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農業のすすめ
農業を仕事にしたことがない身でこのタイトルはちょっとおこがましいかもしれないが、それはさておき。
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エルサルバドルの、特に田舎の地域に行くと、屠畜されたばかりの肉をいただくことが間々ある。
その命をいただく時、横では飼育されている動物たちが元気に生きている。
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日本の会社勤めの4年間、日常的な食事は徐々に無機質なものになっていた。
何か口に入れないと頭が働かない。
惰性と義務感でオフィスビル内のコンビニで手軽に食べられる物を買い、口へ運ぶ。
食べることが好きな私だが、どうにもそれは無機質で
食事をいただいているというよりは、「摂取」に近かった。
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大学は畜産の学科だった。
2人一組で1羽の鶏が渡され、解体する実習は今でも鮮明に覚えている。
一通り鶏の生理や解剖学を座学で学んだ後の実習だった。
まず、首を切り、血を抜かなければならないのだが
この作業にどれほど躊躇したことか。
友人と私、どちらが保定し、どちらが鶏の命を絶つか。
話合いの末、私が鶏の首にナイフを当てることになった。
私は1回で命を絶つことができず、
鶏は鳴き叫ぶ。
私も泣きたい。変わってほしい。
保定する友人も動かしてはなるまいと必死だった。
鶏は頭を切っても若干動いており、
その身体は温かい。
不思議と頭がなくなると「食べ物」に見えてくるが
その温かさで「生き物」を実感する。
熱湯に浸け、羽を取り、解体していく。
教授の解体のなんと美しいことか。
私たちの解体する鶏に申し訳なくなる。
その晩、同じ学科の友人たちと捌いた鶏を鍋にしていただいた。
不慣れな私たちが捌いた肉は不格好で少し血の味がしたが
誰も不味いとは言わなかった。
その日から食前の「いただきます」の重みが少し増した。
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スーパーに行けば整然と肉や魚、形の整った野菜が並ぶ。
日々食べているものについて、無知であることに違和感を感じた。
どのような人たちが農業に携わっているのか。
どんな環境で生産物が育ち、収穫されるのか。
そこではどんな工程があり、工夫されるのか。
全ての農業を見ることは難しいが
畜産、漁業、農業(米・野菜)の栽培・育成・収穫環境が気になった。
牛は愛らしい。
牛の体温は人間より高く、触れるとほっとする。
肉牛であれ、乳牛であれ、愛情を注いで育てられる。
海はおもしろい。
漁港に行く度に知らない生物に遭遇する。
海で泳ぐ魚の色彩の鮮やかで美しいことよ(推しはサバ)。
畑は美しい。
長野の高原野菜収穫のお手伝いでは
早朝の朝露に濡れた野菜、靄の掛かる山に見惚れた。
田んぼは多様性の宝庫だ。
田んぼはその地を利用して生きる生物が多く存在していた。
農家さんの多くはその生きもの達を大切にし、上手に共生している。
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働きだしてから、食べ物への感謝が薄らいでいた。
生産からあまりにも離れてしまっていたからだろう。
エルサルバドルに来てよかったことの一つに農が近くなったことがある。
初めて口にする食材、料理も多く、食事は生活の楽しみだ。
もし、周囲に進路に悩む学生さんがいれば
私は農学部を強くおすすめしたい。
その後の進路をどう進もうと、
農業の知識と経験は人生を豊かにしてくれるはずだ。
農学部へ行かずとも、好奇心と行動力さえあれば
農業について知る機会は実は結構ある。
農泊で地元の人との交流を楽しみながら農業を体験してみることもできる。
週単位~数か月、短期の農業バイトやお手伝いに参加するのもいいだろう。
農家さんによっては収穫をイベントにしていたりもする。
各地で開催されるファーマーズマーケットに行けば、熱い想いを持った農家さんが集まっており、推し農家さんに出会う機会になるかもしれない。
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会社員の時、千葉に借りていた田んぼがあった。
通いが厳しく、1年しか借りていなかったが、
今でも穂波から感じる風の気持ちよさを思い出す。
帰国したら働きながら小さな農業を再開したい。
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