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妊娠してるんか私

前回 のつづき)

引っ越しも落ち着き、さぁいよいよ楽しいヒップな都会生活だ!と思っていた私には、ただ一つ気がかりなことがあった。

生理がこない。

いきなりそんなこと書かれても、という話だがコレが中々にストレスが溜まる。毎日「今日か?今日くるか?」と思いながら色んな意味で常に厳戒態勢を張っていなければならない状況、女性の皆さんならお分かりだろう。何なら男性にも分かって欲しい。それがもう二週間...たのむよ本当。

ただ実際生理というのはちょっとしたことで簡単に周期が乱れてしまうもので、私も過去に遅れたり止まったりしたことがあるのでそこまで気にしていなかった。まぁオランダに引っ越してきてガラッと環境が変わったし、きっと思った以上にストレスが溜まってるんだな私。いやはや。

と思ったら妊娠していた。

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(*その時の自分の表情)

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その時のことは忘れない。生理不順の相談で病院に行く前に「まぁ一応やっとくか...とりあえず安心したいし。」という軽いノリで薬局に行き、不安なくらい安い3ユーロ(360円)の検査薬を手にとり、レジで店員さんに”いやいや違うんですよ私は”と謎の脳内フォローをしながら帰宅してトイレに入ったのだ。

そうしたら、圧倒的な陽性反応が現れた。

ひとり言で「マジかよ〜」と言ってる人は一般的にだいぶイタいが、この時ばかりは許してほしい。まじかよ。

いやいやしかしこんだけ安い検査薬だ、アテにならない。と思い(と、思いたい)今度こそ病院(注1*)に連絡を取るが『え、妊娠検査?それ薬局で検査薬買って自分でやって。うちでやってんのも同じだから。』と言われて撃沈。薬局に舞い戻り、今度は2個入り10ユーロ(1200円)のちょっと高いやつを買って再トライ。ちなみにこの時プレッシャーを1人で背負えなかったので、日本にいる10年来の親友に連絡して実況中継をしていた。

そしてやっぱり現れる(+)サイン。

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 (*その時のLINEのやり取り)

本当に思い当たるフシのない妊娠だった為、喜ぶ余裕もへったくれもなく軽くパニックを起こしていた私に、親友であり保育士である友人は心が落ち着く言葉を色々とくれた。さすが毎日子供たちと触れ合っているだけあって説得力がある...彼女の「勝手だが私はすっかり叔母気分だよ」と言う言葉に笑ってしまい、心がほぐれる。

そして夜

ソファーで夫のごきげんレコード談義を話半分に聴きながら、どう言おうかな...と私はそればかり考えていた。待ちに待った我が子ならいざ知らず、コウノトリに突然落とされたフライング我が子...なんて切り出せばいいんだ。

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マイルス・デイヴィスの黄緑のアルバムを聴きながら、私は特に意味もなく「これは外が明るいヨーロッパの夏の夜にテラスで一杯やりながら聴きたい大人の曲だね」と呟いていた。すると夫が「それやろうよ」と言ってくれるもんだから、あコレはチャンスだと思い私はそのまま「ん〜...できないかもなぁ」とだけ答えた。それだけで彼は「え、ほんとに?」と勘の良さを発揮してくれた。勘のいい子、好きです。

「え、ほんとのほんとに?」「え、調べたの?」とただただびっくりしている彼に、検査薬で二回とも陽性だったんだ、と伝えた。今後のことで色々話さなきゃいけないことはあったけど、とりあえず二人で近くのジェラート屋に行くことにした。

夜の散歩をしながら、夫が落ち着いた声で言った。

「さっきは、◯◯ちゃんが嬉しいのか悩んでるのかわからなかったから言えなかったけど...僕はすごく嬉しいよ。」

まだまだ色んな気持ちで押しつぶされそうだった私は、この一言でとても救われた。大好きな人が強く幸せを感じてくれている...とても素敵なことじゃないか。

その夜は買ってきた0.5Lのジェラートを食べながら、ソファーでNetflixの映画を観て過ごした。おかわりを何度もする夫を横に、チョコってこんなに酸味があったっけ?とぼんやり思った。


私の妊娠生活は、こうして唐突に幕を開けた。


結婚式に新婚旅行...夫婦ふたりの結婚生活を数年楽しんでから、じゃあそろそろ子作りを!と始めて苦労の末にようやく生命を授かる...ぼんやり描いていたそんなプランが一瞬で吹き飛び、神様の気まぐれで人生どうにでもなることを痛感した30歳の夜。

まったく人生はアンプレディクタブル。

この時、妊娠6週...私はまだその後3ヶ月続く「つわり」という悪魔を知らなかった。

つづき

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(注1*)日本と違いオランダでは、思い立ったら直ぐに病院に行くということはできない。自分で登録したホームドクター(GP)に電話をし、予約を取り、数日後彼らに診察してもらい(必要ならば)その後ようやく専門医に診てもらうという手順だ。とにかくスーパー時間がかかるし、面倒臭い。詳しく知りたい方はこちら



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