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日本はなぜ、イギリスのような「トリプル安」になっていないのか?

◇「国債」と「現預金」--- 2つのマーケットが機能不全に

先日イギリスでは、トラス新首相が打ち出した減税と国債発行増が、財政を悪化させると「トリプル安」に見舞われ、辞任に追い込まれました。

一方の日本。
総額39兆円、真水で29兆円の「総合経済対策」を発表。財源は赤字国債です。でも(今のところ)イギリスのようなパニックは起こっていません。

イギリスと違い、日本はなぜこんなに市場の反応がこんなに乏しいのか?
私が考える理由は2つあります。
「国債」と「現預金」--2つのマーケットが機能不全になっているから。

まず国債の問題。
日本の国債は日銀が大半を買い取っているため、国債安は理論上起こりません。
現状、マーケットでは説明がつかない低金利になっており、海外の投資家は日本国債にほとんど見向きもしません。

そのため国債市場はドメスティックな取引になっており、日銀がほぼ完全にコントロールできています。
でも為替はグローバル取引であり、相手国があってのもの。日銀だけが頑張っても、通貨安=価値評価の低下を止めることはできません。

通貨価値を高めるためには、通常は利上げします。
でも日本は国債の金利を上げられないので利上げできない。円は時間が経過するほど、その価値を失っていくことになる。

日本経済は“ブレーキ”を失い、円安が突き進んでいる状況です。

そして現預金。
日本では、個人資産約2000兆円のうち、半分以上が日本円の現預金に留まったまま。外貨預金は7兆円程度に過ぎません。外貨性を全部合わせても3%程度とわずかです。

日本円は金利が付かない上に、為替も安くなる一方。なのに「市場原理に反して」ポートフォリオが動かない。原因は国民の高齢化が進み、経済や金融知識に疎く、保守的になっているから…としか説明がつきません。

「日本人がアホだから」というのが、イギリスみたいに経済が動かない理由だとしたら、それはそれで恐いです。最近はマスコミが「日本円は不利だ、外貨に変えろ」と騒ぎ始めています。

何かをきっかけに“大衆”が円の現預金で持つことが不利だと気づいたら…。今度は一斉に円売りに動き始める可能性がある。そうなればパニックはイギリスの比ではありません。

今回岸田政権が発表した「総合経済対策」が致命傷となり、円安が一段と進み、インフレが止まらなくなる。ものすごーーーく心配です。

◇今後予測されるシナリオ

私が今後予測するシナリオは、「1ドル=180円~200円」の"ハイパー円安"です。

日銀が政策的に固定しているため、金利は上がりません。
でも為替は取引相手である他国があって決まるので、そうはいかない。
円は低利で固定されており、時間と共に価値が目減りしていく。

結果、円安がどんどん進んでいくことになる。最終的には、かつて(1ドル=110円)の半分近く(180円~200円)まで円安が進むことになるでしょう。
円安を止めるために、日本政府は日銀が国債をこれ以上自ら買い入れることは不可能だと認め、政策の転換を余儀なくされるでしょう。

政策転換=金利を市場の決定に委ねるということ。(=あるべき姿に戻す)
結果、日本の金利は大幅に上がる。

金利が上がれば、日銀・金融機関は、軒並み巨額な評価損を計上。
個人は住宅ローン、企業は債務が行き詰まり、経済が立ち行かなくなる。
日本経済は、終戦直後のような大パニックになるのは避けられません。

これが2022年6月、私が「未来予測」で公表したシナリオです。

◇なぜNoteを書き始めたのか?

こんな最悪な予測は外れればいい、と個人的には思っています。でも残念ながら、日に日に現実味を帯びています。

2020年の執筆時点で、日本が最も恐れていたのはインフレでした。その頃、新型コロナ対策として主要国は異例のバラマキを行っていました。その反動で復興期には世界的にインフレになるのは避けられない。
日本は巨額な国債を中央銀行が抱えているので、どうしても金利を上げられない。相当苦しむことになるだろうな….と予想はしていました。

そこに2022年に入って、まさかのロシア-ウクライナ紛争。これで「カネ余り」に「モノ不足」が重なり、世界的なインフレが確定しました。

これは日本にとっては「悪夢の始まり」になると思います。
ものすごく嫌な話ですが、多くの人に「今」を知り、「これから」を考えて欲しいと思い、今回noteに書くことにしました。

私の本業は、10年先、15年先の「未来」を予測すること。
将来を読み解く上で、今回書いたような「日本経済の行方」を今後も追いかけていきますし、ロシア-ウクライナ紛争とも密接に関係する「GX」、クラウドロニクスがもたらす「DX」には特に注目しています。

これからよろしくお願いします。

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