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ユーザインタビューのマインドを整理する

はじめに

こんにちは、エンジニアの@i09sakaiです。
今日はユーザ調査の中のユーザインタビューについて学びと勘違いしやすいポイントなどをお伝えしていきます。

よくある勘違い(2例)

 ちょうど数日前に先輩から新製品を作りたいんだけど、、、と相談を受けました。その中でユーザ調査であるユーザインタビューは必ず行ったほうが良いと伝えました。すると、先輩は「インタビューしたユーザに偏りすぎたら嫌だな。」と言ったんです。「ん?何を聞こうと思っているんだ??」と疑問に思いました。「ターゲットユーザは全員だよ、ペルソナというたった一人に絞ることはできないよ」と言う人と同じことを言っているようで残念でした…。
 他にも、ある活動でUXデザインを活用したいと相談を受けました。先輩はユーザ調査を行うつもりだ、と話していました。話を聞いていくと、アンケートのような、「どのような技術に興味がありますか?」「どのような内容なら見ようと思いますか?」などをユーザに聞こうとしていました。解決策やあるべき論(現実と異なる)をユーザに聞こうとしていました…。
 この2例のように、ユーザインタビューって勘違いされやすいんですね。ただ、ユーザに話聞くだけでしょ?ヒアリングと同じでしょ?今までもやっていたよ、と。
 私も最初は分かっていなかったので、ユーザインタビューについての正確な認識を持ってもらえるよう書いていきます。

WHY(どうしてユーザインタビューが必要なの?)

そもそも、なぜユーザ調査という工程が必要なのか?

”自分達でユーザのこと考えて企画してシステム開発しているんだから、間違いない!ユーザのことは分かっている!改めて調査する必要はない”
と自信を持って言い切れる方はどれくらいいるでしょうか?なかなか難しいですよね。変動的で不確実で複雑で曖昧なVUCA時代と言われる中、自分たちの思い込みだけでシステムやモノ作りをするとリスクが大きすぎます。作った後に、ユーザが全くつかなかったら…?考えると恐ろしいですよね。何かしら、少しでもユーザがつく!という確証欲しくありませんか?

他にも、
"ペルソナ(ターゲットユーザ像)を作って考えているから問題ない!"
と豪語される方もいるでしょう。分かります、ペルソナって最強な感じがしますよね。ペルソナのインプット情報次第では最強かもしれません。ペルソナ作りのインプット情報に何を使っていますか?アンケート結果や営業マン、開発者、カスタマーサポートの方などの経験や顧客ヒアリングの内容ですか?私は、このような情報を基にペルソナ作ること自体は問題ないと考えています。ただ、認識してほしいのは、それは”プラグマティック(プロト)・ペルソナ”である、ということです。まだ偽物のペルソナであるということです。インプット情報が推測や個人の解釈、希望に寄っていませんか?このペルソナを基に進めてしまって本当に良いのでしょうか。存在しないペルソナだったら、どうします?

ということで、、、
なぜユーザ調査(ユーザインタビュー)が必要かというと、当たり前ですが、「ユーザを本当の意味で知る、ユーザに共感するため」です。どうしても普段ユーザと関わっていると分かっているつもりになってしまいますよね。また、全くユーザと関わらないと、そもそもユーザを知ろうともしませんよね。ユーザを知るってどういうことかというと、コンテクスト(利用状況、文脈)を知ることに繋がります。(カタカナ多くて嫌になっちゃいますよね。事例でコンテクストを知るってどんな効果があるのか説明します)
(例)キャリーバッグ
キャリーバッグのペルソナって誰だったか分かりますか?そう、キャビンアテンダントやパイロットです。でも、今って飛行機乗る顧客ほぼ全てがキャリーバッグ使ってますよね。元々はCA、パイロットが飛行機にいっぱい乗るので、移動も荷物も多くて大変だ、ということでキャリーバッグが作られたんです。CA、パイロットのコンテキスト(状況、文脈)を基に作られたんですね。すると、どうでしょう。飛行機に乗る人が増え、旅行者も同じ状況に陥ったんです。ペルソナは違いますが、同じ状況に陥ると同じ課題が出てきて、キャリーバッグを使うようになりました。同じコンテキストになったら、価値は伝達されます。コンテクストを知るためにペルソナを作ったり、ユーザ調査していると言っても過言ではありません。

ユーザ調査のタイミングは色々あって、一概には言えませんが、下記のようなものがあるかなと思います。
タイミング別目的
・これから企画する場合
 ⇒潜在ニーズ(インサイト)を探る準備をするため(インタビューでインサイトが分かるわけではないです。今のユーザのメンタルモデルが明確になるだけ)、新しい機会を探るため
・ペルソナ作りが終わっている場合
 ⇒プラグマティック・ペルソナが存在することや作ったペルソナが合っているか確認するため
・仮説、推測を立てた後の場合
 ⇒考えた新しいアイディアに磨きをかける、検証するため
・プロトタイプやMVPがある場合(何かしら見せれるモノがある)
 ⇒本当にペルソナに刺さるのか、絶対に欲しいと思われるのか検証するため

改めて、ユーザを見直してみてはいかがでしょうか。

HOW(どうやってユーザインタビューするの?)

少しでも、ユーザインタビューしてみたいと思ってきましたか?私もしたくて堪りません!!でも、落ち着いてください。きちんとインタビューに対するマインドセットしておかないと、意味のないユーザインタビューになる危険性があります。私もユーザインタビューって、ひとまずユーザに話聞けばいいんでしょ?話すの得意よ、と思っていましたが、普段のスキルとは全く異なります。皆さん、ご注意ください。

今回は簡単なステップを記載します。具体的なやり方はやってみた記事をあげる予定なので、そちらを参考にしてください。

ユーザインタビューのステップ
1.目的の設定
・目的(ユーザインタビューから何を得たいのか?)を明確にする。表面的な目的だけでなく、深く掘り下げて考えましょう。
・関係者にインタビューするのも良いでしょう(ステークホルダーインタビュー)。

2.リクルーティング ☆重要☆
・属性を明らかにして、被験者を集める必要があります。ペルソナがある場合は、ペルソナの属性に近い人をリクルーティングしましょう。近い人というのは、印象やイメージ、その人の発言だけでなく、行動が伴っているとより良いです。
(例)普段、IT業界のニュースやトレンドを追っているか
 ・印象>行動
  IT会社で働いているので、当たり前に見ますよ
  ⇒その人の当たり前って?やっていなくても分からない、本当に?
 ・印象<行動
  ITmedia, Qiita, Yahoo IT, twitterを通勤時、毎日見ています(スマホ見せてもらう)
  ⇒具体的で、スマホの利用状況からも、行動していることが確か
・被験者候補を多めに決めて、スクリーナー(調査票)にて最終決定します。
・これから何かを企画し始める場合は、ペルソナに近しい人だけだと何も発見がないかもしれません。新規の場合は、ポジティブ・ネガティブなエクストリーム(極端な)ユーザにもインタビューしてみることをお勧めします。

3.インタビューガイドの作成 ☆ここも重要(初心者は特に)☆
・イントロダクション&アイスブレイク、主要部分(インタビューだけでなく、アクティビティもあって良い)、将来の予測や希望についての質問、締めくくりという順でインタビューを進めます。慣れないうちや、インタビュアーが複数人いる場合は必ず認識を合わせておく必要があります。
・なるべくステークホルダー全員で作るとより良いです。

4.インタビュー
・事前に全メンバーにインタビューガイドを共有しておきましょう。
・ビデオカメラやレコーダー、書類、席の配置など準備は完ぺきにしておきましょう。
・できれば、ユーザの現場に行って聞くのが一番良いです。
・インタビュアー側は多くても2~3人にしてください。メインインタビュアー以外は勝手に質問したりするのはやめてください。メインインタビュアー以外には役割をきちんと与えましょう。ビデオカメラ係、サブインタビュアー、記録係など
・インタビューガイドを見ながら進めるのはNGです。前の話が完全に終わった時や脱線しすぎて戻す時など、必要なときのみ見てください。

5.インタビューの記録
・数人にインタビューすると思いますので、毎回インタビュー後にインタビューに参加した全員でミーティングを行います。デブリーフィング(状況報告、事実確認)と言います。
・その後、インタビュー結果をまとめた、フィールドノート(全内容)を作り、参加していないメンバーに共有します。
・また、フィールドノートを基にフィールドハイライトを作ります。インタビューの中で最重要、探るべき必要がある気付きをまとめます。解釈は入れないようにしてください。または事実と解釈を見分けられるように記載してください。

6.分析・統合
・全インタビューが終わったら、全データを整理、掘り下げてトップラインレポート(テーマと初期の調査結果まとめたもの、正式な結果ではない)を作ります。
・トップラインレポートの内容を担当分けして、更に深堀っていきましょう。パターン化したり、重要な発言をピックアップしたり、興味深いことなどをメモし、疑問点、仮の解決策など考えてみます。
・全員の分析結果を持ち寄って、チームで話し合います。ここの最終結論が正式なユーザインタビュー結果となります。ただし、追加の調査が必要となることもあるので、繰り返し行うことであるという認識でいてください。

どうでしょう?ちょっと大変な気もしますよね。きっとそれは初回だけ。まずは、やってみた!くらいでやってみると面白い、効果が分かるのではないでしょうか。

WHAT(ユーザインタビューとはどんなものか?)

最後にユーザインタビューとはどんなものか、です。なんとなく、WHY・HOWで分かってきましたかね?
ただ、冒頭に述べたように勘違いしやすいので、間違った認識について記載します。

間違った認識
✖ ユーザインタビューはユーザのペインポイント(潜在ニーズ、インサイト)を明らかにする
⇒あくまで、ユーザを深く知ること、共感することが目的です。そんな簡単にペインポイントが分かるわけではありません。

✖ ユーザインタビューはデータの収集だ
 ⇒リフレーミング(枠組みの再構築)です。視点の変化を促します。固定概念が強い人ほど参加してみることに意味があります。

✖ ユーザインタビューは将来の行動を予測したり、価格への期待を明らかにしたりするのは得意ではない
 ⇒今のユーザのメンタルモデルやコンテクストが分かるだけです。過度な期待をしがちですが、今のユーザについて知ることが目的です。

✖ ユーザインタビューは質問-応答をするだけ
 ⇒これだけだと、インタビューにはなっていません。質問-ストーリーになってきたらインタビューできています!

ここからは先輩から言われた衝撃発言から追加してみました。
✖ ユーザインタビューだけでユーザ調査が終わる
 ⇒ユーザインタビューは1人に対して時間が掛かるため、大人数に対するインタビューは難しいでしょう。ユーザインタビューの目的はユーザを深く知ることです。知ることで何かしらの分析結果が出てきますよね。その分析結果が大多数に当てはまるのかは別の調査を組み合わせて行えば良いんです。例えばアンケート調査やログ調査、ABテストとか。

✖ ユーザインタビューはインタビューしたユーザに偏ってしまう
 ⇒ユーザインタビューはユーザを深く知ること、つまりコンテクストを知ることに繋がります。ユーザに困っていることや解決策をそのまま聞くわけではありません。そもそもユーザを深く知らないことが問題なんです。ユーザを知らないと何も企画できなくないですか?インタビューしたユーザのストーリーやコンテクストを使うので偏る可能性がないとは言えませんが、複数人にユーザ調査し、パターン化し、組み合わせて他の調査も行います。偏ることを気にして1人もユーザを深く知らないより、確実に良いと思います。

✖ ユーザインタビューはユーザに聞きたいことをただ聞けばよい
 ⇒質問内容ってすごく難しいんです。ユーザインタビューは誘導になってもダメだし、理想論やあるべき論を語ってほしいわけでもないし、助言してもらいたいわけではないんです。そんな、普通のユーザに助言してもらって、そのまま鵜呑みにしても効果があるとは思えないですよね。そのユーザ1人だけに対する解決にはなるかもしれませんが…

ペルソナと同じで、どうしても期待してしまいますよね。そんな簡単じゃないからみんな試行錯誤して、色んなものを組み合わせて仮説を作っていき、プロトタイプを作り、検証という形で繰り返しています。大変な気がしますが、やる価値はあるのではないかと思っています。

ユーザインタビューマインド

やっと本題です。ユーザインタビューするときのマインドには何が必要でしょうか。WHY・HOW・WHATを読んで、なんとなく分かってきたのではないでしょうか。まだ全てを伝えられているわけではないので、私が重要!と思ったところをまとめていきます。

・他の人の考え方を受け入れる、バイアス(偏見、固定概念)を持たない、自分の考えや推測に自信を持たない、フラットな見方ができる
 ⇒事実と解釈の区別は必ずつけてください。インタビューの結果が変わってきます。

・ユーザについて本当に知りたい!ユーザに共感したい!とユーザに対して知りたいと渇望する(そのくらいの気持ちで挑む必要があります)
 ⇒本当に興味ないと、それが行動や発言となり、ユーザに伝わります。マザーテレサの言葉「思考に気をつけなさい。それはいつか言葉になるから。言葉に気をつけなさい。それはいつか行動になるから。行動に気をつけなさい。それはいつか習慣になるから。習慣に気をつけなさい。それはいつか性格になるから。性格に気をつけなさい。それはいつか運命になるから。」通りですね。

・ユーザに敬意を払う
 ⇒相手の話をきちんと聴きましょう。次に何を質問しよう、いつ発言しようと会話の主導権を握ることばかり考えていたら、ユーザに伝わります。伝わってしまったら最後、きちんと話してくれなく可能性があります。ユーザの話が重要だときちんと伝え、行動で示しましょう。ラポール(信頼関係)構築に影響します。

参考文献

『ユーザーインタビューをはじめよう』
スティーブ・ポーチガル (著), 安藤 貴子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/B071X9BKPC/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

終わりに

いかがでしょうか。ユーザインタビューについての理解深まりましたか?認識間違えていたと気付いた方がいると嬉しいです。
また、全体的に偉そうな口調になっていますが、自戒のために書いていますので悪しからず。
分かりづらいところ、間違えているところあれば、ぜひコメントください!
もう一つ書籍があるのでそれを読んで、やってみてから、続きの記事を書く予定なので興味ある方は私かマガジンをフォローしてもらえると嬉しいです!やる気に繋がります!!

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