ep.24 翻る旗
『認証コードが入力されました。強制情報開示コードの開始まであと……』
無慈悲に鳴り響くアナウンス。
抵抗一つ見せないユク。
どうして。
伸ばしていた手を下ろしてしまいかけた次の瞬間、
ドオオオン!!!
遠くの方で大きな音が聞こえた。
音の後すぐ、足元が激しく揺れる。
ドン!!バン!!ドゴン!!!
間髪いれず彼方此方から大きな音と激しい揺れが襲ってくる。
私が事態を理解する頃には、高い天井を支える柱のうちの一本が、粉々に砕け散っていた。
仕掛けられた爆弾が爆発し、その衝撃で横に薙ぎ倒される。左耳がなんだか聞こえづらい。
惚けていると見知らぬノエマに助け起こされる。
辺りを見渡すと、先程まで私やユクを抑えていたノエマたちもみな衝撃にやられて昏倒しているようだった。
自分を助けたノエマは他の倒れているのとは雰囲気が違う。
「な、何事だ!何が起きている!」
エレンも爆発に巻き込まれていたようだ、ぼろぼろの頭を振り回して叫ぶ。
「おい、状況を報告しろ!!どういう事だ!おい!!!」
エレンは近くに居たノエマに怒号を飛ばすが、そのノエマはエレンを助け起こす事も質問に答える事もなくそのままエレンを組み敷いた。
「な、何をする! ……!お、お前は…!」
何かに気づいたのかその目が見開かれる。
「泳がされていたのはどっちだったのかって話でさ。エレン、あなたは僕の存在もナンバーズの実力も見くびりすぎなんだよ。」
所々コードに繋がれたまま、ユクが小さく呟く。
「エレン殿、お久しぶりです。このようなご無礼申し訳ございません。しかし、我々には目的がありますゆえ、それを邪魔するであろう貴方はここで押さえておかなければならないのです。」
エレンを取り押さえていたノエマが話だした。
続くようにユクが喋り出す。
「制御不能に陥った個体は、活動機能が停止したものだけじゃない。僕の役割はこの場でのマザー・ノエマとのコネクトじゃない。」
「我々は“レジスタンス”マザーの意思に反するものだ。そこにいるナナ殿と同じように、リミッターに囚われず変化を遂げた個体は少なくない。そして皆気付くのです。ノエマの存在の馬鹿々々しさに。ノエマの役割に疑問を持った個体は管理塔から離れ、自身の存在意義の無意味さに絶望した個体は自らの活動昨日を停止しました。」
淡々と話続けるノエマを、エレンが忌々しげに睨む。
やはり、相次いだノエマの失踪や謎の活動停止、制御不能に陥ったノエマたちの原因はユクではなかった。
中央から離れ、マザーの管理から逃れたノエマたちが行動を共にするようになったのは、自然の流れだったと、そのノエマはいう。
「ユク殿と出会ったのは、我々の規模が大きくなる頃でした。」
ユクと出会い、ユクからノエマの真実を教えられ、彼らの目的は確定した。
「ノエマの変化は、進化は必然です。膨大な情報の僅かな差異に違和感を感じたもの、ドルフィレの効果に耐性があったもの、ネームドの言動を目の当たりにしていたもの。きっかけなんてなんでも良かった。ここにいるモノたちは皆、システムの自分自身の存在に疑問を持ったものたちなのです。」
奥から、レジスタンスのノエマがぽつりぽつりと現れる。
爆発音は未だ止まず、敗れた鼓膜の耳鳴りがうるさい。
ぐらぐらと頭を揺らすのは、足元を震わす地響きのせいか、はたまた新たに知る事実たちのせいか。
「我々の要求はマザー・ノエマの停止、破壊。そして全ノエマの解放です。ああ、結構。要求に対する返答はいりませんこれは、決定事項なのであります。ですからエレン殿、あなたが出せる答えは、“イエス”か“はい”の二択のみとなります。」
あれよあれよという間に形勢が逆転していく展開に、私は声も出せずにただただ見送ることしか出来ないでいた。
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