#回転寿司を救い隊(ツイッター買収ミステリー)


 プロローグ


『——の品がまもなく到着いたします。ご注文の品がまもなく到着いたします。ご注文の品がまもなく到着いたします。ご注文の品がまもなく到着いた』

 レーンが止まった。

 レーンの上で黄金色を輝きを放って、食べられるのを今か今かと待ち侘びているのは、たまごだ。

 たまごを取る。

 五、四、三、二、一、ゼロ、一、二

 レーンが再び動き出した。それと同時にアナウンス——ご注文の品が——が鳴り出す。すぐさま、右手で醤油さしを掴んで、醤油をたまご両方に垂らす。左手で確定ボタンを押した。

 割り箸でシャリが四分の一ぐらいになるようにたまごを切る。たまごがシャリに比べて大きいので、必然的にシャリからこぼれ落ちるが気にしない。俺はそれを急いで口に運んだ。

 感想を述べている場合ではない。

 切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。水を飲——みながらスマホをスワイプさせ、たまごをタップ。

 アナウンスは依然としてなり続けている。回数的に、今は三番テーブルあたりか。

 切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。水を飲——みながら個数が一、シャリが通常であるかを確認する。まあ、初期設定でそうなっているから大丈夫だとは思うが、一応念のため。

 アナウンスが止み、レーンが止まった。

 たまごを取る。

 五、四、三、二、一

 レーンが再び動き出した。惜しい。すぐさま、右手で醤油さしを掴んで、醤油をたまご両方に垂らす。左手で確定ボタンを押した。

 切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。水を飲——みながらスマホをスワイプさせ、たまごをタップ。

 切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。水を飲——みながら個数が一、シャリが通常であるか確認する。

 レーンが止まる。

 たまごを取る。

 五、四、三、二、一、ゼロ、一

 アナウンスが鳴り出す。またニアミス。すぐさま、右手で醤油さしを掴んで、醤油をたまご両方に垂らす。左手で確定ボタンを押した。

 切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。水を飲——みながらスマホをスワイプさせ、たまごをタップ。

 切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。水を飲——みながら個数が一、シャリが通常であるか確認する。

 レーンが止まる。

 たまごを取る。

 今度こそ。

 五、四、三、二、一、一、二、三、四、

 レーンが再び動き出した。マジかよ。四秒オーバー。珍しい。このままでは終われない。腹の調子的に、あと、一皿かふた皿か。次、ジャストを出せたら、終わろう。右手で醤油さしを掴んで、醤油をたまご両方に垂らす。左手で確定ボタンを押した。

 切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。水を飲——みながらスマホをスワイプさせ、たまごをタップ。

 切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。水を飲——みながら個数が一、シャリが通常であるか確認する。

 レーンが止まる。

 たまごを取る。

 五、四、三、二、一、ゼロ、一

 アナウンスが鳴り出す。また一秒かよ。ラスト一回、成功しようが失敗しようが、これで終わりだ。右手で醤油さしを掴んで、醤油をたまご両方に垂らす。左手で確定ボタンを押した。

 切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。水を飲む。一呼吸おく。

 切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。切る、食べる。水を飲む。一呼吸おく。

 レーンが止まる。

 たまごを取る。

 さあ、ラスト一回。

 五

 四

 三

 二

 一

 ゼロ

『ご注文の品がまもなく到着いたします。ご注文の——』

 キタキタキタキタ。ジャスト。ラストでジャスト。ついてる。終わりよければ全てよし。

 今日はいいことありそうだ。


 残った二つの皿も平らげ。皿を投入口にぶち込む。タッチパネルの「会計」を押す。七皿だから七百七十円か。

 レジの付近に若い男の店員が立っていた。テーブルの方に目を向けていて、俺のことに気づいていない様子だ。店員呼び出し用のベルはあることはあるが、押すべきだろうか。

 と、考えていたら、その店員は、俺のことに気づいたようで、慌ててレジの方へかけてきた。

「すいません……、七百七十円です」

 会計を終えて、風でなかなか開きづらい扉を勢いよく開けると、冷たい風が顔を叩いた。まだ、図書館に行く必要があるのに、もう、帰りたい気分だ。

 角を曲がると、フードを被った人物とすれ違った。寒いからフードを被りたくなる気持ちもわかる。俺もフード付きのトレーナーを着てくればよかった。

 自転車置き場までの直線を進み出すと、正面から、人が迫ってきていた。こういう場面はすごく気まずい。急に挨拶でもされたらどうしようとか。暴言を吐いてきたら……とか、いきなり殴りかかったりしてくるかもしれない。

 いつでも、逃げ出せるように、大きく膨らみながら歩く。

 五メートル、四メートル、

 さっきまでやってきたことが頭をよぎる。せっかくジャストで終われたのに。今度は、ジャストで何も起きない方がいい。

三メートル、二メートル、一メートル、ゼロ

 腕を握りしめる。一瞬だが、相手の方をチラ見してしまった。

 円だ。

 側頭部に円形のタトゥーが彫られていた。

 いや、あれはタトゥーではない。丸く型取られた、頭皮だ。

 自転車置き場に着き、ポケットから鍵を取り出そうとすると、手が、紙らしきものに触れた。レシートは、財布に入れたはずだが……。

 取り出すと、それはさっき、タッチパネルで受付した時に出てきた紙だった。

 一番テーブル。

 さっきすれ違った二人は、何番の紙を引き当てるのか。

 そもそも知っているのだろうか。







 何番テーブルに座るか。それが、ご当地寿司伊勢店では重要になってくるということを。
 

俺は、紙をぐちゃぐちゃにして、ポケットに突っ込んだ。

続きは、Kindle Unlimited で読めますので下のリンクから……

と、言いたいところなんですが

この作品は、ツイッター買収ミステリー、
#猫をさらった犯人を探しています
#大企業落ちた日本死ね
の続編となっておりますので、
先にそちらからお楽しみください。

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