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118. なんて素敵にジャパネスク 【少女漫画】

同名の少女小説を原作とした、1989年から93年にかけて発行された少女漫画、「なんて素敵にジャパネスク」。
名前だけは知っていて、でも然して興味もなかったこの漫画、偶然入手して、せっかくだからと読んでみたら思いの外面白かったのでした。

これは平安時代の貴族社会が舞台で、恋愛コメディーを主軸に話が展開しつつ、政治問題なども絡んでくる多層的な物語です。
大筋は、「おてんばかつ頭がキレるという貴族の娘らしからぬ面白い性格の瑠璃と彼女に惚れている生真面目・素直な高彬、この二人が結婚しそうでしないでごたごたしている」ということになるのですが、その家族や脇役・端役に至るまでキャラクター設定がしっかりしていて、彼らに焦点を当てたエピソードなんかもあります。
特に全11巻の半分以上にわたって展開される、瑠璃の初恋の吉野君についての話は伏線も巧妙だし、”悪人はいなかったのに誰も望まない結果になってしまった”切なさに胸を打たれます。(ネタバレすると感動半減なので曖昧に言っています)

飛鳥・奈良時代や室町の漫画は読んだことがあるのですが、平安時代を舞台とした作品は初めてかも。平安貴族の生活がありありと描写されており、新しい発見も多かったです。

たとえば、平安時代は結婚するのも一苦労で、物忌みや方違えの日を避けて三日連続で逢瀬した後、速攻で和歌を交わし、それから公に結婚を発表する、という習わしだったのだとか。
それで、瑠璃と高彬はいっつもタイミングが合わなかったり初夜直前で何か事件が起こったりして、最終巻になるまで結婚できなかったのでした。

平安貴族の雅な(堕落した、とも言う)生活の様を見ていると、この時庶民はどういう暮らしをしていたのかしらと心配にもなりますが、これはフィクション、破茶滅茶で時にスリリング・時に知的などたばたが楽しくてどんどんページを繰ってしまいました。

あまりに一気に駆け抜けたので、吉野君のエピソードのラスト以外特別心に残るようなことはなかったし、幾つか矛盾があるようなよく理解できなかったくだりもあるのですが、全体としてからっと爽やかで小気味良い作品でした。
瑠璃の女房の小萩がサバサバと良いお姉さんといった感じで好き。

漫画版は、瑠璃と高彬がようやく結婚に辿り着く、というところで終わっているのですが、実は原作小説にはまだ続きがあります。それが後に人妻編として漫画家されているのですが、画像を検索してみたら絵柄が変わってしまっているようでした。残念……。同じ絵柄だったら読みたかったな。

平安時代の漫画と言えば大和和紀の「あさきゆめみし」が思い起こされますが(読んでないけど)、こういうのもあったんだと実りある発見となりました。


ではまた。

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