再エネ主力電源化の課題(周波数変動に関して)

再エネ主力電源化により、同期発電機を用いた電源が減少し、系統の慣性および同期化力が減少することが懸念されている。電力広域的運営推進機関の委員会でも議論されている。(以下リンク先資料3参照)

委員会資料では、非同期電源の増加により、慣性力が低下し、電源脱落時の周波数変化率RoCoFが大きくなると述べられている。しかし、これは一部分しか捉えられていない。非同期電源が増加した時に、どのようなことが起こるのか考えてみた。

非同期電源が少ない系統での電源脱落

まず、非同期電源が少ない系統での電源脱落を考える。周波数変動を次の図の青線のようになる

無題

時系列で発生する事象は以下のようになる。

①大規模火力電源脱落により周波数低下

大規模電源脱落により、需要>発電となり、周波数が低下する。電源脱落時に周波数が下がる理由は以下を参照。

②揚水動力を解列

周波数が低下すると、下池から上池にくみ上げている揚水動力をまず解列し、系統の需要を減らすことで、需給のアンバランスが改善し、周波数低下速度が弱まる。

③UFRにより負荷遮断

揚水動力を解列しても、需要>発電の場合は、ブラックアウトを避けるため、UFRにより、一部のエリアを停電させ、需要を減らす。UFRについては、資源エネルギー庁のサイトに解説がある。

再エネ主力電源化した系統での電源脱落

それでは、再エネ主力電源化し、非同期電源の割合が大きい系統について考える。休日の昼間の需要が少なく、太陽光発電などの再エネの発電量が多い状況を想定する。周波数変動は先ほどの図の赤線となる。

具体的な事象を以下にまとめる。

①大規模火力電源脱落により周波数低下

大規模火力電源脱落により、需要>発電となり、周波数が低下する。元々、系統の慣性が小さいのに、慣性力を提供する火力電源が減少することで、さらに系統の慣性が小さくなる。よって、周波数変化率(RoCoF)が大きくなり、周波数が大きく低下する。

②揚水動力を解列

太陽光発電が多く発電しているので、揚水発電はすべて、下池から上池へくみ上げている。周波数が低下すると、揚水動力をまずは解列する。揚水動力は、同期発電機であり、慣性を持っているため、これが解列すると、系統の慣性が減少することとなり、RoCoFを大きくする一因となる。一方で、需要を減らしたので、需給バランスが改善するので、周波数低下を改善する効果もある。

③UFRにより負荷遮断

UFRが動作し、一部の系統を停電させることとなる。ここで注意すべきは、再エネの大半は分散電源であるということである。UFRは変電所などに設置されており、変電所から送り出す先(フィーダ)ごとまとめて、系統から解列させ、停電させる。例えば、系統から解列したフィーダにメガソーラーが接続されており、系統へ逆潮流している場合、供給力を減らすこととなる。

実際には、フィーダには負荷が接続されており、メガソーラーで発電した電力は、それらの負荷で消費されるので、変電所への逆潮流量は少なく、供給力減の影響は小さい。

参考文献によると、制御時間などといったUFRの設計においては、事前に系統シミュレーションなどを行い決定するようである。このUFRの動作整定値等を設計する際に用いる系統シミュレーションにおいて、分散電源の影響を考慮していないと、設計通りUFRが動作しても、期待した量の負荷が遮断されず、UFRで周波数低下を抑えられない可能性がある。

④ブラックアウト

系統周波数がある値以下になれば、発電所は機器を保護するために系統から解列する。そうすると、供給力が減少し、さらに周波数が下がり、発電所が連鎖解列し、最後はブラックアウトとなる。

最近発生したUFRが動作した系統事故

UFRが動作するような大規模な電源脱落は、地震等によるものが多い。再生可能エネルギーの割合が多くなった数年以内でUFRが動作した地震は以下の二つである。

北海道胆振東部地震:2018年9月6日3時7分

福島県沖地震:2021年2月13日23時7分

ともに、夜間に発生しており、太陽光が発電しない時間帯のため、同期電源の割合が高い時間帯であった。よって、本記事で述べたような事象やその兆候は発生しないのである。そのため、国内の系統で、太陽光発電の割合が高い時間帯に、大規模な電源脱落が発生した時に系統がどのように応動するのか、誰も把握できていない可能性がある。

まとめ

再エネ主力電源化した系統において、大規模電源脱落が発生した時の周波数変動について考察した。再エネ電源の割合が大きくなれば、ブラックアウトとなる可能性がある。すでに四国では、太陽光発電量が需要を超えたとの記事もあり、早急に対策を検討すべきと考えている。

もし電力会社やその関係各所の方々で、本記事の内容が一考に値すると思われたのであれば、本記事の情報を活用して検討していただけるとありたいと思います。

参考文献

電気学会技術報告 第1127号 周波数リレーシステムによる事故波及防止技術(2008年9月)

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