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1ミリも恋愛してないSF少女マンガセレクション

少女マンガが好きです。
特に70年代から80年代のSF少女マンガが。

ロマンチックな絵、
叙情的で詩のようなことば、
宇宙への憧れや夢をつめ込んだ甘美でたまに切ない世界。
幼少の頃からそれらの影響を受けて育ち、今もわたしの主要な構成物であると言っても過言ではありません。

でも社会に出てみると、おや???
思ったより昭和の少女マンガの認知度が低い……?
というか少女マンガ自体、何か敬遠されているような……。

「少女マンガSFが好きです!」と言うと返ってくる、
んーよく分かんないけど
少女マンガって恋愛ばっかりしてるんでしょ?
とにかく目がおっきくてキラキラしてるよね。
ほんとにSFの少女マンガなんてあるの?
という反応。

それは誤解です!!!!!
そういう作品はいっぱいあるけど!
そっちの方が主流だけど!!
そうじゃない作品だってたくさんあるんです〜〜〜!!!

そう、恋愛してない作品だって
目が小さくてキラキラしてない作品だって
SF作品だってそこそこあるんです。
そこで「ほら例えば〜〜」と例を出しても、かなり有名(だと思っている)作家でも伝わらないこともしばしば。
虚しい…………。


ここはひとつ、「少女マンガ何となく敬遠勢」に

恋愛が一切出てこなくて

目がおっきくなくてキラキラしてなくて

SFを扱う

少女マンガ

をつきつけてギャフンと言わせてやろうではないか。
いや、違う、少女マンガを読む気になってもらおうではないか。


1. 家中のマンガを集める

ということで、絶対に恋愛の出てこないSF少女マンガを探します。

この”恋愛が全く出てこない”というポイントが厄介です。
絵柄とSFかどうかははぱらぱら見れば大体分かるからいいとして、
恋愛が全く出てこないかどうかを調べるには、隅から隅まで読むしかありません。あやふやな記憶で多分出てこなかった〜というのでは許されません。

なので今回は対象作品を自宅にある漫画に限ることにしました。
わたしと親の趣味に偏りまくったラインナップ、しかも他にもSF少女漫画はあれこれあることが分かった上での決断です。
まあでも、家にあるやつ=好きなやつ=自信を持ってお勧めできる=好きになってもらえる確率が高い!たぶん!

で、これが家にある漫画の全て。

どどん。


きれいに並べてみる。

どん。1列目。
どん。2列目。赤い。
どん。3列目。
どん。4列目。大体ジョジョ。
(並べるだけで3時間かかった)
並べている途中で1回雪崩が起きました。悲しかった。


計1061冊。
……意外と少ないな? 家族三人分なんですが。


2. 読んで探す

ここから少女マンガとそうでないマンガを選り分け、さらにSFものだけを抽出していきます。

そこでひとつの問題に直面。

そもそも少女マンガって何?

恋愛もの、SF以外にも、ファンタジー、推理、歴史、ギャグ、ホラーなどジャンルはさまざま。
ステレオタイプは存在しても、定型があるわけではなく、少女のためのマンガと言っても読者は必ずしも少女とは限らない。
昨今は少女マンガと少年マンガをミックスしたような作品も散見されます。

wikipediaの言い方を借りれば、

多くの隣接分野との境界の薄い、漫画界の連続的な一領域と化している。

つまりどこまでを少女マンガと捉えればいいのかーーー。

しばらく放心状態になり、思考が停止しました。

しかしどうにかして定義づけをしないと先に進めません。
考えることを放棄して亜空間を漂っていた意識を呼び戻し、うんうん唸りました。

辿り着いた結論は、
少女マンガとそうでないものを完全に分けるのは無理!
少女マンガ雑誌に連載されていたり、少女マンガレーベルから単行本が出ているのがひとつの指針になりそう。

その作品がいかに少女マンガらしくなくとも、編集者というお上が認めたということは、それはやっぱり少女マンガなのでしょう。
今回は、あんまり悩んでいてもしょうがないし少女マンガ雑誌に掲載された過去がある、もしくは単行本自体が少女マンガレーベルから出ているもののみを「少女マンガ」として扱うことにしました。

この条件のもと、蔵書を3分の2くらいまで削り、さらにそこからSFものだけを残しました。
それがこちら。

ばーん。

大分減りました。

あとは以下の工程で、恋愛が出てこない作品を探します。

1 まず、内容を覚えていて、恋愛が出てきたものを消去。
2 次に、ぱらぱらめくって恋愛関連のシーンを発見したものを除外。
3 最後に残った数作品を、しっかり読み込んで恋愛のれの字もないことを確認。

2の時点で既に、残った作品群はどれも目が大きくなくて星が飛んでもいなかったので、目の大きさについてはそれほど気にせずに進めました。
恋愛しない登場人物たちは、目が小さくても良いようです。

3. 1ミリも恋愛してないSF少女マンガはこれ!

厳密な審査に基づいて選び出された作品は、短編・中編計5作でした。
ほんの数ページしかない掌編も、番外編としてご紹介します。

●萩尾望都/ウは宇宙のウ
PETIT COMICS 萩尾望都作品集6 ウは宇宙船のウ収録
週刊マーガレット掲載

SF度      ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
目の小ささ  ★★
少女マンガ感 ★★★★★★★★
面白さ    ★★★★★★★★
コミカライズ マイナス☆☆☆

※少女マンガ感はフィーリング、面白さは話の構成の上手さとか心理描写の巧みさとか、諸々ひっくるめた作品の出来と考えてください。

レイ・ブラッドベリの同名小説が原作。
原作ありというところでマイナスしても、圧倒的SF感・少女マンガ感。
宇宙船に憧れる少年たちの友情と、複雑な心情が見事に捉えられている。
少女マンガの神様の異名を持つ萩尾望都の力が遺憾なく発揮されています。


●佐藤史生/花咲く星々のむれ
SATOSHIO collection  金星樹収録
別冊少女コミック掲載

SF度      ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
目の小ささ  ★★★
少女マンガ感 ★★★★★★
面白さ    ★★★★★★★★
美人な研究員に、研修生・リンが顔を赤くするシーンがあるのでマイナス☆☆

宇宙開発のための研究基地という舞台も、物語を左右する高度な人工知能を持つコンピューターも、紛うことなきSF。
しかし精神分析的な側面がかなり強く、「ウは宇宙のウ」に比べるとSF味がマイルド。
トラウマを克服できる人間と、働きかけるべき深層心理の存在しない人工知能、という対比は今のAI時代にも一考の価値があるのでは。


●佐藤史生/レギオン
SATOSHIO collection  金星樹収録
別冊少女コミック掲載
(「花咲く〜」と同じなので写真は省略)

SF度      ★★★★★
目の小ささ  ★★★
少女マンガ感 ★
面白さ    ★★★★★★

キリスト教の創成期を下敷きに、色々ごった混ぜにした作品で、ちょっと読む人を選びそうな気がします。
ルシファーは元々別の銀河の竜だった、などSF要素が散りばめられてはいるものの、全体に神話感が強い。
主人公が堕天使なので、少女マンガ的共感も切なさもあまりない。話自体は面白いです。

●佐藤史生/やどり木
ペーパームーン・コミックス やどり木収録
グレープフルーツ掲載

SF度      ★★★★★
目の小ささ  ★★★
少女マンガ感 ★
面白さ    ★★★★★★
結婚を考えたことがあるらしい幼馴染を一瞬回想しているのでマイナス☆

宇宙開発・テラフォーミング・入植者……とSF要素を畳み掛けてくるのに、寧ろ主題は未知の植物による幻覚と人間が生きていくということについて。
佐藤史生作品は、心理的な問題に重きを置いているものが多い気がします。
哲学する少年たち。
少女マンガSFを読み慣れていないととっつきづらいけれど、作品自体には少女マンガ感がない。


●萩尾望都/霧笛
PETIT COMICS 萩尾望都作品集6 ウは宇宙船のウ収録
週刊マーガレット掲載
(「花咲く〜」と同じなので写真は省略)

SF度      ★★★★
目の小ささ  ★★★
少女マンガ感 ★★
面白さ    ★★★★★

叙情的な画面構成はザ・少女マンガ。
対して扱っている内容は、寧ろ歳を重ねた人に読んでもらいたいような。
灯台を仲間だと思って海の底からやってくる恐竜の、切ない咆哮が耳に残る。
宇宙を扱ってきた他の作品に比べるとSF味は薄め。


恋愛を作中に取り入れないことで、どの作品も友情や家族愛といった別のドラマを取り入れていました。
今回長編がなかったのは、人間たちが関わり合うドラマを長く書いていくには、恋愛を避けて通るのが極めて困難だからなのだと推察します。

さらに心理描写の少ない掌編がこちら↓

<番外編>
●萩尾望都/砂漠の幻影 4ページ
PETIT COMICS 萩尾望都作品集15 モザイク・ラセン収録
グレープフルーツ掲載

SF度      ★★★★★★★
目の小ささ  ★★★
少女マンガ感 ★

●阿保美代/めいフラワー号 5ページ
KCフレンド お陽さま色の絵本収録
週刊少女フレンド掲載 ロマンシリーズ内の一編

SF度      ★★★★★★★★★★★★★★
目の小ささ  ★★
少女マンガ感 ★★★★★★



改めて、調査結果を報告します。

恋愛が一切出てこなくて
目がおっきくなくてキラキラしてなくて
SFを扱っている
最も少女マンガらしい少女マンガ

「ウは宇宙のウ」でした。

他、佐藤史生・萩尾望都両氏のマンガを読んでおけば間違いないでしょう。

(無事ハマったその後は、80年代の少女マンガと貸本時代の少女マンガへと歩を進めることをお勧めします。
何せ80年代は、少女マンガ家が「とりあえず1作はSFものを書いておけ」と言われた時代だそうで、SF少女マンガが探さなくても見つかります。
貸本マンガ時代はまだ確認できていませんが、男性作家が書いたSF要素のある変わり種少女マンガがいくつかあるらしいです。)


少女マンガ読んだことないんですよね〜という人に今度出会ったら、迷わずこれらの作品をおすすめしようと思います。

さて。
あなたは少女マンガ、好きですか?



*追記
note公式さんがなぜかこの記事を推してくれるので、宣伝させてください……
我が家にある漫画を紹介する、漫画紹介インスタグラム始めました。
主にこの記事の写真に写っている漫画を紹介していきます。
まだ投稿数少ないですが、ぜひ読みたい少女マンガを探してみてください。

うちの漫画
https://www.instagram.com/sakatarai30/?utm_source=qr&igshid=MzNlNGNkZWQ4Mg%3D%3D

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