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【ADVゲームレビュー】J.B.ハロルドの事件簿 マーダー・クラブ / Nintendo Switch(2017)

J.B.ハロルドの事件簿 マーダー・クラブ / Nintendo Switch

1986年にパソコン用ソフトとして発売された「殺人倶楽部」の復刻版となる、J.B.ハロルドシリーズの第一弾。



あらすじ


リバティタウン郊外にあるハウリントンカレッジ通用門近くの駐車場から、ロビンズ商会社長、ビル・ロビンズの死体が発見された。
死因は、鋭利な刃物にて背後から受けた刺し傷による出血多量。
痴情のもつれや金銭トラブル、様々な動機を持つ容疑者たちが捜査線上に現れては絞り込めない中、とある20年前の迷宮入り事件が浮かび上がってきた。
病に倒れた前任の先輩刑事から事件を託されたJ.B.ハロルドは、複雑に絡まる事件の背景に独自の捜査で迫っていく。



概要/感想(ネタバレなし)


1986年にPCゲームとしてリリースされて以降、1989年にファミリーコンピュータ、1990年にPCエンジンに移植され、2008年にはニンテンドーDS、2010年にiOS、2017年にAndroid、Nintendo Switchと、30年以上に渡って復刻され続けている推理アドベンチャーの不朽の名作。
昭和の時代において、PCゲームは完全に大人だけのもの。
シンプルなゲームシステムと、決して新設設計とは言えないハードボイルドな作風が、いかにもPCゲーム黎明期といった感覚を受けるのだが、移植されていく中で洗練された部分も当然にあって、頭を使って楽しむというPCゲームの醍醐味だけが抽出された、現代でも十分に通用するゲームであると言えよう。
PCゲーム時代の定価は8,000円前後だったようだが、セール期間であれば100円でダウンロードできるというのも、お得感しかない。

基本的には、ひたすら関係者から証言を集めて、新たな関係者の存在や重要な情報を引き出していく泥臭いゲーム。
情報が集まってくると、家宅捜索や、逮捕が出来るようになり、その容疑者に対する捜査フェーズが変わるのが面白い。
一応、フラグを立てて担当検事に承認をもらわないと逮捕はできないものの、最終的には関係者を10人近くしょっ引くことになり、関係ないことが判明した後も事件が解決するまで全員塀の向こう。
妙にリアリティがある中で、ここだけがデフォルメされている感は強いのだが、ゲーム性を高めていたのはまさにこの部分で、ここからが本番、と気を引き締め直す効果を生んでいた。

オリジナルを踏襲して、アニメーションやマルチシナリオといった要素はなし。
一本道のシナリオなのだが、ヒントやTipsなどもないので、捜査情報はすべて頭の中にインプットしなければならず、捜査に行き詰まることはあるかもしれない。
特に、前回プレイしたときの記憶が残っていないと、今がどういう状況なのかを確認するのは困難。
集中して短期間でプレイすることが必須であるあたりも、ハードボイルド感を増している。
これをプレイしてみると、いかに、現代のゲームが新設設計になっているかが理解できるのでは。



総評(ネタバレ注意)



徐々に情報を集めていって、最終的に結末に達する。
その意味では、最後の最後にドカンと盛り上がるという性質ではなく、プレーヤーが真相に気付く、そのタイミングがピークとなるのだろう。
序盤は、聞き込みをするごとに関係者が増え、関係性を覚えるのが大変。
まして、登場人物が外国人なだけに、馴染みのなさに余計にこんがらがってしまい、途方に暮れるのだが、だからこそ、地道な捜査を続けた結果、真相が見えてくると余計に感慨深い。

とにかく聞き込みを続けていけば、いつかはクリアできるゲーム。
しかし、感覚的にプレイしていると、おおよそいつかは行き詰まるかと。
同じ質問を2度繰り返さないと引き出せない情報があったり、捜査の進行状況によって回答内容が変わったりするのが、実は厄介。
一度聞いたし、状況も変わっていないし、と深追いしないままで作業的にこなしていると、総当たりした結果、先に進めないとなってしまう。
ほとんどが、新しい情報が出たら、それについて聞いてまわるというルーティンで攻略可能なだけに、大量の既存情報をもう一度聞いてまわろうなんて、普通は考えないもの。
1晩寝かせて、もう1度。
どこまで聞き込んだかわからない状態で再度やってみると、案外するっと次に進めたりするので、行き詰まったら休むのが吉、を後続プレーヤーへのアドバイスとしたい。
刑事ドラマを見る限り、後日、"何か思い出したことはありませんか?"の質問をするイメージがあるし、実はこれ、リアリティを高める演出になっていたりして。

ひとつ、資料室に残っていた事件が、序盤から出てきていたわりには、うまく回収されていないなと思っているのだが、その被害者とされる女性が、次回作のキーマンらしい。
これが次作へのロングパスだったら、熱いことこの上なし。
古典ミステリーも名作は名作であるのと同様、古典ADVゲームも名作は名作であった。

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