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【コラム】プーチン氏にとってのウクライナ戦争とその後〈前編〉 (2024年4月26日)

『さかたのニュースまとめ』のコラムとして、『プーチン氏にとってのウクライナ戦争とその後』をテーマに執筆した(前編)。
この記事を読んで「先のことを考えすぎではないか?」と思う読者もいるだろう。
しかし、国家の地理的条件は不変であり、それを地政学的に考察することは重要と考えている。
ぜひ、最後までお付き合いいただきたい。


ウクライナ戦争

プーチン氏の歴史認識とウクライナ侵攻

ロシアによるウクライナ侵攻が2022年2月24日に始まり、〈ウクライナ戦争〉は現在も続いている。
ロシアの指導者であるプーチン大統領が「なぜウクライナに執着するのか?」については、以下の記事に取り上げられているため一部を引用している。

ウクライナ侵攻に踏み切ったプーチン大統領。
ウクライナを“兄弟国家”と呼び「強い執着」があると指摘されています。
そのよりどころとするのが、1000年前にあった「キエフ・ルーシ」と呼ばれる国の存在です。
(中略)
では、こうしたキエフ・ルーシの歴史をプーチン大統領はどう考えているのでしょうか?
去年7月の論文では、ロシアとウクライナがともにキエフ・ルーシにルーツを持つとして両国は「兄弟」であり「一つの民族」と主張しています。
この中でプーチン大統領はロシアとウクライナは「精神的、人間的、文化的なつながりは数百年にわたって築き上げられた」として、両国民の一体性を強調しています。その結び付きの始まりこそキエフ・ルーシであり、「ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人は皆、かつてヨーロッパ最大の国家であった古代ルーシの子孫」と述べています。

出典:NHK

プーチン氏には歴史家の一面がある。
今年2月の同氏に対するタッカー・カールソン氏のインタビューが記憶に新しいが、ロシアやウクライナの歴史を熱弁する姿が印象的だ。
プーチン氏はしばしば「ネオナチ」という言葉を用いてウクライナ侵攻を正当化してきたが、それは国外向けの方便であると言える。
筆者は同氏の歴史認識と、現実主義者として国益を重視しての行動と見ている。

ウクライナ侵攻の結果

プーチン氏は侵攻当初、「キーウは簡単に制圧できる」と踏んでいたようだ。
政治の中枢である同市を手中に収めて、ウクライナの主権を掌握する狙いがあったのだろう。
しかし、ウクライナ軍による想定外の反撃に遭い、その戦闘は〈ウクライナ戦争〉に発展し現在も続いている。

プーチン氏のこの“誤算”により、欧州の情勢はロシアにとって不利な状況となっている。
〈NATOの拡大〉である。

それまで中立を保っていた北欧のフィンランド、スウェーデンがそれぞれウクライナ侵攻後の2023年4月、2024年3月にNATOに加盟したのだ。
プーチン氏が以前から西側に警告し恐れていた〈NATOの東方拡大〉を同氏自身が引き起こした形となった。

出典:NHK

ウクライナ戦争後の欧州、ロシアが置かれる状況

話が飛躍してしまうが、この記事はウクライナ戦争を深く掘り下げることが主旨ではない点を理解いただきたい。

前項で説明したとおり、NATOの東方拡大はウクライナ戦争後も変わらない条件となる。
つまり、戦後もNATOとロシアの対峙、睨み合いが続くのである。

ここで、前回のコラム『なぜ国家は軍事力を持ち同盟を結ぶのか?』で説明したパワーバランスについて考えたい。

ロシアは世界第2位の軍事大国である。
欧州各国の軍事力では敵わないが、NATOという軍事同盟がある。
ロシアによるその同盟国への攻撃はNATO加盟国を敵に回すことになる。
フランスのマクロン大統領による〈ウクライナ派兵発言〉に対し、プーチン氏は猛烈に反発した(2024年3月1日 BBC)。
プーチン氏もNATO軍との衝突を恐れていると見られる。

NATOはロシアを恐れ結束し、一方のロシアもNATOを恐れている状況である。
ウクライナ戦争後も軍事的緊張が解消されるとは考えにくため、パワーバランスが釣り合っているかが重要であることに変わりない。
読者にも注目していただきたい点である。

おわりに

この記事を〈前編〉としてウクライナ戦争を取り上げ、欧州側でロシアの置かれている状況について私見を述べた。
〈後編〉も執筆中であり、視点を東の方へ移した記事となっている。
近日公開予定の後編も、ぜひ一読いただきたい。

参考文献(推薦図書)

『プーチンの世界』 - フィオナ・ヒル(著)、クリフォード・G・ガディ(著)、濱野大道(翻訳)
※Amazonアソシエイトリンクを使用。


X(旧Twitter):@sakata_takuro

Bluesky:@sakatatakuro.bsky.social

©️さかた拓郎

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