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ep.14 思惑

「以上が、監視対象624から私が得た情報の全てになります。」
ユクが連行されてから数日後、私は尋問のため中央管理塔まで来ていた。

あの日、ユクからノエマの正体を聞かされた私は、ユクの確保に伴い、ネームド候補としての任務を解任された。
ユクが私に与えた情報は、超特級レベルの機密事項だったため、私は情報制限の措置を受けることになり、特殊任務はおろか、通常任務も一時中断となった。

「どうだい、調子は。」
部屋の奥からエレンが現れた。
「する事が無さすぎる、という点以外は特に。これと言って問題もありません。」

「そうか、まぁいい。ところで、例の監視対象だがね、中々情報を開示してくれなくて、困っているんだ。」

こちらを伺うような視線が鬱陶しい。
ああ、どうして以前までの私はこの不快感に気付かずにいられたのだろうか。

「私が知り得る限りのことは先程話しました。あなたも見ていた筈です。それ以上のことは分かりかねます。」

「そんな頑なにならなくても、君になら何か話すかもしれないじゃないか。」

「もう、関係ありません。強制開示コードの使用はしないのですか?」

彼は人工知能だ。外からハッキングを仕掛けて強制的に情報を見つければいいじゃないか。
私はそう思ってしまった。

「うん?まあ、その手段も視野には入れてあるけど、アレにも色々と制限があるからな。使用するとしてももう少し先になるだろうよ。」

エレンはそこで一度言葉を止め、声の調子を落として聞いてきた。

「でも、いいのかい?強制コードを使用したら彼が壊れてしまうかもしれないんだ。彼は君の“友人”なんだろう?」

なにを馬鹿なことを。

「あれが友人関係だったのか、私には分かりかねますがそうですね、友人“でした”。そう思っていたのは私だけのようでしたが。」

「それもそうだな。ああ、ところで。」
エレンはこちらを見て言う。

「ずっと気になっていたんだがね、彼が無抵抗だった事が引っかかっているんだよ。」

「それは、数には負けると思ったからなのでは?」

「それはそうだろう。ただ、あそこは我々ですら把握出来てない通路が山とあるんだ。君の不意をつけばいつだって逃げおおせただろうに。」

「それはつまり、何と言いたいのですか?」

「いや、よっぽど捕まりたかったように思えてならないんだよ。それが少し気になってね。ま、気にしないでくれたまえよ。」

その言葉に引っかかって固まっているうち、返事を返す間も無くエレンは何処かへと行ってしまった。

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