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芸術は人の弱さを表現する力

2019年10月22日下書きより。

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クラスで、アクティングのトレーニングをしながら自分に対しての不安感を抑えられずに泣いてしまう子がいる。1回じゃなく、何度も。

アクティングのトレーニングは、たしかにタフだと思う。自分の感情と向き合わなきゃいけないし、逃げられない。無視しているいろんなことや感情を思い出すこともある。

その子は、みんなの前でトレーニングする時でさえも「完璧でなきゃいけない」と思ってしまうようで、「いい生徒」でいることにすごく気を張っていた。でもそんなの先生はお見通しだった。

“You are trying to pretend to be good.  I don’t need that.”

"You are here because you are not perfect. You are here to learn. One of my greatest artist friends is who is not afraid of making any big mistakes. "

学ぶためにここにいる。自分ができているって思う環境にいても成長しない。当たり前のこと言っているるように思うけど、プレッシャーの中にいると忘れてしまいがちだ。

完璧じゃなくっていいのに、どうして完璧であろうとしてしまうんだろう。私は今はこの環境下で、失うものは何もない状態。だから恥もプライドも何もかも捨てて、クラスメイトの前に立てる。言葉が完璧でなくても、パフォーマンスが完璧でなくても、今の自分をそのまま表現することで、自分を知ることができる。そして他人から意見をもらうことができる。よりよい自分になれる。

大切なのは、完璧な姿を見せることではなくって、自分がどういう人間で、何を思っているのかを伝えることだ。


私自身が、それをわかっていない人間だった。

2〜3年前のダンサーとしての自分は、誰かに、何かになろうと必死にもがいて、格好をつけようとしていた。それが全くかっこよくなかった。

ありのままでいいんだって気付いたのは、ほんの1年前だ。

何者にもならなくていいし、格好もつけなくていい、今のありのままの自分を大事にすることに気付いてから、私の踊りはすごく変わったと思う。まだ格好はわるい。でも何の為に踊っているのかは絶対に忘れないようになった。


先生は、最後にこう言った。

"and if you are perfect, you cannot be art!"


芸術家になれるのは、ほんの一握りの才能がある人がなる。そう思っている人は多いのではないだろうか。

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人間はいろんな側面やタレントをもって生まれてくる。その中でどのタレントを生かして生きていくのかは、人それぞれだ。そしてそのタレントを生かそうと努力した先に、人より卓越した能力が生まれる。人はそれを才能だという。

才能とは、物事を成し遂げる力。予め備わってるスペシャルなギフトではない。

「あの人は才能があるよね」って、素質があるって意味で使ったりするけど、本当は、何かを成し遂げる強さがあるってことだ。
だからみんなにあるんだよ、才能は。

もちろん、向き不向きはあると思う。そして向き不向きで仕事を決める人もいれば、そんなこと関係なく好きなことを仕事にする人もいる。

正直私に向いてることなんて他にもっとある。いろんなことをオーガナイズしたり、書類を作ったり、接客したり、社会人になる方が全然自分の強みを生かせたと思う。

私はただ、芸術家としての自分を忘れずに生きることを選んだ、というだけだ。

そもそも、芸術家にはなるものではない。何かを生み出せばもうあなたは芸術家だし、何なら生きてるだけで人はみんな芸術家になりうると思っている。社会人として自分の仕事を頑張って美しい瞬間を生み出してる人も、noteで美しい文章を書く方々も、私にとっては芸術家だ。


物事を突き詰めれば完璧なのか、というとそうではない。むしろ突き詰めれば突き詰めるほど、自分が完璧でないということを思い知らされる。それでも辛くないのは、やっぱり好きだからだと思う。

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ここまでが、2019年10月22日の下書きに入っていた。なんだかまとまらなくって、ずっと載せていなかった記事だった。

冒頭のクラスメイトについて。

この5ヶ月で彼女はすごく変わった。相変わらず心に恐怖や不安感はあるみたいだけど、それに恐れずに立ち向かおうとしている。弱いことを受け入れて、それを乗り越える決意を決めたんだな、と彼女をみていて思った。

それはとっても難しいことで、彼女は自分のことを弱い人間だと思っているが、彼女こそ、勇敢で強くて美しい。


人には弱い部分がある。だからこそ人間は美しいと思う。だからこそ人に共感できるし、だからこそ何かを表現しようとする。


世の中には芸術的センスが卓越していて、鋭い芸術作品を作ることのできる人たちも確かにいる。

でもきっと、その人たちも、センスがあるだけではなくて、自分たちの弱く痛い気持ちに向き合えた人たちであるのかと最近考えるようになった。もちろんそれで病むとかではなく、自分が弱いことを受け入れる、それを理解し続けて弱い自分と付き合っていくということなんじゃないかと。そうやっているうちにだんだん才能が開花する。


だからやっぱり、いわゆるアートという分野の人たちだけを芸術家と呼ぶのではないと思う。人間みんな芸術家の要素があって、それぞれの分野で、自分の弱さを受け入れた上で、自分にできることを表現している人を芸術家と呼ぶ。少なくとも私はそう呼びたい。

才能は何かを成し遂げる力。芸術は人の弱さを表現する力だ。



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