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【読書感想文24】権力が嫌いな人にこそ読んでほしい「スタンフォードの権力のレッスン」

「権力」という言葉にどのような印象を持つだろうか?

政治家が自分の都合の悪いことをもみ消す力?上司が部下にパワハラやセクハラを強いる力?親が子供を言いなりにさせる力?

どれも権力の一側面であり、全て悪い使い方である。実際権力は他者や組織を自分の欲望の通りに動かすために行使される。そして権力行使の魅力は、ときに誠実だった人をも狂わせる。

しかしデイビッド・マクレランドは成熟した人間の健全な権力の使い方として、「他者のために立ち上がる義務、あるいは機会」、「権力とは他者の問題を解決するために使う、自分の外に存在するリソース」と述べている。

また応用倫理学の原則である与益原則とは、「大きな権力を伴う役割を担うものには力のない人々の福祉を優先する義務がある」を意味する。つまり権力は組織を健全な方向に向かわせるために行使するべきものである。

ではあるが、権力を持つ者は総じて大きな責任とプレッシャーを受ける。そして多くの場合恐れられ嫌われる。むしろ好かれようと部下に愛想を振りまく上司は逆に嫌われ信用されなくなる。

権力者は孤独である。

それでも他者のために権力を使おうとする高潔な人物は稀であろう。だが正しい権力者がいなければ徐々に社会や組織は腐っていく。まずは手の届く範囲で権力を行使すればいい。小さな権力とは家族や小さな集団にも存在する。悪いことを止めようとすることも小さな権力だ。

権力に関して「グローバルに考え、ローカルに行動する」というスローガンは悪くない。小さな不満や不快感に声を上げて是正しようとする行動を起こすことだ。一人一人が小さな権力を正しく使っていけば、ちょっと世界は良くなるかもしれない。

なんとなくこの本を読んでいると、ドラマ「踊る大捜査線」を思い出す。和久刑事の「正しいことがしたければ、偉くなれ」という言葉がまさに権力を正しく使うための真理だと思う。室井が出世したかったのは、警察組織を健全にするためだった。

青島が言うように、「リーダーが優秀なら、組織も悪くはない」というのが下位の人間が権力者に望むことであろう。


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