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つむぎ

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詩人・佐藤咲生。
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2021年12月の記事一覧

詩「溶けない夜に」

内出血のように滲み出している
欲は体のうちがわを流れて滞る
でもわたしがこんなに狭いのはわたしのせいじゃない
あなたを見ると瞳が熱くなり
そのことに最後まで絶望する夜だった
むしゃくしゃした日の帰りは少し高いアイスクリームを買い
小さな袋をカサカサと揺らしつ歩く
まろやかなミルクと芳しいバニラが
少しずつ溶けてゆくから急がなくては
夜風が髪を梳かすのが怖い
逃げ惑うこともできないわたしをきょうも

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詩「やわらかな大地、そして暗闇」

宇宙人がいる確率は、どれくらいだと思う?
それはわたしが今淋しいと感じるのと
同じくらいの確率じゃないかな。
なんか怖いなとあなたは笑って、
布団を肩まで掛けてくれた。
替えたばかりの少し厚みのある布団。
優しさの重さと香りとぬくもりがする。
こんやは照らされることよりも、
沈んでいくことを選びたい。
だれの影ももう見えなくなった。
背骨を撫でられ、
半歩先はやわらかな大地で、そして暗闇だと気付く

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