凡才をかっこ悪く描くアンチ少年マンガ、左ききのエレンをお勧めしたい!

それが叶おうと叶うまいと
人は夢に恋い焦がれます。
夢に支えられ
夢に苦しみ
夢に生かされ
夢に殺される
そして夢に見捨てられたあとでもそれは心のなかでくすぶり続ける…
多分死の間際まで

これは漫画「ベルセルク」の一説です。

エレンちゃうんかい!まあまあ。

皆さんは夢見てますか?夢見たことがありますか。その夢は死んでますか?生きてますか。夢で苦しんでますか?夢に支えられてますか。

一つでも「はっ」と思うなら、そんなあなたに刺さらないはずはない!

それが今回紹介したい漫画「左ききのエレン」ですー!
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普通の少年マンガは「夢」でできている

そう、誰もが人生で一度は憧れる「夢」。だからこそ昔から「夢」はありとあらゆるマンガのテーマになりがちなんだと思います。

「海賊王に、おれはなる!」

ね。

じゃあ、と思ってこの主人公に憧れて、いざ「おれもなる!」って現実世界で夢を追おうとすると、絶対に無視できないのが「才能」です。

ぶっちゃけ才能が無ければ海賊王にはなれません。それが現実です。だからこそ、マンガの主人公は「才能」がある必要があり、「才能がある」ということを示す必要があります。

「才能がないけど、努力だけで海賊王になれました!」

これはこれで、いいマンガになるのかもしれませんが、なんか足りない。倒錯的な話ですが、逆に現実感が無い。必然性がない。なので、マンガというものは、なんなら必死に、「才能」の理由付けをしているとも言える気がします。

ルフィはガープの孫でドラゴンの息子だったし、
ナルトは火影の子だったし、
黒崎一護はなんと死神とクインシーの子でしたもんね。

世代がばれますね!

それがみんなが憧れる主人公であり、楽しく読めるマンガです。

そんな都合のいい才能はねえぞ!と現実を叩きつける、アンチ少年マンガ

ところがこの左ききのエレンの主人公は、もう凡才です。最初の最初から、才能がないということが前面に押し出されてるんです。時に読んでる方が恥ずかしくなるくらい、凡才の主人公をしっかりがっつり、かっこ悪ーーく描いている。

勝たない、成功しない、そこまで努力もしない、でもカッコつける。他の少年マンガじゃ、絶対にあり得ない主人公像です。

でも、ただ一つ主人公っぽいのが、「折れない」こと。

普通の人間は10代でこう気付く
自分は神様に選ばれた人間ではない…と
そうして多くの人間は自分の想像の範囲内で道を選択する…
もしそうならない人間がいるとすれば二通りだ

一つは簡単、実際に神様に選ばれたと言わざるを得ないほどの才能
エレンやあかりのような「突き抜けた天才」だ
~中略~
朝倉光一という男は「突き抜けた天才」と真逆の「立ち上がった凡才」

このマンガの全体構造を表してるともいえるこのセリフ。「立ち上がった凡才」だそうです。別の言葉で言うと

何者でもないくせに一丁前なことを吠える駄犬

ひどい!!ひどいいわれよう!!

こんなにはっきりと凡才だと断ざれ、あまつさえ「駄犬」と罵られる主人公がいたでしょうか。あえて言いましょう、この左ききのエレンは「アンチ少年マンガ」であると!

でも、そうなんです、主人公の光一くんは才能のない負け犬、駄犬のままなんですけど、でも夢見ることをやめないんです。勝てない戦いに挑み続ける、というスタイルの主人公。

現実はもっと曖昧、才能なんてわからないし、夢も捨てきれない

だからこそたぶん、光一くんってどの漫画よりも等身大で、自分に重ねてしまいたくなるタイプの主人公だと、私は思います。

そもそも考えてみてください。

まず、自分が天才か凡才かなんてはっきりすることはないです。天才だと確固たる自信を得ることもなく、凡才だと断じて潔くあきらめることもなく、「自分はやれるんだ」と信じてやっていくしかない。

そして、最初にベルセルクから引用した通り、夢が叶おうがかなうまいが、大なり小なり夢を捨てきれないものです。目の前サラリーマンしてても、「いつか〇〇してやるぞ」なんて思いながら、年を重ねていくんです。

って考えると、誰しも、心の中に「駄犬・光一」を飼ってるんだと思うんですよね。だからこそこの光一くんのストーリーは、とにかく刺さる。

時には何を達成したわけでもないけど、うっかりかっこつけたセリフを吐いちゃいます。時には優秀な先輩に、時には超才能を持つ同級生に力の差を見せつけられてへこんだりします。時には「凡才でも役に立つ」道を示され、それに満足しかけちゃったりします。

こんなん、たぶん誰でも経験あるんです。

でも私たちと光一くんが違うのは、徹底的に折れないこと。いや、やっぱり立派な主人公だなと思うわけです。アンチでありながら、でもやっぱり少年マンガだなって。思わず自己投影しちゃいそうなリアルなシチュエーションだというだけです。

たとえるなら、自分が麦わらの一味に入ったらこんな感じだろうな、という妄想を、この左ききのエレンなら無理なく楽しめるというか…ちょっと違うかな。。

連載は今まさに最終章に突入するところ

そう、そうなんです。だから今読んでほしい!!
果たして光一くんの人生はどう進むのだろう。勝ってほしいけど勝ってほしくない。

ともかく、どのマンガより共感できる主人公と、どのマンガよりリアルな戦いを描いた、アンチ少年マンガであるところの「左ききのエレン」。

おすすめです!!!

でも実は、私が一番好きなシーンは「不夜城の残党」のくだりだったりします。シンプルに共感共感!今日も誰に頼まれたわけでもなく働きます。では!

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