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咲寿太夫
2022年11月26日 14:04
5. 季節はぐるりと巡り、陽気も汗ばみ、木々の葉も緑が煌めいていた。八百屋伊右衛門の店に並ぶ野菜の水も乾いていく。 卯月。「半兵衛は何をしてる。売り物が萎びるわ」八百屋の女房、つまり半兵衛の養母は苛立つ気を隠す様子もなかった。「松、さっさと水打ちをしろ」店を見回して、さらには家の様子も確認し、「さん、洗濯物が干上がる、早く取り込んで畳まんかい。畳んだら打盤で洗濯物を打って柔らかくす
2022年11月14日 15:35
1. 田を干すために水を引く。落し水の時期である。山城の上田村に暮らす大百姓、島田平右衛門は去年の秋に妻を亡くし、今は病に伏せっていた。上の娘のかるは婿をとって家にいる。下の娘の千代は大坂へ嫁にいった。「今朝から仕事がよく捗った。お竹、お鍋、ちょっと休もう」 台所で働いていた下女たちはひと休みに思い思いに立っていった。「台所に人がいないやないの」 かるの夫平六は新田開きの訴訟のため京へ