ハミング・ハスタータ 【現代詩】
例の如く、現代詩手帖に応募して落選したもの。冬真っ只中ですが、小気味よく爽やかなソーダ水のイメージです。寒くしてしまったらごめんなさい。
晴れわたって太陽がのどかに照っている、その光を体のすべてで吸収し、呼吸し、散歩するハスタータは快活なミニのワンピース姿です。すらりと手、すらりと足、自分の中に湧き上がっては流れていく音に合わせて揺れながら、大股のスキップ。ふいに丸い太陽を黒い影がよぎるのと、彼女が鼻の頭に何かを感じて手で触れてみるのと、にわかに捲き上ったソーダ水の小竜巻が勢いよく彼女の背後から近づいてくるのと、それらは同時のことでした。
ハスタータは隣に並んだ竜巻に手を伸ばすと、中から傘を取り出しました。空色の傘をぽんと広げると微小な泡の水玉もよう、炭酸の楽しいささやき。彼女は胸を弾ませくるくる回り、そうしている間に傘の分だけしぼんだ竜巻は疾走してどこかへ行きました。そのうち雨足が強まると、ソーダ水の傘は機嫌よく雨滴をはじき、彼女は竜巻とは別の方角へ気のむくまま進みます。雨雲が通り過ぎ、太陽がまた戻ってきました。手放した傘は泡立つ水たまりになりました。
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