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【小説】反私-♂33-#1


並行同軸同型小説


俺的問題

 反社という存在が在るようだ。
 「反社会的勢力」という呼称の省略形のようだが、省略したところで意味が変わるわけではなくこれを文字通りに受け取れば「社会に対して反逆する勢力」ということで、一般的にはそういう筋の方々ということで概ね話は通じるだろうと思う。
 ま、ただ。
 ただですよ。
 我々のような一般庶民がこういった反社の方々と直接、対峙するということは現実的にそれほど多くはないわけでズバリ言ってしまえばむしろ稀。
 少なくとも俺は経験がない。
 なのでそういう存在は視界から外すとして。

 俺にとって非常に問題というか、イライラの種というか、ストレスの元凶というか、悪そのものと言っても過言ではないその存在というのは「俺に対して反逆する勢力」、謂わば「反俺的勢力」、これだとやや下品な感じがあるので上品な俺にふさわしく言い換えてみれば「反私的勢力」、これは「ハンワタクシテキセイリョク」と読む。この「私的」を「シテキ」と読んでしまうとなんとなく「私的勢力に反逆している」というような意味にも受け取れ、微妙に意図と違う言葉になってしまうような気がするし、そもそも俺は孤立した人間なので勢力なんてだいそれた存在で在るはずもない。したがって全体の読みとしては「ハンワタクシテキセイリョク」を貫きたいのだが、前述した反社の如く今風の省略形に直すならば、やはりここは「反私」になるのであり、これを「ハンワタクシ」と読んでしまうと、リズム感躍動感が皆無の間延びして勢いもへったくれもないユルユルの語感で「反」すなわち「アンチ」という、せっかくやや過激、ややリズミカルな雰囲気がぶち壊しになってしまうので省略形の場合の読みは「ハンシ」としたい。
 「なんだ、そんなおかしいことがあるか、どっちかはっきりしやがれ」
とドヤるおまえ、おまえこそ「反私」だ、イライラの種だ、ストレスの元凶だ、悪そのものなのだ。
 口を慎め。

(つづきますかね?)

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