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戻りたくても戻れないと知っているから|太陽と月

月を生きるのはもうやめよう。
そう思った。

私は、よく部屋を散らかす。というか、一度散らかったら、ずっと汚い。児童養護施設で過ごしていた頃、職員さんによく叱られた。毎年決める目標にも必ず「整理整頓」が入っていた。社会人になって、部屋の片付けが苦手なのは変わらなかった。仕事で忙しくて時間がない中、居心地の悪い部屋はストレスを感じさせた。家へ帰ると、いつも汚い部屋があって、きちんとできない自分に失望した。綺麗にしたいのに、どうしても綺麗にできない自分に、ひどく傷ついた。

勉強と仕事にも、苦しめられてきた。学生時代、周りから何を言われたわけではないのに、「満点を取らなきゃ」と意気込んで、努力することが苦しかった。オール5をとっても、私という人間は幸せにはなれず、むしろ疲弊と虚無感でいっぱいだった。社会人になってからは、タスクが増え、責任感が大きくなるにつれて、自分に完璧を求めてしまう。でも、そもそものタスク管理や、優先順位のつけ方がうまくいからない。だから、時間術や整理術、管理術から学ぶ必要があると思い「本を読まなきゃ」と、またタスクが増える始末。「頑張らなきゃいけないのに、身動きできない自分」に打ちのめされた。

プライベートも仕事も、きちんとできなくて、鬱になった。もちろん、それだけが理由ではないかもしれないけど、影響は大きかったと思う。それでも仕事は休まなかったけど、なんで生きているのかわからなかったし、無気力状態が続いた。そうでないと、やっていけなかった。

24歳の春、私はある本に出逢った。図書館でたまたま出逢った本。

その本には、なぜ片付けができないのか、なぜ仕事で辛い思いをするのか、長年思い詰めていた、その答えが書いてあった。

私のこの厄介な性質は、月の影響からきているらしかった。占星術の本を読むのは初めてで、占いなんて信じられるような人間じゃなかったのだけど…。書いてあることが当たっているのだから、信じてみるしかなかった。

だけどね、信じてみて、悪いことはなかったよ。

「苦手」が、自分の努力不足から来ているのではない。こういう星まわりに、たまたま生まれ落ちた。ただそれだけ。ならば、それに対処できる方法を考えよう。つらさやしんどさにとらわれた人生を終わりにしよう。こう思えただけで、常に完璧を求めしまう私にはやさしかった。

月を生きるのはもうやめよう。

月とは、7歳までの、子どもだった私たちが見た世界。それは現実ではなく、今となっては幻の世界。私たちは無意識に、その見せかけの幻想へと引き込まれていく。だけど、本当は、太陽の性質を自分で獲得しなければならない。幻想から目を覚まし、前に進んでいくのだ。

月と太陽がもつ性質は人それぞれ異なるようだ。誕生日から分かる「〇〇座」というのは、太陽星座のこと。あなたは、太陽星座の性質を獲得していくことで、成功できる。

一方で、月星座を調べるには、出生時間が必要となる。月星座は、あなたができると思い込んでいながら、いくら力を注いでも実らない能力を示している。私の場合は、管理・分析の能力が欠けているとのこと。

子どもの頃に抱いたイメージが、それ以上発展することはない、というのがこの本の見解だ。7歳までに培ったイメージ、夢見た世界は、いつまで経っても、未熟なのだ。

月を見ると、懐かしく思う理由がわかった気がする。月を見て、物思いに耽るのは、きっと、戻りたくても戻れないと知っているから。

いま、月を旅立つ時が来た。太陽を目指す時が来た。月を、小さい頃の自分を、見捨てるのではない。つくられる未来を、太陽を、一緒に眺める。そんな感覚でいたい。








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