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ファッションはフィクションです

現実が嫌いだ。現実をしっかり見据えて、無駄をなくし自分磨きをし将来に備え人間関係を大切にして、充実した生活を送るのが全然無理。

なんなら現実から逃避して、無駄なことばっかりやって変われない自分を甘やかして外側だけ自在に取り繕って今だけのために生きて孤独を愛しながら寂しさに溺れて、堕落した生活を送れたら最高で、長生きなんかまっぴらごめん。

それでも私は義務教育を終えて受験をして高校生になり、大学生になり成人し就職活動をして新卒で会社に入って週5で会社に通い、毎日ご飯を食べて毎週ゴミを捨てて毎月家賃を払っている。だらだらと続く起伏のない現実から逃れたくて暴れてみてもあとで現実の自分が困るだけで、そうなるとだんだんはみ出すのも怖くなる。
いつ死ぬかわからないけどもしかしたら長生きしてしまうかもしれなくて、その恐ろしさといったらない。

私は物語が好きだ。漫画も読むし映画も結構好き、でもやっぱり小説が1番好き。どんなに長生きしたって読みきれないだけの本がこの世に既にあることは保障されていて、とても安心できる。自分で書くこともできるし。どうしたって存在してしまう美しくない私の現実を活字にしてフィクションへ、どうぞ。

私はアイドルが好きだ。男性アイドルも女性アイドルも。歌や踊りや舞台やライブ、そのファンタジー世界にお金を払って、誰かに夢中になって好きだと叫べることが楽しい。アイドルビジネスはときに議論を巻き起こすし、生身の人間を消費することにちょっとした罪悪感を覚えることはあれど、「あなたの現実に彩りを!」と言ってくれる彼ら彼女らにいつも感謝を。

私はファッションが好きだ。ファッションはフィクションでファンタジーで、根拠も定理も生産性もなくて、ただ「可愛い」だけでいい。服なんて着られればそれでいいのに、簡単には着られないような服ばかり売ったり買ったりしている夢の世界。服に似合うために死にそうなほど痩せたりあるいは鍛えたりして、毛を剃ったり染めたり身体に穴を開けたりする。すべては煌びやかに完成形となるために。

現実に、人は洋服を着なければ社会的に生きてゆけない。だから現実を生きる人間はみんな洋服を着ている。パーティーに行くときだって美味しいご飯を食べているときだって上司に怒られているときだって三角コーナーの掃除をしているときだって大抵私たちは洋服を着ている。

私はファッションが好きだ。私は好きな洋服を着る。現実のための洋服ではない。モテるとか周りによく見られるとか毎日楽ちんとかプチプラで済むとかそういうのはどうでもよくて、ただ可愛いと思うかどうか、ときめいていられるか、その服を着るために朝ベッドから出られるかどうかで選んだ洋服を着る。それが鎧になる。どんなに現実現実した現実に重力でしっかり貼り付いていていたとしても私は可愛い洋服を着ている!

ファッションは、泣きながら現実を生きる私のずっと変わらない味方?

ううん泣いたりなんかしない。だって泣きたくなるような現実なんてなくて、あるのは私がお気に入りの洋服を見せびらかすためだけの毎日でしょう。馬鹿みたいに笑ったり、澄まして決め顔をしたりして、可愛い服に似合う表情で地球って名前のステージ堂々と歩いていくよ。

現実なんてもう知らない!

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