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千年百合とカリグラフィー

千年百合のパールホワイト
柘榴水晶のクリアレッド
雪ホタルのスノウブルー

瓶に詰まったインクはキラキラと明るく輝いている。

「気になるようでしたら、試してみてください。」

あまりにもずっと眺めているものだから、店員さんが声をかけてくれた。

「あ、すみません、綺麗だなと思って。いいんですか?」

優しくそっと頷いてインクと、それからうっとりするほど美しいガラスペンを取り出した。
その綺麗なガラスペンをそっと受け取る。
差し出された紙は白と黒。まずは千年百合のパールホワイトのインクにガラスペンを浸した。

紙に乗った瞬間はクリアな線が、徐々に白く浮き出てくる。光の角度で煌めきが変わり、そしてどこか華々しい香りがする。

「千年百合のインクは日差しの良いところに置いておいてください。インクの持ちが良くなります。」
植物は日の光が好きですから。と店員さんはにこやかに説明をする。

次は柘榴水晶。
透き通るような、だけどどこか深みのある赤。
朱色ともバーガンディとも違う、柘榴色。
「カラスに気をつけてください。彼らは柘榴が好きですから。」
インクの入る瓶もガラスでキラキラと眩しい。
どちらにせよ気をつけなければ。
暗く、涼しいところで管理すると良いそうだ。

最後は雪ホタルのスノウブルー。
淡い水色のような紫のようなグレーのような、今にも消え入りそうな儚げな色。
線を引くたびに色が、表情が、光度が変わる。
店員さんがカーテンを閉め切る。
薄暗い店の中、雪ホタルの淡い光がぼんやりと浮き上がっていた。
「暖め過ぎないようにしてください。溶けてなくなってしまいます。冷凍庫や氷室の中で保管して、使うときも冷やして使ってください。」
少し気難しいですが、素敵なインクですよと、
閉じたカーテンをもう再び開けながら説明してくれる。

私は悩んだ。

大いに悩んで結局、三つ全て購入した。

うちに帰ったら葉書を書こう。
素敵なインクを自慢したい。

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