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機械ではなく人を診る

「勉強が苦手で・・」
「何回も同じ失敗を繰り返して・・」
「運動が苦手で・・」
「じっと座る事ができなくて・・」
「ゲームばかりしていて・・」

治療室の中での会話中に、子供を持つ母親に「お子さんはどんな子ですか?」と聞くと、こんな答えが返ってくる事がよくある。
別にお子さんの「ダメな所を教えて」とは聞いていないのだけど、このように答える親は多いね。笑
逆に「お子さんの良い所を教えて」と聞くと、欠点ほどはすぐに言葉が出てこない事が多い。

子供の良いところをすぐに言えるような親でありたいなと思った。
そんな会話をしていて、ある患者さんとの出来事を思い出した。

数年前のある日、知り合いの整形外科のドクターから突然連絡があった。
「私の大事な人だから治療をお願いしたい。何とか治してほしい」と。
ネフローゼ症候群と診断された50代の助産師の女性を診ることになった。ネフローゼ症候群は原因不明と言われる難病指定の病で、主に腎臓機能が低下することで体全体がむくみ、体全体のだるさで起き上がることもできず、最終的には寝たきりになり、透析になる事が多いと言う。

ネフローゼ症候群に関しては治療経験はなかったけれど、そのドクターは薬物療法以外にも栄養療法なども指導したが一向に改善しない、病院ではもうやれる事がない。と言う事で、藁をもすがる思いだと言うのは伝わったので引き受けてみることにした。

高砂市から神戸まで、夫に連れられ1時間半かけて初めて来院された時は、ほとんど自力では歩けず、顔や足の皮膚はパンパンに膨れ、見るからに危ない状態だと思った。座ることはできないから、そのまま治療室まで運び、寝てもらいながら問診を始めた。

約1年前からドンドン酷くなり、足首が無くなるほどのむくみ、小便も出なくなり、体のだるさで立つ事も出来なくなってきたそう。それまでは助産院を経営しバリバリ仕事をしていたそうだが、今は全く出来ないと言う。
この状態を見て完全に腎機能が低下していることは分かったが、問題は「腎機能が低下した原因は何か?」だ。
それを探るため、さらに質問を続けた。

発症する前に、どんな日常生活を行なっていたか。どんな食生活だったか。
夫婦関係や親子関係、仕事のことなどを聞いたあと、いくつか引っかかる事が見つかった。


・夫は警察官で管理職のため仕事が忙しく、妻には仕事をせずに「家の事をもっとして欲しい。」と言われる事に腹が立っている事。
・夫にお酒を毎日飲むのは体に悪いと伝えても辞めないくせに、自分に対しては仕事を辞めろと言うのに腹が立っている事。
・子供は3人いるが一番下の娘とかなり相性が悪く、いつもケンカになり、母親がこんな状態でも何も手伝ってくれない事に腹が立っている事。
本人はもっと仕事をバリバリやりたいのに、夫や娘が邪魔をする。と言う不満の感情を持っていた。

東洋医学的な見方では、体に現れる症状は、心の状態を表すと言われる。腎臓は尿を排出する臓器で、感情を排出できずに溜めている場合に腎臓が悪くなると言われる。特に悲しみの感情の場合が多い。
肝臓は怒りの臓器と言われ、怒りを溜め込むと肝機能が低下し、体の毒素を解毒できなくなる。

夫や娘が理解してくれないと言う怒りの感情が、自律神経系を介して肝臓を壊し体中に毒素が回りだす。悲しみの感情も加わり、腎臓機能の低下を招く事で糸球体に穴があき、ろ過機能が破綻する。毒素を上手く排出する事ができないため体中が浮腫み出す。タンパク尿が出だしネフローゼ症候群と言う病気になると推測した。血液データを見せてもらうと、やはり肝機能も低下している。
何が根本の問題なのかと言うと、
自己中心的な考えが家族の調和を乱し、病気を作った」と言う事。

しかし今は話を聞ける状態ではないから、最初の数回はまずは全体のバランスの調整を行って神経・血液・リンパをスムーズに流れやすくし、肝臓と腎臓のろ過装置が破綻しているから、回復させるためにその周辺の血液循環を活性化させ、血液をキレイにするための水の飲み方、食べ物などのアドバイスを行ない、ドンドン小便をして排出するようにしてもらった。


3〜4回目の時には、足のむくみと顔のむくみが半分くらいに減り、少し歩けるようになったため、本人も驚き少し希望が見えたのか、明るくなった。最初は半信半疑だった所もあったが、こちらの話にも素直に耳を傾けてくれるようになった所で、いよいよ本丸に足を踏み込む準備ができた。


「遠慮はいらない。」と言う事だったので、遠慮なく僕が感じたネフローゼになった根本の原因の話をした。
・パートナーである夫の意見を聞こうともせず、自分本位の行動をしている事が家族全体の不調和を生み出している事。
・娘が言う事を聞かないと言うが、「娘の良いところはどこ?」と聞いても何も答えられないのは母親失格である事。
・あなたにとって一番大切なはずの家族をないがしろにし、仕事をする事は本末転倒である事。
・病気が治ったらまた仕事をしたいと言うが、家族がこんなバラバラの状態のままで仕事をしたら、また必ず再発する事。
・病気は自分が作り出したものだから、治せるのは自分のみである事。
医師ではなく、薬でもなく、僕でもない。
本当に治したいなら、まずは家族とちゃんと向き合い、耳を傾け、時に意見をぶつけ合いながら家族の絆を作っていく事。そうしなければ完治はない。
と伝えた。


最初は受け入れ難かったようで抵抗していたが、いろんな角度から話をしているうちに、「家族とちゃんと向き合ってみる。」と言われた。
もちろん簡単な事ではない。今までないがしろにしてきた関係性が、簡単に修復することはなく、信頼関係を築くことは相当な覚悟も必要。
① 夫と毎日話をし、夫の立場や意見を理解しようとする事。
② 娘の良いところを毎日見つけ、褒める事。

それを宿題として取り組んでもらった。


少しずつ時間をかけてコミュニケーションを取ってもらう事で、
夫とは最初は意見がぶつかる事も多かったが、夫の意見を受け入れてみる努力をする事で、夫が自分の体を心配してるからこそ仕事を休むように考えていた事。仕事のストレスと家族関係のストレスでお酒を辞められなかった事に気付けた。
娘の良いところを言えなかった事を親として反省し、ズボラなところや、部屋を片付けないところなどについては何も言わず、娘の良いところを見ようとしてみると、チョコチョコ自分の方を見て自分の事を心配してくれているのが分かった。不器用で少し性格が捻くれているところがあるから、素直に「大丈夫?」と声をかけられないだけだと言うことにも気づいた。
娘に優しい言葉をかけていると、たまに食器を洗ってくれたりする事が増えてきた。

夫は、
「元気になったら毎日じゃなければ仕事してもいいよ。家事もできる範囲で手伝うし。」と言ってくれるようになった。
娘は、
「お母さん、洗濯しといたよ。しんどいやろうから寝とき。」
と言ってくれるようになった。
それから、意見がぶつかりながらもお互いが歩み寄る努力をしたことで、確実に家族の絆が深まっていった。
そして4ヶ月後、ネフローゼ症候群は完治した。


数年経った今でも、バリバリ助産院をやっているそう。
ただし、前と違うところは家族の事を思いやれるようになったところ。
後日ご本人と話をした時に、
「ネフローゼになって辛かったけど、ネフローゼになって良かった。」と言われていた。ネフローゼのおかげで家族が家族らしくなったと。


病気は悪いことばかりではなく、人生を変えるほどの何かを気付かせてくれることもある。
本当の自分と向き合い、家族とちゃんと向き合う事。
それがどんな病気をも乗り越え、より良い人生を作る秘訣かなと思う。


ちなみに息子さんは医学生らしい。
最初は、「整体なんかでネフローゼが治るわけがない!」と否定的だったが、治ってしまったものだから、「そんな事もあるのかな・・」と言っていたそう。
人は、臓器の塊でできた機械ではない。MRIや血液検査のデータだけでは分からない事が山ほどある。今回のことで、心を含めた人間全体を診る事の大切さを学んでくれたら、きっと患者に寄り添う事ができる素敵なドクターになってくれるんじゃないかなと思う。



去年から、
「将来はドクターになりたい!」と言う小学生の女の子が来てくれている。
ご飯を食べると謎の腹痛が起こる。と言う症状があったんだけど、病院へ行っても原因不明で、薬を飲んでも改善しない、ストレスが原因ではないか?と言われたそう。全く良くなる兆しもないからと紹介により来院された。

確かにストレスが原因であると思った。会話をすると、受け答えが大人並みで、頭が良いのがよくわかる。そのために、同級生とは話が合わず、不登校気味になっていた。

胃腸の支配神経は、交感神経(胸髄〜腰髄)と、副交感神経(迷走神経)だが、ストレスがかかると、背骨の横を走る交感神経が過剰緊張を起こし背骨は歪む。背骨が歪めば首と頭も崩れる。そうなると、脳から出てくる迷走神経も正常に機能しなくなる。当然胃腸は正常に機能しなくなるから、ご飯を食べると上手に消化吸収ができずに腹痛を起こす。

まずは背骨の調整と、体全体の調整をして神経系が正常に機能するように促す。そして、ストレスの原因である人付き合いのコツや、人と自分を比べないことなどをアドバイスした。
4〜5回の治療でほぼ腹痛は無くなり、食べても痛くなる事は無くなった。


治療後はいつも羽が生えたように体が軽くなるそうで、
「定期的に身体全体を調整して欲しい」と女の子自身が望むので今も診ている。
東洋医学の事や身体の仕組みなど、毎回いろんな話をしている。
この子がドクターになった時は、「機械ではなく人を診る」ドクターになってくれたら嬉しいなと思いながら。



「〇〇を自分で治す方法はありますか?」


「〇〇のような症状の場合はどんな治療法が良いですか?」


「〇〇のような病気はどのようにすれば良くなりますか?」
などを知りたい方は、コメントに書いて頂くか、プロフィールに貼ってあるホームページから、メッセージを送って頂けたら、それに関する記事を書きますので教えて下さい。

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