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②君の歯、10年後はどうなるか分からないよ。

「この歯の根の短さ分かる。あと何年持つと思う??」
「これ、すごい力で矯正したでしょ。」

はっとさせられた。大学1年生の時から始めた歯列矯正。幼き頃から母に出っ歯を攻められ続け、やりたくないけど根負けして始めた矯正だった。1年か2年金具を我慢すれば、母の攻撃から逃れられると思って始めた歯列矯正だった。
そして38歳の今になって、歯の根がめちゃくちゃ短くなっていることに気付いた。遅すぎた気付きだった。今まで通っていた歯医者は、誰も指摘してくれなかったのが不思議ではあった。

大学1年制の時、私が歯列矯正を始めた歯医者では、「成人近くなってからの矯正は、歯根吸収の発生リスクが高まる。」なんて説明はしてくれなかった。もちろん、当時の私は全くそんなリスクについて知らなかった。

「すごく美人になるよ。」
歯列矯正の歯科医から、そんな台詞を言われた。

高校卒業の18歳まで、偏差値で人格を測るようような進学校に通った。家庭環境は厳しく、親からは自分の成すことやること否定され続けていた記憶しかない。ずっと褒めて褒めて欲しくて認めて欲しかった。命がけで勉強して、何とか一流大学に合格した。やっと恋愛も始められると思った10代の終わりだった。そんな時期に矯正歯科医から言われた言葉を聞いて、私の心は高鳴るような思いがした。色めいてしまったのかもしれない。

そして何より母の攻撃から逃れられる。
幼き頃から言われ続けた「出っ歯だ!!」という攻撃から逃れられる。
そう思った。

そうやって流された自分の弱さ。本当は矯正なんてやりたく無かったのに。
健康な歯を無理に抜いて、強引に動かして、歯にいい訳ない。
10代でそこに気付けなかった。私と比べ物にならないほどのぐちゃぐちゃな歯並びの子が歯を抜いて矯正している姿を見ていたので、当時は歯を抜くことに違和感が持てなかったのだ。悔やんでも悔やみきれない。

歯根吸収リスクを説明しなかった歯医者を訴えらるのか。
そんな思いも過ぎる。
しかし、訴えることにパワーを使うより少しでも改善の可能性を模索しようと決意した。

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