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なぜ僕は生産者に会いに行くのか。

先日ふと頭をよぎったこの疑問を深堀りしたいと思った。

五年前の僕は前日に注文して届く食材に最善を尽くしていた。
大きさ、形、色は揃い
貴重な高級魚も相当に長期間、時化が続かない限り手に入る
何の疑問も抱いていなかった

それから環境も変わり、現在の親方の下で働かせて頂いて、しばらくたってからの事
筍農家 田原一樹さんの竹林に連れて行って頂いた。

塚原といえば筍の名産地として有名
立派なトップブランドだ

一樹さんの畑を見てすぐに違和感を覚えた。

「なぜこの区画だけ雑草もなく、歩くと沈むくらいふかふかなんだろう」

その様子は他の畑とは明らかに違っていた。
聞くとまだ挑戦段階なのだが、シーズンに向け1年間手入れをしない期間などなく
夏も秋も冬も畑に出向き海藻、貝殻、糠、落葉、干草などを入れ手入れしているという。

なぜそこまでするのか。

収穫の時期は2ヶ月もない。
ただその瞬間にベストを尽くすために、途方もない時間と愛情をかけているのだ

そうして春の訪れと共に地表に頭を出さんとする筍は信じられない程の豊潤な香り、柔らかな甘味と身質を持ち合わせている。

そして収穫後、宝物を大事に詰めている一樹さんは掘り起こす際に出た筍の破片を集めてキラキラした目でこう言った。

「これで筍御飯作るとめっちゃうまいんですよ!」

言葉に表現できない想いと、たぶん憧れに似た感覚。
衝動というのがしっくりくるのか、そんな気持ちになりました。

静岡県焼津 サスエ前田魚店 前田尚毅さん

その出会いは、突然でした
偶然再会した友人に
「笹原さん、静岡出身なら前田さん知ってますか?」
「いや、知らないけど」
「絶対会ってみて下さい。すごい人ですよ!」
こんな会話だったと思う

僕の出会った生産者の方の中でも、
最も特別な方だ

訪問させて頂いた際、どんなに忙しい中でも水揚げされた魚ひとつひとつの状態や魅力、最適解を教えてくれる。

時には魚屋と料理人としての関係や考え方を語ってくれて厳しく指導してくれる。

静岡で独立を考える僕にとって最高の先輩だ。

とにかく魚に対する想いが誰よりも強い。
さらに現場の漁師さんへの想いもだ。
それを物語るのが魚の扱いから、梱包作業に至るまで日々、現場で行われている仕事。
怒号が飛び交い、緊張感がはりつめている。
食材にとって最高の瞬間を届けたいという想いが共有された空間は
受け取る側の人間としてとても貴重な体験で、僕は尊敬の念をもって見つめていた。

総括に入る前に、
お休みを頂き、自由に飛び回る事を見守って頂いている親方には本当に感謝しています

5年前の僕と明らかに変わったのは、食材に対する想いだ

専門的な知識や技術と共に、
考えられない程の手間と有限である時間が注がれた宝物であるからこそ、
素晴らしい生産者の扱う食材のバトンを受け取れる事は料理人にとっての憧れだ。

僕は感謝の気持ちや最適にしていくための情報のやりとりはするが、
生産者の方のテリトリーには踏み込まない。
100点の食材など簡単に口にするほど甘いものではない。
もちろん毎日なんて絶対にない。
簡単に口にする人は僕は信用しない。
現場を知り、信頼関係があるから、キラキラの宝物を任せて頂けるのだ。

そして僕が信じているもの
人を感動させたいという情熱だ。
料理人としてはもちろんの事、
生産者の方も、食材への想いのその先には、
食べる人の感動がある。
その情熱は出会い、交わる事で化学反応を起こし、熱狂として伝播する。
人々の熱狂は更に大きな渦となって世界に広まると僕は本気で信じている。

それを故郷の静岡から発信していきたい。
頼りになる仲間も、すでに世界に挑戦している親友もいる。
僕も走り続けるだけです。

さっそく明日も生産者の方にお会いさせて頂く機会を得ました。
故郷の歴史、背景をもった食材を復活させ、
サスティナブルにしていく活動をされている方だ。

農業生産活動という名のエンターテイメント

とその方はおっしゃっていました。

また一つ、熱狂を産む情熱との出会いが増えそうです。

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