マガジンのカバー画像

あらすじ

4
文楽のお芝居のあらすじをお話ししていきます。
運営しているクリエイター

#近松門左衛門

心中宵庚申[現代語版]1・近松門左衛門原作

心中宵庚申[現代語版]1・近松門左衛門原作

1.

 田を干すために水を引く。落し水の時期である。山城の上田村に暮らす大百姓、島田平右衛門は去年の秋に妻を亡くし、今は病に伏せっていた。上の娘のかるは婿をとって家にいる。下の娘の千代は大坂へ嫁にいった。
「今朝から仕事がよく捗った。お竹、お鍋、ちょっと休もう」
 台所で働いていた下女たちはひと休みに思い思いに立っていった。
「台所に人がいないやないの」
 かるの夫平六は新田開きの訴訟のため京へ

もっとみる
心中天網島、道行の道のりを辿る。大阪が水都である理由はなんだ?【近松門左衛門】

心中天網島、道行の道のりを辿る。大阪が水都である理由はなんだ?【近松門左衛門】

道行とは
世話物の道行

近松門左衛門作「心中天網島」、主人公の治兵衛と小春が心中に向かう場面は「道行」といって、全編に渡って節付けのされている文章を語ります。

曽根崎心中の「天神森の段」も同様で、心中に向かう場面で普通の芝居の形式では陰鬱になりかねないところを、地の文章も台詞もほとんどに節をつけて、かつ大勢で語り、死にに行く場面でありながら美しく聴いていただく仕組みになっています。

世話物の

もっとみる