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ヴィジュアル系は風呂場にいる

ヴィジュアル系の歌詞に出てくる人たちって、休みの日は何をしているのだろう。
オンでは漆黒に塗れて孤独を抱きしめていても、オフの日はきっとあるはずだ。
しかし、普段、薔薇に包まれて十字架と戯れている彼が、リビングでソファに座りながらテレビを見ている姿は想像しにくい。
寝室で寝倒しているのも、書斎でネットサーフィンしているのも、なんか違う。

では、どこにいるのかと言えば、風呂場ではなかろうか。
風呂場というとイメージがわかないかもしれないが、「浴槽」とか「浴室」とかに置き換えてみると、いるいる入ってる。
「冷静と情熱のあいだ」の江國香織版ぐらい風呂場にいる。
そんなわけで、ヴィジュアル系が風呂場で何をしているかをいくつかピックアップしてみた。



浴室の人魚 / amber gris

入浴中、どうでもいいことを考えながらイマジネーションが広がっていく。
そんな感覚を、彼らの世界観で上手に切り取っているのが「浴室の人魚」。
お風呂に入りながら思索に耽る、今回のテーマにおいてはもっとも正統派と言える行動様式だ。
amber grisらしく、詩的で感性を刺激。
ほんのりアンニュイなサウンドが、どこかメランコリックな表情を映し出していた。


懺悔は浴室で / Plastic Tree

懺悔と言わずとも、ひとり反省会をするのは入浴中のリラックスタイムで、という人は多いだろう。
負の感情を吐き出す場所としても、お風呂場は確かにしっくりくる。
ノイジーなサウンドと、浮遊感のあるメロディ。
この噛み合わせが絶妙。
雑念はたくさんあるけれど、少しのぼせてぼんやりしている、あの感覚とシンクロしていて気持ち良い。


赤いバスルーム / SCAPEGOAT

とりあえず、入浴はしていなさそう。
その代わり、別のことを浴室でしているから真っ赤に染まるバスルーム。
いやいや、ヴィジュアル系たるもの、浴室で鮮血に塗れていれば、それは既に入浴なのだ。
そういうことにしてしまおう。
細かく探していけば、このパターンはいくつかありそう。
ハードで猟奇的、楽曲としても押さえるべきところを押さえたV系チューン。


Bath Room / the GazettE

他殺もあれば、自殺もあり。
解釈はいくつかあると思うが、トラウマレベルの死体発見である。
ヴィジュアル系は、風呂場を"血を流しても良い場所"として認識しているのかもしれない。
グロテスクな内容を、詩的に美しく婉曲的に伝えるのも、これまたV系の美学である。
重苦しさが纏うロックバラード。


浴槽 / 黒百合と影

当然、このパターンもあるよね。
いよいよ、主人公自らが自殺を図る狂気的な楽曲。
オフの日の入浴ソングを探していたはずが、人生のスイッチオフを見つけてしまった。
ドロドロと不気味に展開するダークさが肝。
不気味な考えオチ的な歌詞もあり、和風ホラーの風合いが中毒性を高めていたナンバーだ。


シャワールームシネマ / ベリィ

浴室の出逢いってなんだろう。
当時はよくわからなかった歌詞だけれど、大人になった今ならわかる……ようで、やっぱりよくわからない。
とりあえず、オフの入浴ではなく、オンの入浴である気はする。
lynch.のVo.葉月が在籍していたベリィ。
ハードな名古屋系サウンドに、キャッチーなメロディが妙に印象に残る1曲である。


DEZERTの「浴室と矛盾とハンマー」、Z CLEARの「浴槽」、あとはGLAYの覆面バンドにあたるNEVER MINDにも「愛LOVE入浴」があって、探せばもっと出てきそう。
コミックバンドは、そろそろサウナの曲も作ってきそうだ。
とりあえず、ヴィジュアル系が風呂場に行くと事故物件が増えがちということが検証できたので、そのうち、キッチンにいるヴィジュアル系も探してみたい。

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