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麩愛
乾物は、私の台所の片隅に常駐している存在です。豆、わかめ、昆布、ひじき、切り干し大根、高野豆腐、麩等々のいずれかが必ず鎮座しています。
麩は頼りなさそうに見えて、良質のたんぱく源です。場所をとったり少し繊細だったりするけれど、彼らにしか任せられない仕事がいっぱいあります。
麩の中で、車麩とともに私が好んで手に取るのは仙台麩。車麩についても、またいつか場を設けますので、車麩専攻の方は少々お待ちください。
仙台麩は、油でじっくり揚げた麩です。
あっさりして軽いイメージが付きまとう麩界において、おそらく最もボリュームがあります。
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油で揚げてあるものは、おいしい。
これは古今東西を通じて頑然たる事実です。その油で揚げたのをしっとり煮ますと、揚げただけよりも煮ただけよりも数倍、いや数十倍、おいしさが増幅します。おでんの厚揚げやもち巾着に通じる、力強い滋味が生まれます。それは植物性のこく なので、油ものを煮たと言っても、カツ丼などとは違うんですね。カツ丼への賛辞として「滋味」はあまり相応しいとは思われません。別の良さがあるんです。
自炊をする方からは多少の理解を得られるかと思うのですが、私は朝昼晩と名もなきおかずを作りつづけて日々暮らしています。
たとえば煮物を作るためにレシピを見るとしても、ほとんどの場合、一字一句それを守り行うわけではありません。わざわざ何かを買いに行くことはなく、自分の持っている材料と調味料を使い回したいので、差し替え差し替えした結果、元レシピからはかけ離れていき、
「なんとなく面影があるかもしれない」
くらいのものができます。本来の煮物の従兄弟くらいのものができます。
味がばっちりキマってるわけではなく、大抵は見た目もぼんやりぐずぐずして、キマってないのです。丁度、この仙台麩とキャベツの玉子とじなど。
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「ハンバーグ」「鶏の唐揚げ」「だし巻き玉子」みたいに明快な、くっきりしたおかずではなく、お弁当や差し入れにもあまり適さなさそう。ギューンとテンション上がるわけでも、記憶にいつまでも残るわけでもない、普段着かそれ以下の地味な品々。
でも自分には十分うれしい。十分おいしい。
それらが文字通り私の血となり肉となって生命維持に貢献してくれていることも、また心を満たしてくれていることも、確かです。
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