とある電力系技術者

電力工学やパワーエレクトロニクスなどの分野が専門のとある電気系技術者です。 最近は、電…

とある電力系技術者

電力工学やパワーエレクトロニクスなどの分野が専門のとある電気系技術者です。 最近は、電気事業の制度設計などを追いかけています。 素人の思い付きでつらつらと記事を書いていこうと思います。 リンクフリーです。SNSなどにご自由に展開ください。ただし、責任は持ちませんので、、、

マガジン

最近の記事

電力系統の慣性とは part2 -複数の発電機の負荷分担-

以前、電力系統の慣性について解説した記事を掲載した。今回はこの記事の続きである。 前回は、発電機1台と負荷の単純な系統のモデルでの発電機の応動を解説した。今回は、発電機が複数台となった場合の応動について解析し、発電機間の負荷分担や慣性について解説する。 本記事では、筆者の力不足により、交流回路理論(フェーザ)を用いた説明となり、大学レベルの電気工学の知識があることを前提する。 検討する系統モデル2台の発電機と負荷で構成された以下のような、単純なモデルを想定する。 発電

    • 再エネ主力電源化の課題(周波数変動に関して)

      再エネ主力電源化により、同期発電機を用いた電源が減少し、系統の慣性および同期化力が減少することが懸念されている。電力広域的運営推進機関の委員会でも議論されている。(以下リンク先資料3参照) 委員会資料では、非同期電源の増加により、慣性力が低下し、電源脱落時の周波数変化率RoCoFが大きくなると述べられている。しかし、これは一部分しか捉えられていない。非同期電源が増加した時に、どのようなことが起こるのか考えてみた。 非同期電源が少ない系統での電源脱落まず、非同期電源が少ない

      • 今冬の電力需給ひっ迫の要因分析

        今冬の電力需給ひっ迫に関して、色々議論がされている。このひっ迫の原因は一言で表されるものではなく、複数の要因が複雑に絡んでいる。この要因について、まとめてみた。 本記事は、筆者が頭の整理のためのメモ書きであり、記事としての完成度は低いことはご了承いただきたい。また、適宜追記・修正をすることもある。 再エネ導入量増加によるLNGの運用難化再エネの導入量が増えたことで、LNGの運用が難しくなってきている。 太陽光などの再エネの増加に伴い、LNG火力は主に調整力として使われて

        • 電力需給ひっ迫から考える電力事業制度の課題の一考察

          電力の需給はひっ迫している。SNS等では、電力自由化の制度設計に問題があるという指摘もある。しかし、具体的にどこに問題があるのか指摘したものが無い。現在の電力事業制度を見直して、どこに課題があるのかを考察した。これは、筆者の一個人の見解であり、一つの見方でしかないことに留意いただきたい。 供給能力確保義務電気事業法には以下の条文がある。 (供給能力の確保) 第二条の十二 小売電気事業者は、正当な理由がある場合を除き、その小売供給の相手方の電気の需要に応ずるために必要な供給

        電力系統の慣性とは part2 -複数の発電機の負荷分担-

        マガジン

        • 容量市場
          5本

        記事

          電力崩壊の危機(1/8追記あり)

          1/8に追記しました。追記分は最後を確認ください。 テレビや新聞では、コロナウイルスの拡大を抑制し、医療崩壊を防ぐための緊急事態宣言が取り上げられているが、ほとんど報道されていないが、実は電力需給がひっ迫し、崩壊寸前である。詳細は以下のあたりが分かりやすいと思う。 また、広域機関からは、すべての発電事業者へ指示を出すという前代未聞の状況となっています。。 需給がひっ迫すると、具体的にどんなことが起こるのかを考えてみた。 電力崩壊のシナリオ以下のシナリオは最悪を想定した

          電力崩壊の危機(1/8追記あり)

          スポット市場で発電事業者は固定費を回収できるのか

          一部のメディアなどで、容量市場の見直しが提案されている。その中で、容量市場を廃止し、スポット市場といったkWh市場のみで固定費を回収するEOM(Energy Only Market)とすべきという意見もある。 スポット市場で発電事業者が固定費を回収できるのか見積もってみた。 前提条件スポット市場のみでいくらの固定費が回収できるのかを見積もる。以下の前提条件とする。 ・発電事業者はスポット市場に全量を売り入札する ・入札価格は燃料費などの変動費のみの限界費用とする。

          スポット市場で発電事業者は固定費を回収できるのか

          容量市場の応札結果と供給計画の取りまとめを比較してみた

          容量市場が上限価格の14,137円/kWで約定し、供給力が不足しているとか、売り惜しみがあったのではないかとも言われている。そこで、入札量が妥当だったのか、検証してみることとする。 検証のソース2020年3月に公表された供給計画の取りまとめをもとに検証する。 表3-1に2024年度の各電源種別ごとの設備容量が示されている。この発電設備容量は2020年2月に各発電事業者が提出したデータをもとにまとめたものである。これと容量市場の約定結果と比較してみた。 供給計画と容量市場

          容量市場の応札結果と供給計画の取りまとめを比較してみた

          容量市場でもし経過措置がなかったら

          容量市場の約定結果が公表され、上限価格の14,1371円/kWとなった。 約定結果が公表前に上限価格になるのではないかと予測していたが、この結果は驚き半分、納得半分というところである。 価格予測については、以下を参照してほしい。 約定価格が高騰する原因として経過措置があり、これは小売電気事業者の負担を増やしてまう。 経過措置がある場合とない場合で、小売電気事業者の負担がどの程度になるのかを見積もってみる。 経過措置がある場合(約定結果の考察)まずは、経過措置がある場

          容量市場でもし経過措置がなかったら

          電力系統における慣性とは

          最近、電力系統の慣性不足が話題となっている。先日開催された電気学会電力・エネルギー部門大会のパネルディスカッションのテーマも慣性であった。 http://pes2020.ieej-pes.org/panel_discussion.html 電力系統において慣性がどのような効果があるのか、どのような原理なのかを基本から説明した資料はあまり見かけない。電力系統における慣性とインバータ電源で慣性を模擬する仮想同期発電機(VSG)に関する研究を10年以上かかわってきたものとして、

          電力系統における慣性とは

          容量市場の経過措置は小売電気事業者の負担を増やす

          容量市場では、小売電気事業者の負担を減らす目的で、経過措置が導入された。しかし、この経過措置は逆に小売電気事業者の負担を増やすことになるのである。いかにまとめた。読むのが面倒な方はは最後のまとめを読んでほしい。 前回の振り返りと約定結果公表延期前回の記事で容量市場の価格予測をした。内容を簡潔にまとめると、容量市場の経過措置により、約定価格が上限価格付近になると想定した。 8/31に約定結果が公表されるはずだったが、約定結果の公表が延期となってしまった。 https://

          容量市場の経過措置は小売電気事業者の負担を増やす

          容量市場の価格予測

          初めに容量市場の入札が始まった。誰も容量市場の価格を予想していないようなので、大胆に予測してみる。 筆者は電力会社とは一切関係なく、発電事業者でもなければ、小売事業者でもない。 容量市場に入札したわけでもなく、内部情報を持っているわけでもない。 これは、ただの電力オタクの妄想だと思って読んでほしい。 容量市場は広域機関が決定した需要曲線と、発電事業者が入札する供給曲線の交点で決まる。 需要曲線は以下の通り。 https://www.occto.or.jp/market-b

          容量市場の価格予測

          自己紹介

          電力工学やパワーエレクトロニクスなどの分野が専門のとある電気系技術者です。 最近は、電気事業の制度設計などを追いかけています。 素人の思い付きでつらつらと記事を書いていこうと思います。