Guest Talk 08: 山内稜平 [アートディレクター]
未知の地での出会いが、未知の創造を掻き立てる
あらゆる状況においても打ち返せるのがプロフェッショナル。経験があれば打ち返しのカタは生まれるが、カタにはまるとクリエイティブは失われる。いかに未知なものに向き合えるか、不確実な戦いには強い勇気が必要。その先を不安と思うか、期待と思えるか、簡単に決断できるものではない。メーカーからデザイン事務所へ、東京から盛岡に、未知を笑顔で楽しむ山内さんのジャンプには誰もがワクワクする。「どこでデザインするかよりも、どうデザインするか。」まさにこの言葉を証明する真の強さと身の軽さを持ったアートディレクター山内さんへのインタビューです。
山内 稜平さんのプロフィール
Ryohei Yamauchi
grams design office所属。京都府生まれ。メーカーでのインハウスデザイナーを経験後、2016年に岩手県に移住。盛岡市を拠点にポスターやロゴマーク、商品パッケージ、ウェブサイトデザインなど多岐にわたりデザイン制作を行う。GRAPHIC DESIGN IN JAPAN 2022、2024 入選。岩手ADC2019、2020 岩手ADC賞受賞。日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)会員。
プロダクトからグラフィックへ
酒井:今回の「新しい酒井3」ゲストはこの方です。こんにちは。
山内:こんにちは。
酒井:アートディレクター・デザイナーの山内稜平さんです。
今日はZOOMでのお話しですが、山内さんは盛岡、酒井は仙台と、物理的な距離もあって、いまだにリアルでお会い出来ていませんね。。。
山内:そうですね。まだお会い出来ていませんね。
酒井:パソコンを挟んでの会話ばかりですから、現実世界に酒井が存在するのか疑わしいですよね。実際に対面したとき、「え、あれ?」「意外と、こんな感じなんですね」とか、思われそうでドキドキしますが、いつか是非。
山内:はい笑
酒井:では、早速ですが、山内さんのキャリア紹介でも触れましたが、社会人のスタートはメーカーのインハウスデザイナーだったのですね。
山内:そうなんですよ。大学は千葉で、デザイン科。専攻はプロダクトデザインだったのですが、就職のタイミングで選んだのが東京にあるメーカーのグラフィックデザイン職でした。
酒井:そうなんですね!僕の大学仲間にもプロダクト専攻からグラフィック職に就いた人がいるので、その気持ち、何となくわかります。
ちなみに、デザイン事務所を選ぼうとは思わなかったのですか?
山内:「就職するなら会社」っていうイメージを抱いていたからだと思います。「会社に入ろう!」って感じで事務所を選ぶことは考えていませんでした。
酒井:で、何故かそこから、盛岡移住しちゃうわけですよね。
出会うために東京を離れる
山内:メーカーのインハウスデザイナーとして働いていたから普段は営業さんと仕事することが多くて、なんかもうちょっと別の方々と仕事してみたい気持ちがあったんです。あとは、会社を辞めるなら、東京じゃないところがいいかなとか。
酒井:面白い。
山内:で、実際どんな感じなのかなと思ってハローワークに行って求人検索してみたら、意外と地方のデザイン事務所がいっぱいあったんです。とりあえず片っ端から紹介状書いてもらって、最初に連絡が来たのが、たまたま盛岡の会社だったっていう話です。
酒井:えっ・・・そんな感じなんですね笑
山内:その時は盛岡に何があるのかも全く知らなかったのですが、まあ、楽しそうだから、盛岡いいかなって。
酒井:と、いうことは、もしかしたら山形だったかもしれないし、福島だったかもしれない。
山内:はい。北海道だったかもしれないし、沖縄だったかもしれない。場所を理由にしない感覚で探してました。
全部自分でカバーする
酒井:で、移住して、どうですか?盛岡でのデザイナー生活は。山内さんはグラフィックからパッケージまで幅広くデザイン出来ちゃうから、カテゴリーを横断する活動が求められる東北のデザインと相性良いのでは?
山内:確かに。それまでの自分の仕事はアートディレクター的でしたが、こっちに来て1番思うのは、やることの多さですね。「仕事」が多いという表現じゃなくて「自分がやらなきゃいけないこと」の多さ。ここもここも全部自分でカバーするんだみたいなのが多くて、デザイナーの仕事はやることいっぱい!
酒井:鍛えられますね。
山内:あとは、クライアントとの距離が近いからこそなのですが、案件の打ち合わせとして訪問したけれど結局はおしゃべりしてお茶飲んで帰るみたいな事になってしまったり、純粋なデザインワークを超えた営業活動も多いですね。
酒井:それは、よかったってこと?
山内:笑。まあ、大変なこともありますけど、結果的に楽しくやってます。
酒井:今後、別の地域へ動く予定は?
山内:うーん、盛岡、居心地がいいので。。。今のところ予定はないですが。。。
酒井:気持ち次第?
山内:笑。そうですね。どっか行っちゃうかもしれない。
新しい山内さん
酒井:この番組は「ラジオ3と酒井で新しいことを考え始める」というコンセプトから、ゲストの皆さんにも新しいことを考えてもらおうと、 無茶ぶり企画を展開しています。もちろん、山内さんにも宿題を出しました。
山内:はい、やりました。他ゲストの宿題を見て、こういうのあるんだ〜とか思って、自分はどんな宿題くるのかなと思ってました。
酒井:笑。ありがとうございます。
僕からの宿題、「超自由」という題材でした。
この無茶苦茶なお題にした理由ですが、山内さんは幅広い領域でデザインされていますから、突飛なオーダーへの経験値は高いだろうと。ですから、条件が厳しいことには慣れているとすれば、逆に、自由すぎて悩んでもらおう!と思いました。少ない予算だったり、強いリクエストがあったり、時間なかったりとか、ローカル案件の厳しい環境と戦っている山内さんに「新しいチャレンジ」として、ここではあえて、フリースタイルでプレイしてもらおうと思いました。どうでしたか?
山内:グラフィックで作ってみました。
酒井:おー!
山内:ちょっと説明しますね。
→→→ 山内さんの宿題作品の詳細はメンバーシップページで紹介しています。
山内:「自由」とはいえ、いろいろ制限あるな。。。。って。
自分で作るときも自由になのだけど、制限の中で自由 にやっていたりとか、無意識の中でも枠を作ったりしているなと思いながら、最終的にはどこかにしっかり落とし込もうとするみたいな、そんな感じで取り組んでいるので、この宿題もあれこれ悩み巡らせながら進めていきました。
山内:で、まあ、こんな感じに。
酒井:ほー!
山内:上と下があって、じつは「自由」という漢字になってる。
酒井:あー!なるほどなるほど。
山内:枠がありながらも最終的に自由に頑張って落とし込むみたいな感じです。
酒井:実際「自由」という文字って、全く自由が無いですよね。ガチガチした箱のような造形。でも、そこから受ける印象にしっかり向き合って、マイナスに捉われずに感じた世界観をここまで広げているのはすごい。
山内:自由で何でも良いって言われるからこそ「じゃあ、その中で何しようかな」という気持ちが湧いてくるものですよね。作るために無意識でも枠を作っちゃったり。
酒井:多くは「自由」って、「情報ゼロでは無い」ことが多い。「お昼何食べたい?」って聞かれて「何でもいいよ」って答えをもらったから、カレーライス作ってみたら「あ、カレーかぁ。。」と言われちゃうような事態。
山内:その「何でもいいよ」と言った人の中では、言葉にはしていないけれど潜在的に「麺」を想像していたとか。
酒井:そう。「もう!言ってよ!!」って、なりますよね。。。
山内:そうなんです。
酒井:面白い。面白いですね。空間の中にいるのは「ヒト」ですか?
山内:ヒトです。
酒井:このヒトからすると、囲まれている空間だけど、結構自由っぽい状況ではある。
山内:この中にいるヒト目線だとすごく自由なんですけど、引いてみると、しっかり囲われてる。
酒井:宇宙的な視点ですね。 素晴らしい。
旅の目的地になるデザイン
酒井:例えば、山内さんデザインのものに出会える場所とか、買えるプロダクトとか、ひとつご紹介いただけますか?
山内:盛岡のお土産を作るプロジェクトをやっていまして、いろいろなお菓子がラインアップされてます。ブランドは「モヤーネ」といって、「もりおかやっぱりいいよね」っていう合言葉が名前になってます。 岩手アートディレクターズクラブのメンバーと菓子店が組んでデザイン開発しています。
僕はその中の1つ「彩双鶴(いろどりそうかく)」って商品のデザインを担当しました。落雁です。
酒井:可愛い。ブランドネームも素敵ですね。
山内:「モヤーネ」って、言葉の響きとかも、盛岡人っぽいなと。
酒井:素敵なお土産がある土地って、素敵ですよね。お土産が旅の目的地になっちゃう。
山内:ちっちゃい落雁で、盛岡藩主・南部家の家紋をモチーフにしています。JR盛岡駅とか、県内の土産店とか、カワトクデパートとか、いろいろな場所で売ってます。コーヒーや紅茶にも合いますので、是非。
酒井:今日はありがとうございました。また改めてゆっくりお話ししましょう。
山内:ありがとうございました。
放送回はPodcastでも配信中
#30 Guest Talk 08: 山内稜平 [アートディレクター]1/2(2024.2.26公開)
#31 Guest Talk 08: 山内稜平 [アートディレクター]2/2(2024.3.4公開)
https://open.spotify.com/show/4Lwo8gyWxtxWYLzimj48rA?si=5b80d5fc96494b75
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