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166. NANA 【少女漫画】

ご無沙汰してます。わたしは元気です。
ノートPCを電気ストーブに近付けすぎたせいで画面にリンゴ型の焦げみたいなのができてちょっと悲しい今日この頃です。

1月のことになりますが、京都大丸で開催された「矢沢あい展」を観に行ってきまして。完全予約制・チケットはセブンチケットのみというちょっと行くまでのハードル高めな展覧会でしたが、三十代くらいの(多分)お姉様方でかなり賑わっていました。
代表作の原画を中心に、イラストの仕事や連載当時の雑誌の付録など、これまでの仕事を総括的に振り返る内容で、思っていたより漫画の内容を忘れていることにちょっぴり恥ずかしくなりつつも楽しく観ることができました。
グッズ展開も幅広く、何となくその場のノリで読んだいこともないのに「NANAの苺のペアグラス」を買ってしまうという……。

そう、矢沢あい作品はとにかく「天使なんかじゃない」が好きで、パラキスとかご近所も好きなんですが、「NANA」はちょっと毛色が違うなあと思っていて、完結もしていないしと手を出していなかったのでした。
でもグラスも買ったことだし、これは読まねば。ということで早速読んできました。
(なぜかマンガミュージアムではコミックスが1冊欠けていて、NANAのために漫画喫茶にも行く羽目になりました。まあこれも良い思い出です)


「NANA」は同じナナという名前を持つ小松奈々と大崎ナナが偶然出会い、一緒に暮らすことになる、というところから始まる青春物語です。
二人はかけがえのない存在としてお互いにお互いのことを思い合いながら、周りの環境や出来事に翻弄されて次第に距離ができていってしまう、それを未来の二人の視点で振り返りながら話が進んでいきます。

物語の軸になるのは恋愛と音楽。特に奈々は恋愛体質で、その辺りのごたごたが生々しいのがこれまで読んでこなかった大きな理由なのですが、やっぱり読み始めて数巻のうちは少女漫画にしてはお姉さん向けな(セックスシーンもけっこう多いです)描写に、かなり疲弊しました。
でもナナがパンクバンドのボーカルなので、段々物語の中で恋愛と音楽の比率が釣り合ってきて、後半は苦なく読めました。話はどんどん暗くなっていくのでメンタルは落ちましたが……。

巻数もそこそこありますしエピソードは一口に紹介できるものではありません。何よりまだ未完ですし。
キャラクターも、わたしとしては盲目的に好きな人物は特にいなくて、皆“ここは好きだけどこういうところは嫌い”という感じ。つまり皆多面的で人間らしいんですよね。一概にこういう人と断定できない。
故に紹介がとても難しいというか、読んでみてくださいとしか言いようがない……。

本筋だけでなく、小ネタやおまけページまで見所が満載です。特に、「どーゆー人生歩くと七並べをさけて通れるんだ」というセリフと(後からキャラクターの背景を知ると無邪気に笑うことはできなくなりますが、初見での話)、おまけページで「天使なんかじゃない」のマミリンがお色気バーをやっている設定で登場したのが良かったです。実際、七並べを知らないことはどれくらい稀有なことなんでしょうか。あとわたしは「天使なんかじゃない」でマミリンが一等好き。

今回はそういう詳細な内容についてではなく、幾つか作中の言葉を書き留めておきたいです。
展覧会で矢沢あい漫画は想像以上にトーンとCGでできていて、絵が上手いとかじゃなくて言葉の力で共感を生む作品だということを改めて実感したのですが、(あと、カラーイラストをマーカーで塗っているものがあったのにはけっこうびっくりしました)
「NANA」も主役二人の行動にはついていけない部分も多々あれど、いくつも分かる! と共感して泣きそうになる言葉が詰まっていました。
特に先月気分が落ち込むことがちょこちょこあったから、ナナたちの悩みや思いがダイレクトに響いたのかもしれません。

のどが渇いたら110円でコーヒーは飲める

だけどあたしは
かわいいカフェでお茶をするのが好き
おしゃれな部屋に住みたい
流行りの服が着たい
話題の映画が観たい
最新の携帯に替えたい
車の免許が取りたい
海外旅行に行きたい

だから仕事を探さなきゃ
がんばって働かなきゃ
その為だと思えば楽しいじゃない
まだ足りないの?

どれだけ沢山沢山欲しい物を思い浮かべても
ここから立ち上がる気力さえ湧いて来ない

たったひとつでいいのに
夢中になって走り出せるものがあたしにもあればいいのに
空っぽのあたしは性懲りもなく
恋をする事でしか自分を満たせずにいた

自分がこれから何をしたいのか、どこへ向かいたいのか、先月は改めて考え直していて、「それは本当にやりたいことなのか?」という問いにこの奈々のモノローグがぴたっとハマりました。わたしもカフェとか服とか旅行とか好きだけれど、夢中になって走り出せるほどのものはない気がする。

あの頃のあたしには
ナナを取り巻く世界の全てが
みんな眩しく輝いて見えた
誰でもよかったわけじゃないの
同じ光の中にいたかったの

ナナを独り占めしたかったんじゃない
ナナに必要とされたかっただけなの

別にタクミの忙しさに文句を言いたいわけじゃない
タクミがあたしと会えない時間も全然寂しいと思ってなさそうな所が寂しかったの

これもとてもよく分かる。友達とか自分が仲良くしたいと思っている人たちにとって、果たして自分はいかほどの存在価値があるんだろう、彼女たちは素晴らしい人たちだけれど自分は全然同じ場所に立てないと、気分が凹むとしばしば思います。
同じ気持ちを描いた作品は他にも幾つか知っているように思いますが、この言葉もストレートに必要以上の自己卑下を言い表してくれています。

1つ目の言葉もそうですが、こういうことに気持ちを乱されているのは自分だけじゃないと思えるのが、わたし的にはけっこう救いになります。“自分だけが上手く生きられない”と思い込んでしまうと、全然鬱から脱却できないので……。

どんな逆流にも踏んばり続ける事が
人生なんだとあたしは思ってたけど
流されて生きるのはそんなにバカな事じゃないよ
前へ進めるなら

幸せになりたくて心が揺れ動く
その度誰かを傷つけて
そんな自分に傷つく
幸せのゴールなんてあるのかな

「NANA」では、一つの問題が解決しても、すぐに新しい悩みが生まれます。現実世界みたいに。だからポジティブな言葉も迷いの言葉も手を替え品を替え繰り返される。多分読むタイミングによって心に響く箇所が違って、今回はこれらの文章をメモしておきたいと思ったのでした。


話の内容なんかは正直言って「天使なんかじゃない」とかの方が好みだけれど、言葉を手元に置いておくためにいずれ完結したら全巻揃えようかな、完結して欲しいな……。
まあでも、ちょっと一区切りついたというか、先の展開が何となく分かるようなところで止まっているので、今読み始めてものんびり待っていられる心境です。いずれを楽しみにしています。

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