【韓国ドラマ感想】今、私たちの学校は…/지금 우리 학교는

「ゾンビものって好きじゃないけどこれはストーリーがちゃんとあるから面白いよ」

そう言われてお勧めされ見てみたので、以下に個人的な感想を書き留めておく。

※以下ネタバレあり。

めちゃくちゃ面白かった。
いや、本当に韓国のドラマの凄いところって「マジで続きが気になるように出来ているところ」だと思う。
毎話毎話、「えっ！ここで終わんのかよー！もう続き気になるー！あと一話だけ見よ！」が始まるように出来ている。

本作の舞台が学校で、主要人物のほとんどが学生だったのも個人的には良かった。
突如始まったゾンビパンデミックで顕著になる人間の閉鎖的な部分が丁寧に描かれていたのだが、そもそも学校とは非常に閉鎖的な場所だ。
勝手に決められ自分の意思では変えられないクラスメイト。
教師と生徒、カーストの上位下位。
まだ子供だからで済まされるある種の治外法権。
学校とは孤立したド田舎の村みたいな存在だ。

そこで「噛まれたら必ずゾンビになる」なんてものが流行り出したら、未熟な子供と閉鎖的な学校と言う場面では地獄しか起きない。
仲が良かったグループ内でさえ、疑わしきは罰せよの空気が生まれ疑心暗鬼になる。
これが最高に良かった。
出てくる学生の全員が「いるいるこう言う子」と思える絶妙な塩梅のキャラクターでグループ内がギクシャクした時の雰囲気が最高だった。

特にナヨンの「自分は何もしないくせに文句しか言わない女感」がもう本当にリアルでいる感じで見ていて心底腹が立つ。
素晴らしい。
教室に逃げ込むもゾンビが迫ってきたら出入口から一番遠い所で頭を抱えて座り込んでいるだけのくせに「早く追い払ってよ！」と金切り声で叫んだり、その高いプライドのせいで輪を乱しまくったり。
これをいい歳した大人の設定でやられると何だこいつと思うが、学生と言う設定が非常に良いバランスを取っていた。
突然の非日常に放り込まれ平常心が保てない中でも何とか保とうと綱渡りのメンタルと思考から繰り出されるクソ女ムーブ。
最高。
ギョンスをゾンビにしたのもはっきり言って普通にクソなのだが、未熟な子供が自分のプライドを守る為に取った行動だと思うと可愛げもある。
まあクソなのは変わりないんですけどね！

そしてそのナヨンに「悪いのはナヨンじゃなくて先生」と言う担任のパク先生が「良い人なんだけど最後まで大人ではなく教師だった」のも、閉鎖的な学校が舞台なのを活かしていて良かった。
普通の社会で考えれば、例え天地がひっくり返ろうがサンバを踊ろうが悪いのはナヨンだ。
自分の身がしっかりと安全な場所で「そいつがゾンビだったらどうするのって言う自分が正しい」を押し通す為に、本当にゾンビになるかどうかは分からなかったとしても明確に「ゾンビになれば良い」と思ってゾンビにしたのだ。
明確な殺意があった。
明確な殺意を持って殺した。
それを「悪いのは皆をまとめられなかった先生なの」と言ってしまう辺りが最高に大人ではなく教師だった。

「何かひとつくらいは皆の役に立つ事が出来るでしょ？そしてちゃんと皆に謝るのよ」
そう言ってパク先生はゾンビになった訳だが、大人として本当にナヨンを想うのであれば言葉はもっと考えるべきだ。
「貴方がした事は絶対に許される事ではない。だけど生きて償う事は出来る。必ず生き延びて皆に謝って皆の役に立ちなさい」
これくらいの事を言うべきだ。
これを言えない辺りが本当に、最高に大人ではなく教師だった。
いやー、良いキャラ立たせていたね。

この後ナヨンが偶然見つけた食べ物を皆に届けようと手提げ袋に入れるのだが、「お前その程度で人殺しを許してもらおうとしてんの？」と言う未熟な学生感が溢れていて本当に好き。
皆の中にも優先順位があり、その中で自分と自分が殺したギョンスではギョンスの方が上だと言う事が分からない、考えられない辺りが本当に子供。
自分を除く全員分の一日三食おやつと夜食付きを一ヶ月分用意して、叩頭を三百回くらいしてようやく許すかどうか考えるレベルだぞ。
まあ届ける事なく死ぬんですけどね！

グィナムに見つかり食われて殺される時、音楽室のピアノの下敷きになっているゾンビがナヨンの声に反応して暴れ、足先でピアノを鳴らす演出が凄く好きだった。
食い殺されている後ろでピアノが不規則に鳴っている。
凄く好き。
OPの無数の動く白いものがアップになると無数のゾンビの手だった演出も好きなのだが、韓国のドラマは好みの演出が多くて良い。
無駄な自重が少ないからだろうか。

あとこのグィナムも個人的にはかなり好きだった。
いじめっ子だったので「まあ死ぬだろ」と思いながら見ていると案の定ゾンビに襲われ死亡。
「死んだわ～やっぱ死んだわ～」と思っていたらまさかの進化ゾンビとして復活で「そう来たかー！！！」とわくわくした。
グィナムが終始小悪党なのも良かった。
結局ゾンビになろうが何だろうが、中途半端なクズでしかない。
だからチョンサンを執拗に追いかけ回す。
ゾンビだらけの世界でゾンビの肉体と人間の知能を持っているのだ、最早最強と言っても過言ではないのにやる事はゾンビになる前と何も変わらない。
ゾンビになろうとも別にその人の持つ人間性が根っこから変わる訳ではないのが良く描かれていた。

あといじめっ子と言えば！
いじめられっ子側だったチョルスてめぇこの野郎！！！
いじめられる事に理由をつけたくはないし、そもそもいじめてくる奴が十割悪いのだが、こいつのあの性格に関しては「だからてめぇはいじめられんだよ！」と言いたくなるように出来ていて良いキャラだった。
屋上を出て行くウンジをマジで追いかけないどころかドアの鍵を閉めやがって。
オンジョ達が屋上に来た時も「そこにゾンビではなく人間がいる」と分かった上で鍵を開けずに自分だけ救助されやがって。
「お前そう言うとこやぞ！」と思うと同時に「こいつ死んだな」と分からせてくれる展開好き。
好きだったウンジに食い殺されたんだ、本望だろ。

そして今作においてもっとも良いと思ったところ。
主人公サイドの人間も容赦なく死ぬところ。

正直ここがダメだと見ていて白ける。
どんなにピンチを作られても「どうせ死なねぇんだろ」と思ってしまう。
ところがどっこい、本当に容赦なく死ぬ。
チョンサンの母親やオンジョの父親はもちろん、オンジョ達のグループの学生達も最後の最後までちゃんと容赦なく死ぬ。
これが見ていて緊張感がありとても良かった。
特にゾンビものと言う作品の特性上、主人公バリアが効かないのは賞賛に値する。

その主人公バリアが効かない結果、終盤でチョンサンが死ぬのは予想外だったのでとても面白かった。
正直死亡フラグを立てまくっていたのはスヒョクだと思っていたし、ナムラと両思いになった瞬間「こいつ死んだな」とも思ったが生き残った。
ただチョンサンが最後まで自己犠牲的で一貫していたのは良かったし、その結果死ぬ事になるのも展開として美しかった。
ゾンビを引き付ける為に叫ぶ言葉が「俺は今日この学校で一番幸せな男だ！」だったのはもうエモいとしか言い様がない。
死ぬ直前にずっと片思いだったオンジョとキスしたんだもん、エモ過ぎんだろ。

ゾンビパンデミックの原因に関しても、個人的には良い理由だった。
頭のおかしなマッドサイエンティストが作ったとか、よく分からないが自然発生したとかではなく、いじめられて死にたがっている息子をどうにか生きさせる為に出来上がってしまったものと言うのが良かった。
まあ説明を聞いても「いやそうはならんやろ」とは思うが、ゾンビとなって死なない体になる事やより生きようと強くあろうと進化し続ける事も理由がしっかりあって作品にのめり込む事が出来た。
軍の司令官が「頭のおかしくなった科学者程厄介なものはない」と言っていたが、「その厄介な科学者を作り出してしまったのはこの社会なんだよなあ」と言う部分にも無情さを感じられてとても好き。

いじめ問題然り、結構社会問題も盛り込まれた作品だと思う。
特に配信者関係ね。
数稼ぎで現地に赴いては死にそうになったり、ゾンビがソウルまで来たとデマを流したり。
もしリアルでゾンビパンデミックが起きたらこう言う奴絶対にいるんだろうなと思わせるリアルさがあった。
デマを流した奴が謝罪配信で「本当にすみませんでした、なんて言う訳ねぇだろば～か！ば～か！ひゅ～！」って言ってくるくる回っているの好き。
「てめぇもゾンビになれ～！」って思えるから好き。
シーズン2で泣き喚きながらゾンビ食われてゾンビになるの待っているね。

・総評
とても面白い。
ゾンビものながらストーリーがしっかりしていて、友情あり恋愛ありと完成度が高い。
「ゾンビものはちょっと」と思っている人にもしっかりお勧め出来る。

グロさに関してはゾンビものと言う特性上、ある程度は致し方なしと割り切る必要はある。
ただ個人的な感想ではあるが、そんなにグロ描写はない。
ゾンビが人を食べる際も音はするが、内臓が飛び出して引き千切られてと言ったモロ描写は確か三回くらい。
それ以外は基本的に血が流れる程度なので、グロが苦手でも見られると思う。
ソウみたいなエグイのはほぼないので、ゾンビものの中でも比較的安心設計ではないだろうか。

あと少し気になる点があるとしたら、学校を起点に様々な場所で様々な人が動くので視点が結構変わる点だ。
学校だと思ったら刑事になったり軍になったりと結構視点が変わる分、登場人物もそれなりの数がいるので途中で「誰だっけこいつ」「こいつ何してたんだっけ」などを思う事が私はあった。
群像劇的な面もあるので、どちらかと言えば休日に一気見をするのが良いかもしれない。

シーズン2の制作が決定しているのでこちらもイカゲーム同様、非常に楽しみである。