詩「溶けない夜に」

内出血のように滲み出している
欲は体のうちがわを流れて滞る
でもわたしがこんなに狭いのはわたしのせいじゃない
あなたを見ると瞳が熱くなり
そのことに最後まで絶望する夜だった
むしゃくしゃした日の帰りは少し高いアイスクリームを買い
小さな袋をカサカサと揺らしつ歩く
まろやかなミルクと芳しいバニラが
少しずつ溶けてゆくから急がなくては
夜風が髪を梳かすのが怖い
逃げ惑うこともできないわたしをきょうも
あなたがしっかり抱きとめる
できるのならちゃんと溶ける愛であってほしいと願いながら
どれだけ大切にされても本当は届かないよと震えながら
何かに追われとてもとても苦しいけど
それはきっとあなたの愛でもわたしの愛でもないのだろう



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