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ワインペアリング論①

日々体を動かしながら働いていると色々な思考が浮かんでは消えていくのですが、そんな中で書き残したり人に伝えたいなと思うことも多々あるので今回初めて書いてみます。

私は所謂「街場のレストラン(ホテルの対義語と思ってください)」というカテゴリーの中でも

「イタリアン」という大枠の中の

「トラットリア大衆食堂」
「オステリア(居酒屋)」
「リストランテ(高級レストラン)」

と大きくざっくり分けられる中のリストランテにてマネージャー兼ソムリエとして勤務しております。

ソムリエ資格は持っていませんがこなしている事はソムリエでありイタリアワインにおいてはプロフェッショナルと自負しています。

※日本においてはソムリエ資格はあくまでも民間資格で私がこの世界に入門した頃には既に時代的にソムリエ資格があまり重視されなくなっていましたし今現在も自分が必要としていないんですよと言い訳しておきます※

逸れ出すと止まらないのでタイトルに戻しますが、今では当たり前となった

「レストランでのワインペアリング」

について現場で一体どのように考えられ提案されているのかについて書いてみようと思います。

じっくり色んなパターンを書き連ねたいのですがあまりにも冗長になりそうなので、本当は「コースの流れの中でのセレクト」というのは大事な部分なのですが泣く泣く一つに絞って…


意外性があった方が面白いと思いますので今回は
「ジェノベーゼのパスタ」
にワインを合わせたいと思います。

「ジェノベーゼ」とは

バジリコ(バジル)の葉をペースト状にしてパスタソースに仕上げるみんな大好きなアレです。

ジェノベーゼを名乗るにはこれとこれをこう加えて~とか
ジェノベーゼというとナポリの肉のソースであって正しくはペスト(ry

とか細かいことはきっとほとんどの人が興味がない部分かと思うので気になる方だけご自分でお調べください。


ジェノベーゼのパスタに合わせるワインを考えるとき、きっと99%の人が

「辛口の白ワイン」

を思い浮かべるのではないでしょうか?

実は私は自分の中の必殺のペアリングに

「ジェノベーゼ×ジューシーな赤ワイン」というのを持ってまして
これをお客様にご提案すると100%驚かれます。

これは純粋なお客様もそうですし、同業の詳しい方でもそうです。


さてではペアリングにおいて最も重要なのは

「同調させること」です。

餃子にビールは最高のマッチングですが、あれをワインに置き換えると後味を流すことになります。

ビールとワインではまた別次元の話なので必ずしも重ねない方が良いのですが、「ワインで流す」ことは「マッチング」「ペアリング」とは似て異なるものです。

※↑あくまでも私の経験に基づく個人的見解ですが※

甘味には甘味
酸味には酸味

というように同じ要素で近づけていけば答えに近づけるというのがワインペアリングにおいてのシンプルな考え方です。

ただ実際はそれほどシンプルではなく、合わせる対象が持つ味わいの要素をまず細かく分析し正しく理解しそれと同じ要素を持つワインを探し出し、かつ前後の流れの中で埋もれずに楽しめてワイン単体でも楽しめて季節的に違和感が無く限られた予算内で成立するか

と今一瞬で思い浮かべただけでも気を付けなければならない事が沢山あります。

そして世間ではざっくりと

「魚介には白」
「肉には赤」

と言われますが白は白でも今まで出会ってインプットした何千種類に及ぶワンの中の一体どの白?どの赤?

と考えだしたらキリがないですね。

一つ言いたいのは世間でこれほどまでに一般化するほど流行ってどこでも提供されてしまうほど簡単なものでは無いのではないのかな、という事です。

実際私も勉強のためレストランに食事に行く際には必ずペアリングを注文するのですが、違和感のないペアリングに出会ったのは今までに二度だけです。


気付いたらジェノベーゼという本題から離れてしまいました…悪い癖です。
戻ります。

さて、ジェノベーゼって

「バジリコという割と強く主張するハーブをふんだんに使い、チーズを混ぜコクを出した、しっかりと濃度もある強いソース」なんですよね。
ここに同調させていきます。

バジリコのハーブ感には?
爽やかな白ワインが合いそう。
でもあまりにも大量に使うので「爽やかにハーブが香る」程度の白ワインでは負けてしまわないか?
★香りの強い赤ではないだろうか。

とにかく香りがまず先に立つ赤?
バジリコの香りはムンと強く香る…
明るいか?男性的?女性的?
★一見華やかだけどどこか陰性でしっとりと艶のある女性のイメージではないか?

香りはそれで良いとしてソースの濃度や質感には?
強いソースとはいえボルドーやイタリアのアリアニコのようなあまりにも凝縮したワインではワインが勝ってしまいそう。
★強さは中程度で良さそう。

質感は?
ペースト状のソースを口に含む事を想像する。
飲み込む。
後味に何が欲しい?
ざらっとした質感のソース。
ワインにざらっと感は求めないまでもある程度の密度は欲しい。
★となるとピノノワールや軽いサンジョベーゼのような少し透き通るワインでは無さそう。

そして重くないワイン。
※ここは私の閃き、単純な思い付きですが
★ジューシー且つフルーティーな赤ワインでは?

とまぁこんな感じでざっくり大きく、無さそうな可能性を切りつつ
閃いた要素を細かく調整していきます。

そして最終的に出した答えは

ピエモンテのヴァレイィというワインです。

ビオディナミと呼ばれる自然農法の作り手で(最近ではナチュールとかナチュラルワインとか呼ばれることが多いです)

ラベルの月が製法や哲学を表しています。
(自然農法においては月の満ち欠けは重要な意味を持ちます)

細かくはさておきジェノベーゼソースの持つ特性、キャラクターの全てに違和感なくギリギリまで近づけるワインとして

「バルベーラという女性的でしなやかな品種主体でそこにブラケットというデザートワイン用の品種を混ぜることでバラやドライフラワーがこれでもかというくらい強く香って主張し、ジューシーで少し甘味を感じるほどにフルーティーな赤ワイン」

ということで上記の提案となります。

ちなみについ最近「チーズってワイン合わないんですよ」とつぶやいて弱小アカウント的には割と反響が大きくてうれしかったんですが、チーズには甘口ワインは非常に相性が良いんですね。

なのでチーズをしっかり混ぜ込んだこのソースには「甘味に近いほどジューシーでフルーティ」という要素が合うんじゃないかと。

※同じくチーズをたっぷり使うボロネーゼに同じようなアプローチを仕掛けるとべったり甘ったるくなってしまうのは面白くも要注意なところですが…


さて初めてなのでまとまりなくやはり冗長になってしまいましたが、こんな感じで日ごろペアリングという物を考えております。

論というには稚拙な思考かと思いますが、興味のある人や業界の若い子には多少が楽しめる内容に今後していきたいなと考えておりますので

是非お付き合いいただければ幸いです。

ではまた!

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