「ドライブ・マイ・カー」

2022年7月某日

「ドライブ・マイ・カー」
監督：濱口竜介

公開と話題からかなーり遅れましたが
映画館で観ることができました。

長いと聞いたので家だと寝そうでw
キネマ旬報シアターでやっていたので頑張って行ってきました。

圧巻でした。

以下ネタバレ入りますのでご了承下さい。

村上春樹の原作は読んで行かなかったのですが、
チェーホフがこんなに大きく入っているとは知りませんでした。

ワーニャ伯父さん、かもめ、三人姉妹…
若い頃に読んだし、何度か演劇も観たのですが、
どうもチェーホフの良さが分からなかった私です。
名作だから深く感動しないとみたいな義務感に負けてたのかなw
単に若かったからなのか。
舞台も途中で寝てたかもしれない💦

しかし！
これ程チェーホフに泣かされる日が来ると思いませんでした。
けど、どんな新劇のワーニャ伯父さんより深かったのではないだろうか…
劇中劇のラストシーンは息が苦しかった。
(泣きたいのに音出したくなかったから)
ソーニャの「台詞」を一身に「受け」の芝居ををする西島秀俊。
西島秀俊さんの良さがこれ程までに活かされた場面があるでしょうか？
(あるかぁw)

役者は、映画の役と劇中劇の役を見事にやり抜いていましたね！
凄過ぎる。
劇中劇でこんなに完成度の高いもの作るの凄い！

是枝監督の「真実」の劇中映画もっと雑だったよ！w

ソーニャを演じた女優さん(パク・ユリム)
光ってましたねー！！
登場シーンから吸い込まれ、
食事のシーン、この劇中劇と、
彼女がぶっとい軸を作ってた気がします。
(ちょっと伊藤沙莉を思わせた)

彼女の情報伝達能力、
そしてそれぞれの言語が入り乱れた芝居づくりの現場。

この映画予算は低そうですけど、
人的労力が半端ないわー🤯と思いました。
(前半にゴドーを待ちながらの劇中劇の際には「ん？」とちょっと思いましたがw)

娘ほどの年齢の運転手の生家でのシーン、
(三人姉妹の台詞を使っていた様な…？朧げな記憶…)
あれが、役をやるかどうかの決心になっていると、
でもチェーホフを読まずともきっと分かるのは、
ずっと車の中で流れていた戯曲の言葉、言葉。

西島さん演じる家福が狙う演出方法の様に、
抑揚をなくしゆっくり語られる言葉。

それは広島で最初に挨拶に来た女性(コーディネーター？)の、
違和感のあるゆっくりした棒読みの言葉も、
あれは演出の狙いなしにあの喋りにはならない。
これは日本語ネイティブにしか分からないな〜
といいつつ日本人の私にも難しいネタ振り…

あの人はこの映画を司る神視点ですか？
メタの存在？笑
ちょっと映画を表現する語彙が無いのですが、
もう一度あの人の口調をあそこで聞いたことに、
不思議な腑に落ち感がありました。

監督や俳優をはじめとする、
この映画を作った人々の労力と精神力。

この一作分のエネルギーでも、
私，10年かけても使ってないかもしれない…
ぐらいに思ってしまう渾身の力作と感じました。

岡田君はああ言う役が本当に上手なのだけど、
本当はどんな方なのかしら。
目が合い続けて堕ちそうでしたw
大豆田とわ子ではとても愛を持った配役をもらってて癒されたなぁ。
しあわせでいてほしい。←大きなお世話

分別を持ってくれ、
と家福が彼に言った台詞然り、
彼の行動で全てが崩壊する出来事は胸が痛みました。

監督は、命をかけた仕事で起きる苦労も絶望も、
目を背けずにそのまま受け止めたのだと解釈しました。
もう誰も言わなくなったけど、
なんとなく見る気がしなくなっていた事を申し訳なく思った「寝ても覚めても」も、
配信で観てみようと思います。

こんな凄い監督だったなんて。

海外で各賞を取ったのも、
映画や演劇、その作り方や多様性、
それと監督や演出家と役者の非均衡な関係、ハラスメント、
そしてセクハラについても。

色々な現状を浮かび上がらせている事も玄人受けもしたのかしら。
生意気なこと書きましたけど。

奇しくもチェーホフはロシア文学。

そしてラストではマスクを車で外していました。
コロナ禍に撮影だったんですね。

評価に違わず、とても濃い作品でした。

ムクウェゲぶりにパンフレット買っちゃった♡
読むの楽しみ。
ついでにホン・サンスのも買ってしまった。
キネ旬さいこう♩
遠いけどまた行きます☺︎

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言語の壁を超えて
人々の気持ちが触れ合っていく姿がとても良かったです。