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【アルバム解説】さよならまでのあまやどり⑪ ~魔法が解ける、その日まで~

咲花-サカナ。-のフルアルバム「さよならまでのあまやどり」。
終盤に差し掛かる10曲目に収録した「魔法が解ける、その日まで」を解説します。



仮タイトルは"シュタゲ"


アルバムのクライマックスにふさわしい楽曲を作ろう、と考えていた時期と、新橋朱里さんと何か曲作りをしよう、という話が進んだタイミングがちょうど重なって、オリジナル曲を作ることになりました。
そのときに共有した新曲のイメージが「STEINS;GATE」。
シュタゲに限らず、科学ADVシリーズのテーマソングって概ね好きなのですよ。

あくまで音楽性として、ではあったのですが、お互いアニメを見直したりして、どっぷり浸りながら作っていきました。
同じ時期に歌詞を書いた「シュウマツドケイ」などは、咲花-サカナ。-なりのタイムリープものですし、結果として、世界観についても影響は受けていると思います。
本作については、科学どころか、オカルトとも言えそうなファンタジーなのですけれど。

キーがちょうど良かったので、歌入れは順調に。
こだわりとして、ハモリを入れず、サビはダブリングにしています。
これは、作曲段階から新橋さんが持っていた構想で、自分の中にはないアイディアだったので採用しました。
他の楽曲と違って、"君"と"僕"、視点が切り替わる歌詞になったのは、ふたりの声が重なるイメージが想像できたからだったりして。
もし予算度外視で完全版が作れるのならば、"君"視点の部分を女声ヴォーカルで歌ってもらって、ユニゾンにしてみたいですね。


情報の整理は歌詞カードで


事実上、「さよならまでのあまやどり」における種明かしです。
アルバム曲について、基本的には楽曲単体で成立するように歌詞を書くようにしていますが、この楽曲だけは、これまでのストーリーを踏まえないと背景が掴みにくくなっているかもしれません。
ただし、逆に言えば、この曲さえ押さえておけば、アルバムのあらすじが理解しやすくなるということ。
歌詞カードを取り出さずにぼんやり聴いていても、これってストーリーものだったんだ、と気付けるような楽曲はあるべきだろう、と。

アルバムの前半で死別してしまったふたり。
それをオチにするならもっと溜めるよね、ということで、何らかの形で再会シーンが描かれるはず。
考察しながら聴くタイプのリスナーには予想できた展開でしょう。
なので、もうひとつ仕掛けを作っておいた。
それが、この楽曲を種明かしと表現している理由です。

譜割りにも恵まれて、歌詞だけをとっても情報量が多いのだけれど、歌詞カードには更に細かい設定を記載。
物語における黒猫の役割や、「カゼハレ」の本当の意味。
そして、なぜふたりは再会できたのか。
色々と書いていますので、明らかになった情報をもとに、もう一度聴き直すと新たな発見があるはずですよ。



(ネタバレ注意)伏線を回収するクライマックス


そんなわけでクライマックスなのです。
この楽曲じたいがアルバムのストーリーの解説のようなものなので、残り2曲は解説が要らないのでは、と思ってしまいます。

自分もそのひとりなのですが、曲を聴きながら、それが過去に発表された曲とリンクしているのがわかると、なんだかワクワクしませんか?
それを徹底的にやっている楽曲なので、どうぞ探してみてください。
伝わりにくそうなところだけ触れておくと、「幽霊」と書いて"えいえん"と読ませるところが気に入っています。
「カゼハレ」における、鼓動が速くなると時間も速くすぎてしまう、それならば、幽霊になって心拍数をゼロにすれば永遠を手に入れられるのでは、という旨の歌詞に起因していて、「ゆめわずらい。」の状況を経験した"君"に、自分だけが永遠を手に入れても意味がない、という教訓を歌ってもらいました。

さて、鍵となっていた「カゼハレ」の魔法。
これは都合よく風を吹かせる魔法ではなく、一緒にいる人に共鳴するための魔法だったのです。
共鳴をすると、実体がそこになくても、魂レベルでお互いを認識できるようになる。
そして、第三者に認識されることで存在が確定した"君"は、黒猫の持つ魔女の力によって、実体に戻ることが可能になります。
ただし、さくらが咲くと、ふたりは話すことができなくなり、さくらが散ると、"君"は空に還ってしまうという制約が。
「さくらの花、咲くころ」において、"僕"が消えていく"君"に何も言えなかったのは、そういう背景があったのでした。


次は、最後のインタールードとなる「うさぎ のち あめ」を解説します。


さよならまでのあまやどり / 咲花-サカナ。-


【発売日】2024/4/1(mon)

【価格】2,200円(税込)

【収録曲】

4月 さくらの花、咲くころ
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 可憐

5月 カゼハレ(風が強く、良く晴れた日)
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 新橋朱里

6月 忘れ物
  作詞 遠藤サカナ 作曲・編曲 新橋朱里

7月 黒猫と花火
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 新橋朱里

8月 夏草の丘
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 可憐

9月 枯花-カレバナ。-
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 可憐

10月 野良犬に鎖
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 Yuki

11月 ゆめわずらい。
  作詞 遠藤サカナ 作曲 Yuki & 遠藤サカナ 編曲 Yuki

12月 オナジソラノシタ
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 可憐

1月 魔法が解ける、その日まで
  作詞 遠藤サカナ 作曲・編曲 新橋朱里

2月 うさぎ のち あめ
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 Yuki

3月 あめあがり
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 可憐

ジャケットイラスト 酢平☆

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