カップラーメンと消えた花
『帰れない』
そう言って泣きそうな顔をする天使に、俺は何も声をかけられなかった。
本来なら一定期間を過ぎれば自動的に呼び戻される“システム”があるらしいのだが、ハプニングでこちらに来てしまったためどうやらその“システム”が使えないらしい。
弱った天使は切れた羽の付け根が痛むのか、帰れない悲しみが強いのか、ぐったりとうずくまってしまった。
あいも変わらず人の布団を奪ったままである。
このままじゃ埒があかないのでなにか通信手段がないか聞き出す。
落ちてきた天使と衝突しただけなのに、なんでこんなに面倒をみているのか、若干不思議な気持ちになる。
考えたら負けだ。
朝ごはんは何が食べたいかリクエストを聞く。
鼻水を啜りながら天使は『らーめん、きのうの。』と小さく呟いた。
ワンルームに、カップラーメンの匂いが立ち込める。
カレーと、それからシーフード。
アザレアの花はもう消えていた。
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