1. オペラについて書き始めます
1. マガジンを作るきっかけ
外出自粛期間に友人とオンラインで話せば、「最近は家でなにしてる?」という話題は恒例で、「オンライン配信されているオペラとか舞台映像見ているよ!」「え、どんなのやってる?」というやり取りを各所で何かと繰り返してきた。その結果、大好きなものについて語っているときのオタク特有のテンションで話してしまい半ば強引に言わせたようにも思えてきたが…「もっと知りたい、特にオペラはよく知らないので教えてほしい」というリクエストをもらった。
同じ趣味の仲間が増えれば嬉しい、という思いから私も「よろこんで!」と答えたけれども、考えてみれば「教える」ほどの経験も知識がないわな…と囁く心の中の声が聞こえてきて、最近あまり舞台芸術について感想の文章化をできていないことも自覚する。
そこで、話のネタ探しや勉強のためにもnoteで書きながら考えていこうと、これまで美術メインで書いてきたnoteに新しいマガジン「舞台芸術」を加える事にした。主に扱っていこうと思うのはオペラ。
(もちろん美術マガジンの力を抜くというわけではないです!!(大事)ちょっと更新が滞ってますが、美術への愛も一番の趣味であることも変わりはないので書き続けます。)
ちなみに、以前、この時期だからこそ公開されている、コンサートや舞台などのオンライン配信に関する情報を一元化する記事を書いた。(量を減らすため後日オペラ章だけ移行したので、オペラはこちら。他のジャンルについてはこちら。)イタリアのオペラ、ニューヨークのダンス、ロンドンのミュージカルやバレエについての情報が多い。
上の記事では、どこにアクセスすれば舞台映像を見られるのか、ひとまず情報を集めた。といっても、それがわかったとして、元々オペラを好きで聴いてきた人でなければ、「じゃあ見よう!聴こう!」となるかといえば、何から見ればいいの?途中で寝そうなんだけれど、何を知っていれば楽しめるのか?などと疑問が出てくるだろうとも思う。それらが頭に浮かぶのは当然で、きっかけさえあればというものの、そのきっかけは自分でしか作れないものだったりもする。記事を出した4月中旬は、とにかく自分用にまとめよう!と急いでいたが、その辺りについて本当はじっくりと文章化できればとも思っていた。
2. 書くモチベーション
そこで、好きなものについて考えを深めたい、という純粋な気持ちを励みに、(更新ペースはゆっくりではあるが)舞台芸術についての記事を書き続けていきたいと思った。美術について書く上での姿勢とあまり変わらない。
以前の記事(『noteを書く理由──自分の記憶をつなげるための作品鑑賞』)に細かく書いたが、私がnoteを書く目的の一つに「芸術作品や生活の中でのちょっとした体験との出会いについて考える時間をとり、考えを記録すること」が挙げられる。舞台芸術について書く際にも、まずは、何かを鑑賞した、あるいは読み聴きした際の個人的な感想、そこから思いついたことや思い出した記憶の断片の繋がりを筋道立てて綴ることが基本。
その意味で日記を公開しているのとあまり変わらないけれど、(次の章でも書くように)ちょっとは読者を意識してもいる。
まだまだ経験も知識も相当浅いので解説というのは変だから、こういった知識が関係してくるのか!こんな見方・聴き方ができるのか!といった発見を、マガジン内で少しずつ読者と共有できればと思う。
ちなみに、色々知っていないとオペラを楽しめないのではないかという不安があるかもしれない。もちろん他の芸術にもいえるけれど、知識はあるにこしたことがない。
ただ、よし!勉強できた!と自覚するのを待っていたら時間はどんどん過ぎてゆく。オペラを聴きながら、それを足掛かりに少しずつ気になったことがあれば調べてみるくらいの姿勢でよいのではないか。そう私は思う。何しろ切り口が山ほどあるので、オペラに触れているうちに自然と物知り(引き出しが多い人)になっているはずだ。
それから、書くモチベーションとしてもう一つ、「顔の見える相手に喜んでもらいたい」という理由もある。それについては次の章で。
3. オペラ仲間を増やしてみたい
実はオペラについて書く試みは初めてではない。実際にウェブ上で公開したことはないが記事の下書きのようなものを書いてみたことがある。そのきっかけは、2年ほど前の夏、友人とメトロポリタン歌劇場のオペラライブビューイング上映を見に行った時だった。
*「メトロポリタン歌劇場のオペラライブビューイング上映」とは・・・
まだ世間で知られていないようだけれども(混んでいない今はチャンス)、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)では、最新シーズンの公演を映像化し、数週間後には世界各地の映画館で公開している。
チケットも現地の公演に比べたらかなりお手頃で、何ヶ月も前から席を予約確保する必要もないので、映画館に行く感覚、もっと言うと「休憩挟んで2本続けて映画を観るみたいな感覚」でオペラを鑑賞できる。
毎年夏から秋にかけてはアンコール上演といい、前年度以上の作品の公開もしている。
美術展であれば誘わずとも好きな友人は多く、比較的話題にも上がりやすい環境であるが、オペラは、値段も数千円(学割・U25割をフル活用してきた)する上に上演時間がかなり長いということで、友人を誘うことはためらっていた。ただ、ライブビューイングであれば気軽にのってくれるかなと思い、この年、2人の友人に声をかけたのだった。鑑賞したのは「トゥーランドット」と「チェネレントラ」。
誘った手前楽しんでもらいたい!とその魅力を(相変わらずのオタクテンションで?)語っていると、「オペラの感想や見方についての文章を読みたい」と期せずして2人ともから後押しを受けた。
しばらく時間が経ってしまった上に、これからどれほどの頻度で更新していけるかは私の力にかかっているが、そう言ってくれた友人の顔を時には思い浮かべながら頑張っていきたい。
では、これからマガジン内で書いていきたいことの頭出しとして、「オペラの楽しみ方」「オペラとの出会い」について少し記しておく。
4. オペラの楽しみ方
先ほどMETライブビューイングを紹介したが、これは公演をただ録画し上演しているだけのものではない。歌手や指揮者の幕間バックステージインタビューやカメラワークを駆使した舞台裏映像あり、もちろん日本語字幕つき、ということで、オペラの入門としてお勧めの内容である。歌手たちが祖国に向かってメッセージを送ったり、私の役(トゥーランドット)って本当に共感されなくって…とこぼしたりと、お茶目で仲睦まじい歌手たちの一面が見られるインタビュー映像はくすっと笑える。
上で紹介した記事の通り、期間限定ではあるがオンライン上で公開されているオペラの映像が今はふんだんにある。手軽に好きな時に楽しめるという点でとても良い。
そうはいっても、劇場での鑑賞には格別の良さがある。舞台と客席の一体感、幕が上がるまでの緊張感、音が身体に響いてくる感覚。長い幕間休憩。それこそ、アウラがあるわけだ。やはりオペラパレスで全幕見た演目は、鮮明に印象に残る。しばらく公演休止が相次いでいるだけに、劇場にまた行ける日が待ち遠しい。
さらに、オペラに触れる機会や楽しみ方はバリエーションに富んでいる。
CDやDVD、演奏会形式の公演(舞台上のオーケストラの前で歌手が歌い、舞台装置や目立った演技はない)、ガラ・コンサートもある。
音楽や脚本や舞台装置もさることながら、衣装や美術に注目してみてはどうだろうか。新国立劇場の誇る「トスカ」の舞台装置は、バロック式の教会の内装美術を再現している。この数年のプロダクションでいえば「愛の妙薬」と「ホフマン物語」の衣装もネオンカラーでポップ。METのメイキング映像では「トゥーランドット」の小道具担当者が生首の作り方を解説していた。芸が細かい…!そのような舞台の細部までよく見られるのは、ライブビューイングやDVDなどの醍醐味だろう。
それから、バレエや絵画と同じ題材を扱っている場合に注目しても、見方は広がる。例えば『椿姫』『マノン』はバレエでも有名。『トリスタンとイゾルデ』や『ドン・ジョヴァンニ』などの物語はオペラに限らず数多くの芸術作品にインスピレーションを与えてきた。17世紀初期オペラにはギリシャ神話を題材としたものも多くみられることも興味深い。(最初の記事でつらつら書いても面白くないので、この辺りでやめる。)
このように例を挙げればきりがないが、アプローチの多様性こそ、私がオペラを好きになった理由の1つ。聴覚も視覚も心地よく満たされて、様々な楽しみ方ができる奥深い芸術だ。オペラに触れていれば引き出しが広がると書いた通り。
5. オペラとの出会い
皆さんがオペラと初めて出会ったのはいつだろうか。
記憶にない…という方も、ひょっとしたら馴染みのあるメロディーがオペラの一部だったという可能性は大いにある。というのも、小学校の運動会などで流れる「天国と地獄」や「ワルキューレの騎行」(初耳学のBGM)はオペラの一部。フィギュアスケートのプログラムでも「仮面舞踏会」や「トゥーランドット」をはじめとしたオペラ曲は多用されているので聞き覚えのある方も多いのではないだろうか。
私がオペラ鑑賞を趣味としたのは4年ほど前のこと。もとをたどれば、初めて鑑賞したのは親に連れられた小学5年生の時で、演目は「魔笛」だった。今でも夜の女王のアリア(復讐の炎は地獄のように我が心に燃え、という歌詞も技巧も凄まじい歌)を耳にした時の興奮(本物はCDよりも凄い!カコカコいってる!鳥肌たつ!)をよく覚えている。それからしばらく劇場から足が遠のいていたのだが、ある日、大学構内で新国立劇場のU25プランのチラシを発見。この金額でオペラや演劇・バレエが見れるなんて学生に優しい!素敵!と目覚め、今に至るまで新国立劇場で20程の上演を観て聴いてきた。
この奥深い総合芸術をもっと堪能したいという果てしない道のりは、これからもずっと続いていく。
願わくば、この記事で序曲のようにテンポよく幕が上がるまでの高揚感を届けたい(が、そこまでハードルを上げるとこれからの記事更新が大変)。
※ヘッダー画像と各章の間には手書きイラストを入れてみた。上手くないのでもう少し小さく表示されてほしいのだけれど…舞台の雰囲気がちょっとでも伝わればなと、イラストも少々記事に交えていこうと思う。