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ドンマイを贈る

ご飯すらうまく炊けないのか。

わくわくしながら炊飯器を覗き込むと、そこには水分をたっぷり吸って、いつもとは違う様相のごはん。

わたしは本当にいろんなことがうまくできないなあ。

そんな自分に笑いながら、もったりとしたごはんに茹で卵とネギを乗せて……うん、これはこれで悪くない、って味を確かめながら食べる。なんでも実験的で、おもしろい。お米は、水が多すぎたのだろうか。それとも炊飯器の調子が悪い?だとしたら、次回は水を少なくして……などと、頭の中で算段。こうやって少しずつなんでもできるようになるはずだと、自分にドンマイを贈る。

次の日、炊いたごはんはさらに膨れ上がっていた。

もはや米粒のない、一体化しているごはんに笑いながら、これは普通に食べてもダメだと、急遽チャーハンを作ってみた。余ってた野菜を全部入れて、豪快に炒める。ただ、炒めても炒めても、もちろんパラパラにはならず、チャーハン味の巨大な塊ができた。

人にはとてもじゃないけど出せないけど、でも悪くないじゃん。

また、ドンマイを贈る。


夜、母から体調を心配するLINEメッセージ。

元気だよアピールのために、今日のチャーハンの写真を送る。

『なぜか米が水分多くなっちゃうんだよね笑』

『なんでだろうね?無洗米とか?』

無洗米ってなんだ? というか、米にも色々種類があるのか……と思って、一応確認してみると。

【もち米】


『ねえ笑 もち米だった笑』

画面の中から、母の笑い声が聞こえた。

もう一度、自分にドンマイを贈っておこう。

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