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咲寿太夫
2021年3月21日 19:26
恋女房染分手綱道中双六の段丹波の国、城主の由留木殿のお湯殿子である調姫は年月が経つのも早いもので十二歳になった。かねがね約束していた江戸の入間殿への婚礼が正式に決まり、今日はその嫁入りの旅立ち当日、城内は忙しく賑わっていた。江戸から迎えの本田弥三左衛門という家老が、待ち合わせの朝の九時を前にして訪れていた。「それでは、お供が揃ったら若年寄から出発なされ。わしはしんがりをつとめる