見出し画像

【ライブレポ】慎一郎&杏太「世迷歌~慎一郎&杏太7周年記念公演~(第一部)」2022.8.7

2022年になってライブレポを書いていなかったようで、なんだか書き方を忘れてしまった。
というのは大袈裟にしても、withコロナの世の中において、ライブレポの位置づけがよくわからなくなったのは事実で、いくつかライブに足を運んだり、配信チケットを買ってみたりはしていたのだけれど、ひとつも書かないままで早8月。
配信で誰でも見れたライブのレポを残す意味はあるのか?
アーカイブ期間が終わる前にブログに書いてしまったらネタバレになるのか?
そもそも、配信のあるライブについてレポを書くのって、あり?なし?
有料ならOK? 現地で見てたらOK?
このご時世にライブに行くなんて、とんでもない!って考え方もまだ根強い?
等々、考えているうちにドツボにはまり、時期を逸してしまったのである。

そんなわけで、リハビリも兼ねてnoteのほうにライブレポを書いてみることにしようかと。
8月7日に開催された慎一郎&杏太の周年ライブは、配信での公開はされないとのことで、配信ライブの位置づけ云々について考えを整理する必要もなさそうだ。

2015年に慎一郎さんがシーンに正式復帰。
その頃は、まだホタルとしての再開が決定していなかったため、アコースティックイベントに参加するときのユニット、慎一郎&杏太名義での復活だった。
後にホタルが再始動となってからも、アコースティック中心の慎一郎&杏太、過去の楽曲をバンドで演奏するホタルと活動を並行。
定期的な活動を続けて、ジュリィーの活動期間を上回って8年目を迎えるというのは感慨深いものである。
もしかすると、社会人バンドとなったホタルだけでは定期的な活動が難しかったので、多少は身軽な慎一郎&杏太を残したという消極的な理由だったのかもしれないが、今となっては、慎一郎&杏太にもバンドサウンドの楽曲が生まれ、ホタルでも新曲をバンバン作っているにも関わらず、それぞれの活動基盤が揺らがないほど、音楽的な住み分けが出来てきたと言えよう。

慎一郎&杏太としてのホームグラウンドとなるのが、今回も会場となったアプロ赤坂。
シッティングライブの前提で、40人~50人ぐらい入ればいっぱいになる距離感の近いライブハウスだ。
入口でくじを引いて、どの椅子に座るか決まるのだが、後ろの席でも前から3,4列目といったぐらいなので、席順で一喜一憂することはなく、ドリンクを置けるテーブルの近くが当たり、という感覚である。

前置きが長くなったけれど、いつも通りの会場で演奏されるからこそ、7年間での成長が見て取れるもので。
SEがはじまってから、気持ちゆっくりめで入ってきた2人は、空気づくりのMCからスタートさせた。
Vo.慎一郎による"良いことを言う"感じの長めのMCが"説法"と呼ばれている、といういじりで場を温めつつ、気が付くと楽曲の世界観の入り口に。
ゆるく喋っているように見せて、実はスイッチの切り替えが上手くなっていることを忍ばせながら、コロナ禍において活動のリスタートのきっかけとなった楽曲、「今、光を」を熱唱。
7月のイベント以降、体調を崩してぶっつけ本番だったという慎一郎だが、病み上がりとは思えない熱量で放たれる歌声は、大きな説得力を持っていた。
彼の"説法"は、MCで良いことを言うことだけでなく、それを共感に引き上げる歌と表現があるからこそ、成り立つのだと思う。

そこから、「ハーメルン」、「積み木」、「残想」、「メメントモリ」と、ディープな楽曲を立て続けに。
4曲をMC挟まずに畳み掛けたことなど、これまでの慎一郎&杏太で、あるいはアプロ赤坂でのライブにおいてあっただろうか、というメリハリのつけ方も、楽曲に向き合ったコロナ禍のライブを経験したからこそなのかもしれない。
オーディエンスとの距離が近い分、感情の込め方がダイレクトになり、「ハーメルン」の時点で既にヒリヒリと焼き付くような迫力を纏っていたのだが、「積み木」ではそれが切ない哀愁へと変わり、「残想」では叙情的な叫びとなり、「メメントモリ」に至っては、聴いている側にも身を焦がすような深い感情が乗り移ってくるかのようだった。
この日は、ホタルやジュリィーの楽曲は演奏せず、慎一郎&杏太としての楽曲のみで構成するセットリスト。
ストーリーテリング調のホタルの楽曲に対し、感情の部分にフォーカスを当てて吐き出すのが、慎一郎&杏太の楽曲の魅力なのだろうな、と再認識させられる。
なお、このパートでは、Gt.杏太とのコーラスワークも大きな武器になっていたことを改めて書き添えておきたい。
音源であれば慎一郎の歌声を重ねればよいのかもしれないが、生音にこだわり、ふたりの声で歌メロを構築。
7年の間にソロ活動も開始し、歌への意識を高めた杏太のセカンドヴォーカルが板についてきたことは、ミニマムなユニットにおいて非常に心強いのである。

この日、会場限定CDとしてリリースされたシングル「アンサー/軌跡」も披露。
レコ発の日は、オケも流すというマイルールがあるようで、アコースティック編成ではあるけれど、同期によるバンドサウンドを従えての激しさを見せつけていた。
慎一郎がコンポーズした「アンサー」は、多様性という言葉に潜む矛盾や葛藤をテーマにしたメッセージ性の強いナンバー。
ハードな演奏に映えるスリリングなAメロと、ギミック強めのBメロが効いていて、怒涛のサビにも圧倒された。
ラストのサビは初披露時から歌詞が書き換えられたようだが、杏太が"それで好きになった"と語ったのがすべてだろう。
初披露には立ち会えなかったものの、何がどう変わったか、最後に綴られたメッセージを聴けば理解できる。
確かに、このフレーズによって、慎一郎&杏太の楽曲として"完成"したのだ。

もう1曲の「軌跡」は、杏太による作詞・作曲。
シンセを駆使してポップス感を強めた一方で、どこか翳りのある杏太節が主張しており、彼の中で慎一郎&杏太の音楽性がはっきり定義付けできたことで、チャレンジ的なアプローチができるようにもなったのだな、と思う。
こういう曲が出てくるのも、成長という言葉に置き換えられるはずだ。
ちなみに、実はアルバムを作るために、もう1曲レコーディングをしてストックしているという「面影」も、この2曲への繋ぎとして演奏された。
こちらは、まだ音源が解禁されていないことから、通常のアコースティック編成で。
どういう仕上がりになっているか、はやくパッケージされた音源も聴いてみたいものである。

クロージングは、7年前、はじまりの日に演奏された3曲のうちの2曲、「3月の雪」と「同じ空」。
世界観にどっぷり浸る「3月の雪」と、アットホームな雰囲気で伸び伸びと歌われる「同じ空」。
タイプは異なるが、どちらも彼らの原点と言え、繋ぎ方も含めてさすがに馴染んでいるな、と。
「たからもの。」で終わらないライブに、もっと違和感があるかと思ったけれど、案外、そんなことはなく、これがベストだと素直に納得できる。
もともとはホタルやジュリィーの面影を求めて聴いていたのは否めない。
しかし、今では、その考えは正しくなかったなと断言できる。
本当に求めていたのは、彼らの音楽が進化し続けていく未来を見ること。
ひとつの結果が、この周年ライブであり、7年間で生まれた楽曲が既に大きな存在になっていたことを実感している。
彼らの音楽に余計にのめり込むきっかけになりそうだ。

1. 今、光を
2. ハーメルン
3. 積み木
4. 残想
5. メメントモリ
6. 面影
7. アンサー
8. 軌跡
9. 3月の雪
10. 同じ空

#イベントレポ

この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?