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【ドラマ感想】御手洗家、炎上する

以前からネットフリックスのランキング上位に入っていて気になりつつも、マイリストにぶち込むだけで放置していた。
だが今回はサスペンス系と言う事で、サスペンス好きの祖母と一緒に見たので個人的な感想を書き留めておく。

ちなみに私は原作の漫画は一切知らないので、あくまで今回の実写ドラマについてのみの感想だ。


※以下ネタバレあり。



まずこの話の一番大事な部分「一体誰が御手洗家に火を点けたのか?」個人的に一番嫌いなタイプのオチだったのがショックだった。

このタイプのオチが嫌いな人は一定数いるのではないかと思う。
「実は偶然が重なった事故でした。犯人なんていませんでした」オチが。
大逆転裁判をプレイした時の消化不良感と苛立ちを思い出した。

正直このオチをするくらいなら普通に真希子か希一が火を点けたで良かったと思うし、あまりにも真希子への制裁がヌル過ぎる。
確かに火事は不運の重なりだったとは思うが、そもそもの話真希子が御手洗家から物を盗んでいなければこんな事にはならなかった可能性が高い。
人の物を盗んであたかも自分の物のようにSNSで振る舞い、オフ会まで開き、常に皐月に妬み嫉みを渦巻かせていた真希子が諸悪の根源なのに徹底的に叩かないオチにモヤる。
真希子は最終的には離婚をするが相変わらずインフルエンサー気取りは続けるし、その際には「御手洗真希子」を名乗り続ける。
なんなん?何でこいつ笑って動画撮ってんの?何このオチ。


だが物語の大まかな流れは分かりやすくて好きだ。
医者一族御手洗家御手洗治に嫁いだ妻・皐月の娘・杏子が十三年前に起きた実家の火災で全てを失うところから話は始まる。
そして杏子は火災の真相を探るべく後妻に収まった真希子の元へ、自分の家でなくなった御手洗家へ家事代行として潜入する。
妹の柚子と友人のクレアと協力し、何とか真希子が火災に関与していた証拠を探す杏子。
様々なピンチを乗り越えつつ、ついに火災の真相が解き明かされる。

うん、分かりやすい。
嫌いじゃない。
ドラマとしての出来も高い。
サスペンス系と言う特性上、続きが気になるように出来ているので惰性で見る事もない。

問題は登場人物の考えの浅さと、大団円にする為のヌルい制裁。

真希子のクローゼットを漁っている姿を希一に撮影された杏子がそれをネタに脅されるのだが、ここで「どうしよう」と恐怖する杏子の気持ちに共感が一切出来なかった。
理解は出来る。
弱味を握られ満足に家の中を探す事も出来なくなり、どうしたら良いのかと途方に暮れたくなる気持ちはちゃんと理解は出来る。
ただどうしても共感が出来ない。

だって分かりきってた事じゃん。
え?逆に聞きたいんだが、御手洗家に引きニートがいるいないに関わらず、家人の誰かに同じような状況にされる事を一切想定していなかったのか?
考えが浅いし甘過ぎない?
あとどうしようも何も希一が「誰のおかげで引きニートが出来ているんだ」と言う話をすれば一発解決じゃないか?
家事育児完璧で医者の夫を支える良妻賢母だった真希子が「実は家事代行を雇って家事炊事全部やらせていた上にそれをあたかも自分でやりましたと投稿していた」なんて事を杏子にバラされたら困るのは御手洗家だろ?

だからそもそもの話、一番最強のカードを持っているのは杏子だ。
つまり杏子が希一の脅しに屈する理由も恐怖する理由もない。
なのに泣いて怯え出すから正直言って「何で?」としか思えなかった。
柚子に向かって「助けて」を言わせる為のご都合展開だなと感じた。

あと杏子に関しては「二次創作で見る"私が考えた最強夢主"みてぇに設定が生えてくるな」とも思った。
特に希一に脅され、まとめサイトの編集等をやらされた時。
家事代行サービスをする為と、母子家庭で母親の負担を減らしたい為に家事が高水準で出来るのは納得がいく。
だがライティングスキルが急に生えてくるのは話が変わってこないか?
希一が「検索に引っかかりやすくしてる」と呟いていたので、SEO対策もこなしている。
そこまで行くとちょっと話が変わってこないか?
ちょっと都合が良過ぎると言うか、杏子に対して設定乗せ過ぎ感があったのは終始引っかかった。

柚子に関しては、「頭が良い方ではないのに頭を使うから失敗する」の典型を見せられて「マジで頼むからお前は何もしないでくれ」と思いながら見ていた。
真希子に諸々がバレた時に「どうしようお姉ちゃん」と泣き出されても「だから何で勝手をするの?」と言いたくなる。
まあそれだけ俳優の「馬鹿な妹の演技」がしっかりしていた証拠とも言える。

希一に関しては言動がブレブレで、ある意味こいつが一番ご都合展開の割を食っていると言っても過言ではない。
杏子を脅した際は「俺の奴隷になれ」と、「希一くんAVの見過ぎじゃない?大丈夫?」と言いたくなるようなセリフを吐き。
杏子に「あの火災はまだ終わってない」と言われれば、途端に聖人になる。
そして「真希子達の中の一体誰が火を点けたのか?」を分からなくさせる展開になれば「先輩がバイト先の金パクったけど火事が起きたからお咎めなしになったわ。神様が助けてくれたって話」と喋り出す。
うーん、ブレ過ぎじゃない?
これをするくらいなら一貫して聖人か、実はドクズでしたのどちらかで良かったと思う。

真二は「よくこんなにまっすぐに育ったな」と思うだけ。
まあこいつが火災の原因ではあるのだが、火災を引き起こすそもそもの行動理由が真希子のせいなので、「実は僕でした」と明かされても特にこれと言って何も思わない。
君はいつか柚子とくっつくと良い。

真希子はブレないが、短慮過ぎて吃驚する。
すぐに自分で自分の首を絞める。
多分ここが「真希子はインフルエンサー」の設定を上手く使えていない原因なのかなとも思った。
韓国のセレブリティーを見た後だからと言うのもあるかもしれないが、もっとインフルエンサーの設定を活かして、もっとネット世界の炎上を描いてほしかった。
あまり上手く機能している気がしないと言うか、ストーリー全体で見た時に映えていない。
インフルエンサー設定がおまけのように感じてしまうのでタイトルの「炎上」も重みが減る。

そして旦那の治。
正直この治がクソ。
真希子の次か、何なら真希子よりクソ。
そもそも元嫁の唯一のママ友と再婚とかどんな神経してんだよ気持ち悪い。
しかも再婚した理由も「治さんが悪いんじゃないわ~治さんは何も悪くないわ~悪いのは皐月さんよ~」と言う治全肯定bot真希子に自己肯定感を上げてもらっただけで「真希子好き好き再婚~」とかクソにも程がある。
こんなクソみたいな後妻を家に引き入れて、自分の実の娘とは十三年間一切の連絡も取らない(多分真希子に止められていた)とかどうしようもないクソ。
しかも真希子が火災に関与していたと知るや否や「疫病神!」だ何だと罵り始め、真希子が炎上して手に負えなくなったら即警察に通報。
火災の件では諸悪の根源は真希子だが、もっと根深い部分での諸悪の根源は治だと思う。
こいつもこいつで考えが浅いからこうなるんだろうなと言うのはよく伝わるが。


と言う登場人物の考えの浅さを踏まえた上で、ラストの大団円。
「あー、日本のドラマの悪いところが出たな」と思った。
杏子と希一がくっつくのは良い。
別に希一は悪くないし。
真二が御手洗病院で働く事を望むのも良い。
まあ元々事故みたいな火災で、その罪滅ぼしをしたいと願うならこの道しかないだろう。
治が病院経営したままなのも、まあ良い。
元々医者一家だし病院が潰れれば地域住民が困る。

だがしかし真希子、てめぇはダメだ。

もっとインフルエンサーとしてバッチバチに炎上して二度と復帰出来ないようにしてくれないと困るし、また貧困生活に逆戻りとかしてくれないと困る。
見ていてもやもやする。
スカッとしない。
制裁がヌル過ぎる。
YouTubeチャンネルの開設をしているとかそんなオチで納得出来るかよ。
三人もの人生をめちゃくちゃにした代償を支払っていなさ過ぎる。

もうすっかり中国や韓国のドラマに慣れてしまった身としては、こう言う制裁シーンは相手が再起不能になるまでやってくれないとすっきりしない。
「相手にも事情があったんだよ」は分かる。
「だから程々で許してあげようよ」は分からん。
どう考えても、それはそれこれはこれだろう。
事情があれば何をしても良いなら警察も法律もいらねぇんだよ。
人様の物も旦那も家も盗んで自分の物にして、三人の人生をめちゃくちゃにしたと言う部分を散々見せつけられた上で、制裁がこの程度では見終えた後の消化不良感が残る。
もっとしっかり叩き潰してほしかったなあ……。

ちなみにサスペンス脳指数が強い祖母は序盤で「次男が犯人やな」と見抜いていた。
私は終盤まで真希子だと思っていた。


・総評
結構ダメな部分と言うか、個人的に「引っかかるわここ~」な部分ばかりを書いてしまったが、ドラマとしての出来は良い。
ちゃんと続きが気になるように出来ているし、誰が犯人なのかが終盤は二転三転するので面白い。
サスペンスをしながらも、杏子と希一、柚子と真二の恋模様も描いているので見応えは十分ある。
俳優の演技も素晴らしいし、衣装やセットも綺麗で良い。
Vaundyの主題歌もカッコイイのでお勧めだ。

ただ先にも言ったように「悪に対しての徹底的な制裁」「明確な犯人」を求める人には向かないだろう。
私自身もこのドラマを面白かったとは思うが、やはり消化不良感が残った。
「色々あったが最終的には綺麗に大団円に終わる」のが好きな人は向いているかもしれない。

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