蜂蜜の夢、琥珀色。
年末年始の休暇は、ゆっくりと過ごした。
隅々まで家の掃除をしたり、積んであった本を読んだり。
表紙が気になって買ったハードカバーの新刊は、心を持ったロボットと心を失くした人間の話だった。
一息いれようとコーヒーを淹れる。
今日の豆は焙煎強めで味が濃い。
そのままでも美味しいし、ミルクを入れてもいいのだけど、今日は蜂蜜をいれることにする。
本を読んで頭を使ったし、糖分摂取だ。
琥珀色に輝くとろとろとし蜂蜜を匙で掬ってコーヒーに溶かす。
くるくる回してよくかき混ぜればOKだ。
強い苦味がまろやかになって、蜂蜜の風味とコーヒーの香りがマッチして美味しいのだ。
年が明けてもやることは変わらない。
ゆったりと本を読み、コーヒーを楽しむ。
ふと、鳥の囀りが聞こえるので窓を見ると、外はだいぶ白んで来ていた。
さっきまで夜のはずだったのにいつの間にか日が出てきそうだ。
本を読むのに熱中するあまり時間が経つのを忘れてしまったのだろう。
慌てて水槽のスイッチをオンにする。
服を脱ぎ捨てボンベを装着して中に入る。
元旦から7日は毎日水槽の中で眠らなければならない。
新しい年に向けて身体を作り替える為だ。
昔は3日間まるまる入っていたらしいのだけど、色々と大変なので7日間寝ている間だけに変わったらしい。
ひまわり色した液体は、ほんのり暖かくてとろりとしている。さっきコーヒーに入れた蜂蜜みたいだ。
この液体は肺に入っても問題なく呼吸できる代物ではあるのだけれど、昔上手く肺に取り込む事が出来ずパニックになって以来、ボンベを使っている。
無い方が良いのだろうけど、中々改善出来ないでいる。
まあ一年のうち7日だけなのでそんなに問題もなかろう。
つま先からそっと黄色い液体に浸かる。
体温と同じ温度に管理されているので、暑くも冷たくも無い。
強いて言うなら感触が少し変な感じがしてくすぐったいくらいだろうか。
ゆっくり、ゆっくりと浸かり頭もしっかりてっぺんまで浸す。
アラームは7時間後にセットした。
だいぶ寝坊助な時間の起床予定だが、まだお休みなので許して欲しい。
冷たくも暖かくもない水槽の中でふわふわと浮かぶ。なんだかとろりと蕩けていくよう。
新しい年に向けて身体をリセットする、大事な時間は、すぐに夢の中に落ちてわからなくなった。
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