見出し画像

【絵本屋さん日記】  イベントをしない絵本屋でありたかった

昔から冬が苦手だ。寒いのが大嫌いだ。
寒いと動くのが億劫になるし、布団から出るにも気合いが要る。
電気代も嵩む。服を何枚も着るのだってしんどい。

日が落ちるのが早いから、なんだか損した気持ちになる。
長い夜には、余計な感情が入り込みやすい。

身体が内側から温まって、こころも少し元気になるような、なにか無いかな。そう思って、絵本屋の新作ドリンク試作会と称してチャイを振舞うイベントを開催した。1月22日、日曜日のこと。

当日も雪が舞う寒い日だったけれど、60人近くのお客さんが来て、チャイを楽しんでくれた。途中で座席を追加したり、材料を買い足したりしなければならないくらい終始にぎやかで、本当にうれしかった。


つぎつぎとチャイをつくって、ストップと言われるまでお出しするわんこそばスタイル
スパイスがしっかり効いた辛めのチャイが最も人気だった。

実は、イベントをゼロから企画したのは今回が初めてだった。
そもそもわたしはイベントが苦手で、イベント企画なんて大嫌いだった。

まだ絵本屋になる前、会社員をしながら絵本屋を構想していたときのメモにも、「イベントはやらない」とはっきり書いてある。多くの個人書店の先輩方が定期的にトークイベントや展示会を開催しており、自分もやはり倣った方が良いのだろうと判っていた。けれど、どうしてもやりたくなくて。ずっとイベント以外の方法で、書店経営のことを考えていた。

昔から、イベントに参加したこともあまりなかった。というのも、イベント自体にあまり意義を感じていなかった。
「みんなでつながろう」「楽しいことしよう」などというフンワリした目的のなか、「とりあえず、なんかイベントやろう!」と決議される現場を学生時代から何度も見てきたせいだと思う。企画側の自己満足と、”とりあえず感”が垣間見えるようで、苦手意識をもっていた。

さらに追い討ちをかける出来事として、数年前に知人と開催した飲食イベントがある。わたしは準備を進めながら次第に自信がなくなってきて、「わたしなんかのイベントに人を呼んでいいんだろうか」なんて、協働者にも参加者にも無礼な考えに捕らわれた。それによって集客も怖気付き、知人に声を掛けることも、SNSで呼びかけることもできなかった。最終的にはなんとか形にできたものの、もやりとした嫌な後味を残した。その日のことを何度も思い出してしまう。

そんなこんなで、わたしの企画嫌いは根深かった。

絵本屋を始めて、イベントに出店させていただいたり、知人のイベントにお客さんとして参加するようになったりしてからは、イベントそのものへの苦手意識はどんどん薄れていった。それでも、自分で企画することへの抵抗は依然として残っていた。

チャイの試飲会をすることになったのは、「やってみようかな」というわたしの小さな声を周りの人がサッと掬いあげて、最後まで進みきれるようにずっと隣りにいてくれたからだ。そして試飲会のお知らせに対して、沢山の人が「行きたい!」と声に出してくれたからだ。

Special Thanks: 雄大さん(チャイづくりが趣味のお兄さん・中央)
キョんくん(喫茶シンカイ店主のお兄さん・左)

飲食の経験もないし、味覚にも自信がなくて、そんな自分が試飲会をしてもいいのだろうかと不安だった。なにか失敗しないだろうか、お客さんからどう見られるだろうかと、当日までとても怖かった。でも今回は集客から逃げなかった。気弱な心がなんとか保たれた。

当日は沢山の笑顔が見られて、開催してよかったなあと思えた。もちろん改善すべき点も沢山あって、その日の夜はひとり反省会をした。でもその時点で、わたしにとってイベント企画はもう「大嫌い」の対象ではなく、また手掛けるために磨いていくものに変わっていった。

「イベントはやらない」と決めた自分に見せてあげたいよ。特別なことはなにも起こっていないのに、なんだか奇跡みたいだから。

✴︎

大寒波が来て、大粒の雪が降っては積もり続けている。
あいかわらず部屋は寒いし、夜は暗くて長い。
でも、雪あかりの美しさを知り、友達と食べる鍋の温かさを知った。
冬の寒さへの「苦手」や「大嫌い」は、いつのまにか消えている。

変化のきっかけはいつどこに転がっているか分からないし、それは小さかったり、積み重なってようやく気づいたりする。「苦手」や「大嫌い」からはたくさん逃げたらいいけれど、たまに安全な場所から様子を伺うのもいいかもしれない。もしかしたらすでに小さな変化を始めているかもしれない。


photo by @k21tube



以下は、イベント後のひとり反省会の内容メモです。よかったことも多かったけれど、改善点も多くて、お客さんにはあまり見られたくない部分のような気もするので、限定公開とします。わたしと同じようにイベント初心者で、当日までドキドキ眠れなくなってしまうような人の小さなチカラになったらうれしいです。


【よかったこと】

ここから先は

1,721字 / 2画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?