3つの文でわかりやすく伝える 「#3行日記」を書きたいと思う。

ちなみに父は絵は上手なほうで(真面目な父は、いやいや、真似することしかできん…と言うけれど)、その日の絵日記の絵は遠近法で描かれていた。


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