イギリス大学院: 修士論文の進め方・結果
イギリスの大学院で人事の勉強をしているさけとばです。前回の記事では、指導教官が決まるまでの過程をご紹介しました。今回は、その後の執筆・提出・成績発表までの大まかな流れをご紹介します。
学部時代の卒業論文は仏と呼ばれる教授に甘え、執筆期間約2週間という完全に舐めた学生でしたが、英語で書くとなると最後の土壇場の追い込みはかなりリスキーと判断し、コツコツと進めることにしました。
全体としてはこんな感じです。
1.リサーチクエッションの探索(3〜4月)
担当教授に、自分が研究で明らかにしたいテーマを提案します。ただ単に興味あるから、ではなく、過去の研究で明らかになっていること、そうでない事(リサーチギャップ)を示した上で、どんな研究や調査を通じて明らかにするか、のアイディアについて、助言や指摘をもらいながらブラッシュアップしていきます。
2.データ収集の準備(4月)
大まかな方向性について教官のゴーサインをもらったら、研究のデータ収集の準備をします。
私はアンケート調査を通じてデータを集めて、それを統計的に分析する量的研究を計画していたので、アンケートの設問の精査や、アンケート/インタビュー/実験を実施するための倫理審査の申請書を学校に提出したりしました。
アンケートでは、過去の偉大な研究者の方々が開発し、信頼性や妥当性がある程度担保されている尺度(質問のセットのようなもの)を使います。先人の知恵の結晶に感謝する瞬間でもあります。
3.調査の実施(5月)
調査の対象となる人たちにアンケートの協力を呼びかけます。私のコースでは、修士論文の関する調査のサンプルは自前調達のため、自分の繋がりをフルに活用して対象の方にアプローチしてアンケートへの協力をお願いすることに奔走しました。(この過程で昔の同僚や友人がとても好意的に支援してくれたり、応援の言葉をかけてくれた事がその後の研究のモチベーションに大きく繋がりました。感謝です。。)
4.文献調査(5月)
アンケート回答数を稼ぎつつ、リサーチクエッションや仮説の説得力を高めるための関連研究を探していきます。
文献を関連ワードや著者で検索→読む→活用出来そうな情報をマーク→要約&パラフレーズを繰り返し→自分なりの文献リストを充実させていきます。
世の中にはたくさん面白い研究があることを目の当たりにして、興味が掻き立てられる一方で、主張に至るロジックを理解することに苦慮したり、1日文献検索していたけれど、自分の研究との繋がりという観点では収穫が少ない日があったりと、個人的には1番根気が問われるパートです。。
5.調査データの分析・考察(6月)
目標としていたアンケートの回答数を集められたので、統計ソフトを使いながらデータが仮説通りの結果を示すか検証していきます。SPSSという社会科学向けの統計ソフトを使うため、操作は簡単なのですが、統計初心者の私は常にテキストとにらめっこしながらの一進一退の作業となりました。
研究の常かもしれませんが、必ずしも仮説通りの結果が出る訳ではありません。私も当初想定していたモデル通りにならない部分も多く、落ち込んでいたのですが、教官はポジティブに励ましてくれます。「いつも思い通りに行くことなんかないから安心しなされ。別にものすごくセクシーな仮説や結果じゃなくて大丈夫なんだから、もう少し色々な角度でデータを眺めて、統計的に説明できるポイントを探索してみなさいな。」
私は当初の自分の仮説やモデルに固執していたのですが、少し視点を変えて見てみると、実は面白い結果が出ているところがありました。
ここで、少し研究の切り口を軌道修正してみることに。
教官も「そこはナイスな着眼点だね!!関連するこんな研究があるから、読んでみると考察の参考になるよ」と軌道修正のための情報を提供してくれたりしました。(いつもall the best!!でメールを締め括る優しい教官です。。泣)
6.第1ドラフト提出(7月)
今までパーツごとに作っていた情報のラストやドラフトを合体させて1つの「論文」という構成された文章に落とし込んでいきます。
頭の中では一貫性のあるストーリーになっていると思っていても、書き出していくとロジカルではなかったり、適切なタイミングで、適切なトピックを出せていなかったり、パズルを組み合立てては崩して、の繰り返しの沼にハマります。
沼から抜け出せぬまま第一ドラフトの納期が来てしまい教官からフィードバックをもらうことに。
「実験の手法、分析のレポートはもう特に手直しするところが無い位いい感じだよ。問題は仮説立案のところ。文章がなぜその仮説になるか全然説明してなかったり、リサーチクエッションに関係ない内容だったりで、ストーリーを追うのがかなり難しいよ。まだまだワークが必要だね。」褒めるところを褒めながら、バッチリ正論で清清しくダメ出ししてくれる教官。。ありがたや。
沼から出られないと思っていましたが、バッサリダメと言ってくれた教官の愛の鞭をエネルギーに変えてもうひと頑張りです。
7.推敲→提出(8月)
日本語で大まかな筋道を書いて見たり、読みやすいと感じる研究論文の書き方や構成の流れを真似てみたりしながら「読める、流れについていける」論文を目指してブラッシュアップしていきます。
散漫になりがちなので、2日ごとのノルマを決めて強制的に進めていくスタイルを採用笑し、追い込みをかけます。
最後に英語のグラマーチェックソフトなどを使いながら校正をして、提出納期9/6の約1週間前に無事に?オンラインで提出を完了させました。
8.気になる成績発表(10月末)
そして、有難いことに。。
Distinction という1番良い成績を取得できたとの通知が数日前に届きました!素直に嬉しいです。
こうやって振り返ってみると、要所要所で色々な人からの励ましを受けて提出に至ったのだな、としみじみした気持ちになります。
・数年ぶりの怪しいコンタクトにも関わらず快くアンケートに答えてくれた友人
・家族や知り合いに積極的に紹介して母集団集めを手伝ってくれた昔の同僚
・暴走しつつある研究を、頼もしく、でも個人を尊重して導いてくれる教官
・同じ苦しみや悩みをフランクに分かち合い、応援しあうコースメイト
・論文を提出したと伝えたら、真っ先にシャンパン片手にお祝いにきてくれた飲み友
・いつも論文の進捗を気にかけながら週末の予定やリフレッシュの機会を作ってくれた夫
改めて色々な方々への感謝の念が湧き上がります。
色々な事に自信のない私ですが、一つ、やり遂げる事ができたという経験は今後の自分の糧になると信じています。
長い記事になってしまいましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました。
このnoteの空間も、修論で病んだ時の私の癒しの場であり、刺激の場でありました。スキやコメントで応援してくださった皆さま、私のページを訪れてくれた皆さんにも改めて感謝です。ありがとうございます。
私もまた、頑張る誰かを応援できる人間でありたいと思います。
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