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「従業員が生産性を落とさずに働く」という視点

コロナ影響後、在宅勤務率が高まったことを受けてインフラに追加で投資した費用を整理している(社内の関係各所に報告用)。報告内容は、コスト(いくら増えたか)とインフラカバー率(必要な人に行き渡ったか)がメインだ。しかし、これだけではある視点が欠けている。生産性という視点だ。そのことについてまとめた。

本記事の要点

製造業である自社は、新型コロナ以降、業績が変動している(落ちている)はずだが、その業績の変動について、経営層はデータを見たがっている。働き方の変化(働く場所の変化)とどう関係してくるか。

すぐに環境状況が元に戻らないのは見えているし、ロケーションによっては継続して在宅勤務が続く。業績の変化と、今後のコスト推移などを整理するのは当然として、そのデータに「従業員の生産性がどうなったか」の情報を合わせた報告が必要だろう。

典型的な日本型製造業の自社の場合、メンバーシップ型雇用となっており、明確なジョブディスクリプションがなく、実態としては時間で縛る契約形態となる。在宅勤務という働き方は、成果(アウトカム)に対して報酬を払うという契約形態(ジョブ型雇用)でなければ、うまく回すのは難しいのではないか、と考えている。

インフラ配備だけでいいのか?

環境変化が起きても業務を止めずにできるか、という話は、たしかにインフラ配備の要素が多分にあるのは理解できる。ただし、インフラが配備されたからといって、そこで性能がでなければ、業務自体が滞留したり止まったりする。結果的に会社として、組織として業績が落ちる。

生産性という視点

インフラが配備されたか否かというカバー率の指標とは別に「生産性」という指標が必要であり、自社ではそれが足りない。簡単に言えば、会社の席で仕事をしていた時の性能が100%とした時に、在宅勤務で何%の成果を出せたか、という指標。

残念ながら、現時点で「生産性」を指標に語る場面を社内情シス内で見ることがない。そこで、自らこの言葉(生産性)を口に出して周りの関係者に言い始めている。

組織ではなく、個人に裁量をもたせて個人ひとりひとりのアウトプットを観測し評価できる作りに、規則上もシステム上もなっておらず「やりたいができない」というのが本音だろう。だったら、今からそういう評価ができるように変えるしかない。(もし、”どこでも働ける”という働き方の自由度が高い会社に変えることが目標なら)

生産性という視点が語らないのは雇用形態のせいか?

会社側(経営層側)は、組織としての生産性(業績に直結)は日常的にウオッチしていたとしても、個人ひとりひとりの生産性を観測するという概念が、日本型の古い体質、古い文化の会社には無いからなのでは?

工場で働く労働者が大半だった頃の時代からの仕組みや制度や概念から抜け出せていないのかもしれない。

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用

その抜け出せない理由は、雇用形態の種類にあると考えている。メンバーシップ型雇用と、ジョブ型雇用がある。自社はメンバーシップ型雇用の人で多くを構成されていて、組織としての生産性(業績)は観測されているであろうが、一人ひとりはその構成要素の1つとみなされ、おそらく、実態としては(契約上は)時間でしか管理できていない。ジョブディスクリプションで明確に定義された業務に対して対価が払われる契約ではなく、会社に貢献したかという、ある意味曖昧な定義での契約である。

あれもこれもちゃんとやりなさい、と管理職は言うが、できなかったからといって、クビにもならないし、生産性が半分に落ちたとしても、報酬が半分になるわけではない。(会社の規模によりさまざまなケースがあるでしょうが)これがメリットとして働くこともあるが、成果を出せる人にとっては相対的にデメリットを感じる場面も多いはずだ。

メンバーシップ型雇用下の場合、在宅勤務が半強制的になった時に生産性が落ちた場合でも、それは「会社のせい」とすればいいし、実際に、そういう人は大勢いると思われる。

成果主義、成果主義と、何十年も前から会社は言ってきたが、おそらく、実態としては圧倒的に「時間」での管理がベースになっている。根本的に、この「時間」で管理するベースを変えることなく、働く場所を選べるようにすることは難しいのではないか。

雇用される側には、メンバーシップ型雇用のメリットもあるわけだが、この在宅勤務という働き方との相性は非常に悪いと言わざるを得ないのが結論である。

まとめ(情シスとしてどう進めていくか)

(1)在宅勤務を希望する人が選択し実行できるためのインフラ配備を継続する。
(2)従業員ひとりひとりの生産性を観測し、100%を基準としてマイナス要因の原因と解決方法について議論し対策する。会社として、情シスとして、事業部門として行う。当然ながら、事業部門の声(現場の声)に耳を傾ける必要がある。
(3)生産性を指標に手を打つとしても、現時点で、従業員ひとりひとりが本来成果として出すべき100%が、人事制度として明確に定義できていない可能性がある(メンバーシップ型雇用のため)。成果を評価にロスなく伝える仕組みづくりも同時に進めていく必要がある。よって、情シスだけでは解決できず、人事・総務部門などとも連携が必須であろう。

以上。

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